加護の付与
特訓12日目。だいぶこの生活にも慣れてきた。刀の扱い方も大体わかってきたし、戦闘での身のこなしも初日に比べたら格段に良くなっていた。シンとの息も合ってきて長時間刀を振り続けていても疲れなくなってきた。
空を泳ぐ魚群の突進をいなし一匹ずつ両断していく。2m弱の魚が徐々に数を減らし、三十はあっただろう魚群が残り五匹となっていた。まず先頭の魚を切り裂き、そのまま刀を水平にし、もう一匹断ち切る。通り過ぎた三匹が旋回してこちらに戻ってくる。真ん中の一匹を袈裟斬りし、隣の魚を切り上げる。そして残ったこちらに戻ってきたラスト一匹を串刺しにする。
「よし、上出来だ。戻って昼食にしよう」
「ええ」
裂けた空間を通り元の世界に戻ってくる。
「そろそろ前に言った『加護』を授けてもいいかもな」
「ほんと?」
「ああ、食事が終わったらな」
お昼はバターを塗ったパンとソーセージという軽めのものだった。
食事を済ましたあとシンに連れられて、中庭へ行く。
「受け取れ」
シンが元の刀の姿になり私の手元に落ちてくる。シンを受け取り、刀を抜いて構える。
「目を閉じて、足を肩幅に開いて、手のひらから伝わる柄の感触から切っ先にまで意識を張り巡らせろ」
シンに言われた通り体制を取り、意識を研ぎ澄ます。
「我がここに約す」
シンがそう言った瞬間、辺りの空気が変わる。
「刀の九十九神の所有者、スイラン・シユに我の加護を授ける」
この言葉と同時に身体中を何かが駆け巡り、私の意識は闇へと誘われた。