ばあちゃん
美咲は去年沖縄に引っ越してきた。沖縄の短大に進学
を決めたのはおばあちゃんが沖縄に住んでいるからだ。
地元にも学べる学校はあったが、おばあちゃんと一緒
に暮らしたかった。ばあちゃんの家には夏休みや春休
みに遊びにきて、とても楽しかった思い出がある。
海に行って、スイカ食べて、お昼寝して、散歩して、
また海に行って…。忙しくない限り毎年夏は家族で沖
縄にいた。その思い出からばあちゃんと暮らせるし海は
あるし、楽しいだろうと沖縄に来た。ばあちゃんは優
しかった。毎年私たちが来ると分かった時にはサータ
ーアンダギーを山盛りに作ってくれていた。いっつも
笑って、のんびりしてて、楽しい、天国だと思った。
家の近所には森があって、海も近い、なんだかゆ
ったりとした空気が流れていて大好きだった。
「ばあちゃん、バイト行ってくるよ。」
落ちかけている花をコップに差し直し、ばあちゃん
の写真に向かって声を掛けてから家をでる。選挙カー
が爆音で家の前を通り過ぎるのを意味なく目で追いか
けながらバイトに向かう。途中折り畳み傘が風に煽ら
れ寸胴のコップのようになる。いつものことだ。日傘
なんてどこのお嬢だと思っていたが、この日差しを浴
びるとバイト先に着いたときにはもう力尽きている。
私は自分の体力を死守しているのだと日差しと闘う通
勤道だ。
私の中で祖母はお父さんの方のおばあちゃん、ばあち
ゃんはお母さんの方のおばあちゃんと決めている。