第18話 闇夜に輝く銀の腕-1
【ヘカトンケイル】のコクピット内でセーイは鎮座していた。
ケーブルを介して巨大な鉄巨人と一体化し、セーイ自身の感情もとい精神はある意味では【ヘカトンケイル】そのものとも云える。
その【ヘカトンケイル】を介して一連の行動を行っているのはOSとして採用されている【CHAOS】であり、【アンシリィコート】による情報遠隔操作により、【ヘカトンケイル】との一体感をより強めているのもあってかその巨体ながらもこれといったタイムラグが生じていないほど。
とはいえ、負担がないと云えばウソとなるだろう。
彼女の身体は強化兵士としての最適な施術を行っているがそれでも限界は存在する。
投薬と非公式の遺伝子技術によって強化しているとはいえ、身体に掛かる負担は想像を絶するものだ。
本来の強化兵士が対応しているのは標準規格のモノをベースとした【アームズレイヴン】だからこそ負担はそこまでのものではない。
だがアームズレイヴンの数倍の巨体を誇る【ギガースレイヴン】という未曽有のシロモノの場合はその限りではなく、彼女の身体を絶え間なく蝕んでいる。
苦痛などの感覚は薬物などによって軽減出来てはいても彼女の身体を容赦なく侵しているのは間違いなく、長時間の運用は彼女自身の命を着実に奪っているのもまた事実。
しかし、それすら彼女―――セーイにとっては些末なことに過ぎなかった。
そういう風に調整されただけではない、己にとって苦痛という感覚は意味を為さない。
自分は【レイヴン】という機械仕掛けの鉄巨人を動かすだけのパーツ。
パーツに感情という余分なものにかかずらっている程の情動を持ち合わせていない。
だが痛みという感情は“己が生きているという証左”と考えているのならば・・・それは間違いではないとは思う。
そんな感傷を抱く様になったのは・・・秋桜マキナの存在と美神ミカサの出会いだろうか。
秋桜マキナは自分と同じ【ブリュンヒルデ計画】で生み出された強化兵士で姉の様な存在とも云える。
だが自分にとってはそんなものは意味を為さない、そう思っていたがそんな感覚を否定する様なことを考える様になったのが美神ミカサだろう。
自分が属する組織の上層部が欲している少女。
彼女の内に内包しているという【エッグ】という内的宇宙を封じたオーパーツが狙いらしいが自分にとってはそんなものはどうでもよかった。
むしろ、彼女と出会い、話をしたことが自分にとっての“バグ”が生じているのかもしれない。
何故そう思ったかはわからない。
この感覚が何なのか、その答えを自分は持ち合わせていないからだ。
どうして自分がこんな感覚や感情を抱き始めているのかわからない・・・・・・
その答えを自分では見つけられていない・・・
どうすればいいのか・・・どうすれば自分の抱いているモヤモヤを解消できるのか。
巨大な【ヘカトンケイル】と一体化しているが故にセーイの思考力はより広大に巨大になっているのかもしれない。




