第12話 祝福されざるもの―1
特機2課のハンガーは夏場の昼間でも慌ただしく動いていた。
初老の男性が仁王立ちした状態で彼を中心に特機2課の整備員達は出動から戻ってきた警察用ワークスレイヴン【ピースキーパー】各機のチェックを開始する。
そんな様子を整備責任者の堺セイイチの怒号が響く。
堺:「細かい部分は後でいい。電装系と関節部のチェックだけはしっかりやっとけ!!」
整備員一同:『ハイッ!!』
堺に応える様に作業している整備員達は一同に答えた。
やや殺気立っている様子の整備員達に堺は更に喝を入れる。
堺:「気ぃ引き締めていけ。俺らが事故ったら一番困るのは俺らじゃあねぇ。“こいつら”を扱う連中だ。
てめぇに喝入れて整備に望めぇ!!」
整備員一同:『応ッッッッ!!!!!』
体育会系のノリと言えなくもないがデリケートな作業も多いレイヴンの整備を考えれば、
軟弱なやり方は事故やトラブルの素になりかねないからこそ責任者である堺の一喝は決して
不要とは言い切れないものである。
加藤:「毎日、ご苦労様です堺さん」
その様子を見ながら加藤が堺に近づきながら彼に声を掛ける。
堺:「なに、昼夜問わず炎天下で出動するアンタらに比べれば小休止の時は冷房の
効いた部屋でくつろげる分、こっちはまだマシさ」
加藤:「ご謙遜を―――整備のみんなのお陰でこっちは十全仕事出来てますからね。感謝しかないですよ」
堺:「あとで連中にも言ってやってくれ。物も大事だがそういう声もあるかどうかでモチベも変わってくる」
加藤:「どこもそこら辺は変わらんですね」
そう言いながら二人は【ピースキーパー】を見やる。
導入からまだ日は浅いが細かい箇所は使い古されたことを感じさせる様な貫禄さを
持っているかの様な雰囲気を醸し出している。それだけここ最近レイヴンに関する
案件が増大していることを意味しているとも云える。
堺:「―――しかし、このひと月でずいぶんと出動が増えたな・・・」
加藤:「やっぱりそこ気になります?」
堺:「【レイヴン】なんぞという10年前はよちよち歩きの赤ん坊みたいな機械が最近じゃあ立派に二本足でかつ様々な分野で活躍し出している――――ひと昔前じゃあ
まさに夢やロマンの様な光景でしかないからな」
加藤:「“オーパーツ(場違いな異物)”と呼ばれている所以ですな~特にアームズレイヴンの様ないわゆる
第3世代レイヴンがそれに該当しますわな」
堺:「若い頃の俺が聞けば、笑い飛ばしてただろうな。ガキみたいな夢だってよ」
自分の昔を思い出し、フッと笑みを浮かべる堺。




