祝福されざるもの―4
牧島:「1週間程前の未明、自衛隊の新型機が試験運転を行おうとした瞬間、
突如として暴走。基地外へと逃亡、空挺一個師団を投入してどうにか沈黙させたらしい」
八雲:「暴走・・・オペレーターは?」
牧島:「――――機体は大破だそうだ・・・余程、慌てたらしく、虎の子の空挺用
レイヴンまで投じて目標を破壊したほどだ」
加藤:「もしかしてオペレーターは・・・?」
八雲と加藤の質問に牧島は一瞬、沈黙するもその沈黙を破る様に重くなった口を
開く。
牧島:「無人だったそうだ」
八雲:「無人?遠隔操作でもなく無人だったと」
牧島:「実況見分をした自衛官の話によればコクピット内部はもぬけの殻だったそうだ。
文字通りの無人らしく、何者かが遠隔操作した形跡すら見つからなかったらしい。」
加藤:「ブラックボックス周りは?」
牧島:「回収はした様だが損傷が激しくあまり結果は期待できんらしい・・・機体をハチの巣同然にした様だからな」
加藤:(それだけ慌ててたということか・・・)
課長の言葉を聞いて加藤はそう内心思った。
新型機ということから恐らくは自衛隊独自の開発の可能性もあるが具体的な詳細が
わからない限りは断言するのは禁物だろう。
加藤は気になっていることを聴く為に更に牧島課長に言葉を掛ける。
加藤:「課長。その無人で動いた新型機。もしかしなくても十中八九【CHAOS(
ケイオス)】搭載していましたか?」
牧島:「――――その通りだ」
重苦しく課長はため息混じりに答える。
これが合点がいったのか加藤は更に口を開く。
加藤:「課長が第2小隊の帰還延長を進言したのも第2小隊や他の警察隊レイヴンにも搭載予定である【CHAOS】のことで懸念しているということですわな本庁は。」
牧島:「その通りだ・・・ここ最近のレイヴンの暴走事故案件も含めて上層部の方でも疑問の声が上がり始めているのは事実だ」
八雲:「メーカーからの返答は・・・?」
牧島:「残念ながら返答は未だに・・・本国でも似たような事例が起きているらしいが本社の方は『対応を協議中である』の一点張りだそうな・・・」
牧島課長の言葉に加藤と八雲はあきれを隠さない様にため息と表情を見せるがそれに対して牧島は特に反応を見せず、話を進める。
牧島:「とまあ、そういうことだ・・・大体は理解してくれたかね?――――この一件、単純なトラブルなどで済まされる話でもなさそうだ・・・どちらにしてもFE社支社と本社に関しては引き続き政府が説明を求めるだろうが・・・大元の原因を究明しない限りは解決には至るまいな・・・」
そう言うとこの話題は以上だと窓の方へと椅子を向ける牧島課長。
夏雲と夏空が燦々とした暑さを伴わせ、午後の時間帯を支配していくのであった。




