変わり始める“日常”-10
?????:『お手数をおかけしました。ミスター・ガルダルフ』
夜の高層ビルの一角。
賃貸用の高級オフィス室のデスクにて1人の男がカーテンで閉じた窓を
背にモニターに向かい合う様に座っていた。
ディスプレイのモニター画面には『SoundOnly』という表示が
映し出されているのみでそこから音声が出力しているという感じだった。
顏に無数の傷がある男――――ガルダルフと呼ばれていた男は
気にするな、といった素振りを見せながら
ガルダルフ:「仕事だからな。こっちとしてもそれで喰ってるんでね。
まあ、報酬は期待させては貰うぜ・・・?」
?????:『いつもより多めに支払わせて貰いますよ。こちらとしても
あの手の連中は目に余ってた所ではありましたし』
ガルダルフ:「素人に毛が生えた様な連中ってのは大概、業界のアレコレを
無視するから困ったモンだからな・・・」
心情お察しするぜ、と言いながらガルダルフは片手に持っていたカップに
入ったコーヒーを飲み干す。
ありがとうございます、と答える声の主。
?????:「それで本題に入りますが・・・“例の物”に付いて目途が
付きましたのでその報告をまずは。」
ガルダルフ:「ようやくか、待ちわびたぜ・・・!」
?????:『お待たせして申し訳ありません。その分、ご期待に沿える様に
しておりますので』
ガルダルフ:「それだけでもありがたいぜ。―――で、今後はどうするんだい?」
?????:『基本は変わらずですね。【ブリューナク】とはまだ正面きっての
対決は極力避けたい所ではありますが――――状況次第ではありますが
そちらにお任せしたいと思います――――』
ガルダルフ:「いいのかい?他の幹部陣の連中が黙っていないんじゃないのか?」
疑問を呈するガルダルフに声の主は特に変わらぬ口調で答えた。
?????:『構いませんよ。彼らも結局は利益を重んじてますからそれらを
納得できるようにしておけば問題ありませんよ』
ガルダルフ:「黙らせる理由はあるのかい?」
?????:『商売というのは如何に相手を騙せるかですよ?無論、損得を
考えた上で納得させればどうとでもなるのですから』
言うねぇ~、と笑みを浮かべるガルダルフ。
?????:『それでは“例の物”に関しては近日中にご用意します』
ガルダルフ:「頼んだぜ。それまではこっちも間に合わせのモンで
連中の相手をしておくぜ」
?????:『よろしくお願いいたします。それでは』
そう言うと同時に画面が暗転する。
ガルダルフはフィンガースナップを利かすと同時に部屋に明かりが付き、
同時にカーテンがオープンしていき、ガルダルフは窓の方へ視線を向ける。
眼下は車と信号などの明かりで光が縦横無尽に忙しなく動いた。
ガルダルフは空になっていたカップに追加のコーヒーを注ぎ、無言で飲み干す。
その後、ひと息付く様に息を吐くと同時にぼそりと呟いた。
ガルダルフ:「またおまえとやり合えるのを楽しみにしてるぜ・・・!」




