貫くものと鋼鉄の鴉―9
ミカサ:「ねえ、よかったの?あの場から去っても」
マキナ:「済まないがこの機体を世間に広めるのはまだ出来ない。
それにキミのことも問い詰めれるのは避けたいというのもあるのが
“上”からの指令だ」
【ガンクロウ】の腕に抱えられながら移動する中、
ミカサの疑問にマキナは冷静にそう答える。
作業用のワークスレイブンならまだしも
軍事用を主に用いるアームズレイヴンが街中で稼働しているのは
様々な問題が生じるのは確実だ。
先程の襲撃者との関係性など含めても政治的な部分としても
重要な問題としてやり玉に挙げられるのは得策とは言えない。
ロングスカウター:『ある程度のごまかしは出来るがしばらくは
ネット上でも話題になるだろうな。こればかりはむやみに圧力を掛けるよりも
沈静化を待つのが無難だろうな』
クロウ『迂闊に鎮静化などの“火消し”を仕掛けると逆に燃焼・延焼する可能性が
あります故、センシティブ判定は気を付けなければなりません』
ロングスカウター:『――――敢えては指摘はしないがつまりはそういうことだ』
ミカサには聞こえない様に内部音声で通話をしているマキナ。
【クロウ】の(一部分に関しては)言っていることは言葉通りしか
受け取れていない為、ロングスカウターの言葉に理解が出来ていない節があったが
そこら辺は勉強不足だなと納得して黙って聞きながら機体を目的のポイントまで
移動させていく。
その後、ロングスカウターから指定されたポイントに到着すると
ミカサを降ろし、マキナ自身も【ガンクロウ】から乗降する。
すると上空からジャイロ音と風圧が発生し、ヘリコプターが徐々にその姿を現す。
【ガンクロウ】やミカサ達から離れた場所に着陸したヘリコプターのドアが
開くのを確認するとマキナはミカサに乗る様に促し、ミカサもそれに従って乗り込む。
2人が乗り込むとヘリは飛び立ち、【ガンクロウ】の頭上へと移動すると懸架用の
ワイヤーアンカーを降ろし、【ガンクロウ】に装着を確認するとヘリは更に浮上し、
白い機体は持ち上げていき、場所を移動していく。
軍用のヘリに乗ったのもあってか幾ばくかの緊張を伴っていたミカサ。
同席しているマキナは慣れているのか平然とした様子で外を見ている。
ミカサ:(やっぱりマキナは軍とかそっち方面の仕事をしているんだ)
その後はしばらく黙ったまま、ミカサもヘリの窓から外の景色と様子を見ていた。
それからヘリは飛行し、景色もどんどん変わっていくと
マキナはミカサへある物を見て貰う為に声を掛ける。
マキナ:「見えてきたよミカサ」
それに応える様にミカサはマキナの見ている視線の先を見る。
ヘリは海岸沿いを飛行しており、向かっている目的地は港だったらしく、
埠頭を挟む様に“小さな島”が浮かんでいた。
ミカサ:「――――ン?」
しかし、すぐにその違和感に気付く。
アレは島ではなく、人工物で湾頭付近には接岸できないほどの
巨大な物体が鎮座していたからだ。
その大きさは空母を一回りほど大きくしたほどの潜水艦を
彷彿とさせる要素もある様、普通の軍籍の物とは異なるのが
ひと目でわかる威容さだ。
自分の知っている潜水艦とは一線を画している。
ミカサ:「もしかして、アレが――――!?」
ミカサの疑問にマキナは視線を巨大艦に向けたまま、答えた。
マキナ:「アレが私たち【ブリューナク】の母艦【マーナ=マークリル】だ。
そして改めて――――ようこそ【ブリューナク】へ」