CHAOS(ケイオス)―10
メギストス:『納得はいってないようですね―――――』
怪訝な表情を浮かべ、ディスプレイとにらめっこを続けるケイに
【メギストス】は不服な様子の主に言葉を投げる。
パートナーであるAIの言葉にケイはしばらく無言だったが視線を変えずに口を
開く。
ケイ:「どーにも引っ掛かるのよね~」
メギストス:『既に検証を始めて3時間は経過していますが何度もチェックした
限り、特に異常は見られませんでしたが――――』
ケイ:「そこよ、“異常がない”って所が・・・・・・」
【メギストス】の返答にケイは即座にそう答える。
『異常はない。』
本来ならば異常があること自体が正常でかつあってはならない問題である。
しかし、“人が手を掛けて作るもの”に関しては大なり小なりそれならりの不具合や
問題は生じるのは常である。
特にIT関連を始めとしたデジタル方面はそういった問題は隣り合わせと揶揄されるぐらいには頻発しているのもまた事実だ。
故にエンジニアやプログラマーらは常にそういった問題と戦い続け、修正や修復を
繰り返している。
デジタル業界は常に戦争真っただ中と差し支えない。
それはケイが専門としている【レイヴン】とて例外ではない。
特に第3世代レイヴンは最新電子機器の塊であり、OSを含めてこれらは常にエンジニア達は不具合がないかどうかチェックしている。
その中でもOSに関してはオペレーターと機体それぞれの絶妙で複雑な調整を強いられる為、トラブルやアクシデントは付き物なのも当たり前。
【CHAOS】の前身とも云える【TALOS】もそういった問題を試行錯誤(トライ&エラー)で解決してきた。
だが【CHAOS】に関しては――――――
ケイ:「これといった異常な問題が見つからない。完璧と言えるまでの完成度なのよ。本来はそれを目指すべきなんだけどもそれは様々な要因が
合わさったことで出来上がるべきことなのよ――――つまり私が言いたいのはね」
メギストス:『“最初から完成されていることが不自然であり、異常である”ということですか』
ケイの言葉に先ずる様に【メギストス】が答え、それに無言で応えるケイ。
不具合や異常性などは出るべきではなく、潰しおてくべき不安要素なのは至極当然である。
しかし、それらが最初からなく完璧に完全な代物というのが彼女としては不可解なものだ。
ケイ:「チェックする人間すら欺ける何かがあるはず―――そして、私はこれに“見覚え”がある」
まさかね、と心の中で思いながらもケイは【メギストス】に何十回目かのチェックを行う様に指示した後、自分はコーヒーを淹れ直すべく席を立つ。
ケイ:(杞憂であった欲しいけどね・・・というか“アレ”はそういう風に出来ないはずなんだけどね――――)




