貫くものと鋼鉄の鴉―5
ミカサ:「はあ・・・はあ・・・っ!!」
騒動の場から離れる様に走るミカサ。
息を切らしながら久方ぶりの全力疾走を行い、近場の柱に寄りかかる。
呼吸を整えているミカサに追いつくマキナ。
彼女は特に息は切らしておらず、周囲を警戒する様に視線を動かしながら、
ミカサに近い付いていく。
マキナ:「大丈夫かミカサ?」
ミカサ:「うん・・・息もどうにか整ってきたから・・・だけどあの連中は―――」
マキナ:「おそらく、あの場に居ただけではないだろう。それにキミを攫うことに
手段を問わない様な動きも感じたからきっと――――」
ミカサの疑問に答えていたその時。
激しい音を立てながら近くの店が崩れ壊れていく様子を見る。
従業員や客はひび割れた店から辛うじて逃げ出していたがモール街は
既に大パニックの様相を呈している。
店を壊して現れた巨大な“ソレ”は目に当たる部分を周囲を
探るかの様に激しく動かしていた。
そしてミカサとマキナの2人を見つけると頭部そのものをそちらへと
向けて目の赤い部分が怪しく光る。
ミカサ:「レイヴン!?」
マキナ:「第2世代初期の軍事用に転用された【ゴブリン】か!あんなものを
持ち込んでいたのか・・・!!」
ミカサを守る様に前に出るマキナ。
とはいえ、生身な上に装備も碌にない状態では純正のアームズレイヴンではないと
しても分があまりにも悪いのは確かだ。
小鬼の名を冠したレイヴンはミカサ達へ向けてじりじりと一歩一歩近付いていく。
その動きは慎重さを伴いながらも獲物を前に舌なめずりしている傲慢と慢心を
感じさせる動きだった。
だがそんな状況を打ち破る様に大音量の声が響いた。
?????:『そこの所属不明レイヴン。ただちに活動を停止しなさい!!』
響く声にその方向へと振り向くミカサとマキナ。
視線の先には白と黒のツートンカラーに赤いランプを光らせた人型のレイヴンが
2機立ち、【ゴブリン】に向けて警告を放つ。。
日本初の警察用第3世代型ワークスレイヴン【ピースキーパー】だ。
第2世代初期型に当たる【ゴブリン】とは性能面ではかなりの開きがある。
しかし、戦闘用としてALとしての改修が成されていることもあり、オペレーターの
成熟次第では第3世代であっても対応が可能とも云われている。
【ゴブリン】の方は少し間を置いた後、【ピースキーパー】の方へと頭部を向けたが
それに応じる様子は特になかった。
マキナ:「警察のレイヴンか」
ミカサ:「これで助かるよね――――?」
笑みを一瞬浮かべながらも横のマキナの表情を視て不安を一瞬感じながらも
マキナに気取られない様に同じく顔をこわばらせる。
一方、2機の【ピースキーパー】は【ゴブリン】に対し、にらみ合いを続けていた。




