動き始め
次の日学校とバイトが休みだったので庭の手入れをす
ることにした。正直見てみぬ振りをしていたこともあ
り若干億劫。右隣は美咲の家と同じくオレンジの琉球
瓦に木造建築。台風の通り道である沖縄ではコンクリ
ート造りの家も多いが、少し古い家になると背丈の低
い木造建築も見られる。美咲は改めて隣家の前に立っ
た。人がいなくなって久しいことは明らかだ。つる植
物が居間であっただろう場所まで侵入していた。薄紫
の花を大量に咲かせている。家は森へ引きずり込まれ
ていた。美咲の家の左隣は竹林から森に繋がる。回れ
右をした正面もこれまた廃墟だろう。西洋づくりの立
派な建物だがあがりが付いた試しがない。
こちらはまだ侵食されていない。美咲が学校に通い始
めたのが4月だから半年は人が住んでいないお屋敷。
異常なまでに植物が手を出していない。門前まで行き
少し下がって2階の大きな窓を覗きこむ。木版画で彫
らない部分に墨をつけたように黒い。昼間なのに
中が見えないのはカーテンがかかってるからなのか。
黒いカーテンが施されている…のか。
とにかく人はいないようだ。伸び放題の草を放置にし
てた理由として隣人がいないということだ。誰にも迷
惑をかけていない。そうなると後回しにするのが人の
常というものである。美咲はひとり合点顔で腰に手を
当て何故か満足そうであった。