特訓3日目
ガッ、という音が鳴り、刀がキリンの首に食い込むような形で止まる。私は首から抜けそうにない刀を手離し地面に転がりシンに近付く。
「首、斬れなかった」
「まあ生身の力だけでよくここまでやったよ。後はもう少し実戦経験を積んで扱いをマスターすれば良い」
キリンの首を刎ねる片手間にシンはそう言った。
首から抜けた刀がカランと音を立てて地面に落ちる。それを私は拾い上げ刀身に映る自分を見つめる。
「······私、もっと強くなりたい、もっとシンを扱うに相応しい九十九屋になりたい、だから······!」
「まあそう焦るな。もう少し基礎体力を付けたらちゃんと『加護』を授けてやる」
「······?なにそれ」
「知らないのか?」
「うん」
あれもしかしたらサエが言ってたやつって······。
「たまに長生きした九十九神の所有者が人間離れした力を出すことがあるだろ?あれが『加護』だ」
「へー、有名な人とかはやっぱり『加護』が付いてたりするの?」
「そうだな、大体名前が知られてるような九十九屋は『加護』があることが多いな」
「······それを私にも与えてくれるってこと?」
「まあそうだな。だがまずは刀を使いこなせるようになってからだ。明日からの動物たちはサエに頼んで柔らかくしてもらうぞ」
「わかった」
そういえばシンは封印されるほど長い間生きてたって言ってたし、『加護』を与えられたとしても不思議じゃないか。······そっか。私は凄い九十九神と引き逢えたんだ。そう思うと先程まで胸を巣食っていた感情も何処かへ消えてしまったように思えた。
来週も書けたら書きます。
羊木なさでした。