ガジュマル
それだけの理由だから別にどっちのおばあちゃんが「
祖母」になっても良かった。でも、沖縄のハスおばあ
ちゃんは自分の中で「ばあちゃん」だった。たまにし
か会えなかったばあちゃんは子供の時に作られた印象
のままだった。
今ではもう会うことが出来なくなってしまった。
ばあちゃんが亡くなったのは一緒に暮らし
始めて3ヶ月が経った頃。急に終わった。
そこから美咲の一人暮らしが始まった。
沖縄に来た家族と話し合って美咲はこの家に住み続け
ることにした。学校やバイトがあるから家の管理や難
しいことはばあちゃんの妹が時々来て面倒を見てくれ
ることになった。家族が実家に帰って3ヶ月ほど経っ
た今。バイトを終えて家の前に立つと草が膝位まで伸
びている。動かない頭と体で庭にある大きなガジュマ
ルを見る。あちらこちらに腕を伸ばす。 月明かりに
みるばあちゃんとの思い出の場所はお化け屋敷の
ようになってしまった。ばあちゃんの妹は来てくれる
が83歳になり、腰が曲がっているのだ。どうしてガジ
ュマルの枝どうにかしてなどと云えようか。それに切
るのは何だか抵抗があった。人間だって切られたら嫌
だもん。なんて思っていたら「ガジュマルは
放っておくと岩や家まで飲み込んで大きくなるさ。」
と貴子おばあに聞いてから家を守らなくちゃと本気で
考えだした。貴子おばあは亡くなったばあちゃんの妹
だ。植物の管理って難しい。