表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

邂逅

私、スイラン・シユは九十九屋だ。······とは言ってもまだ九十九神と契約すらしていない新参者。数ヶ月前からここ『噴水の街』に上ってきて九十九屋として活動する準備をしている。そしてその傍ら、近隣の人から九十九神がいなくても達成できそうな依頼を受けては小銭を稼いでいる。

今日は借りているアパートの斜向かいに住んでいるおばあさんにクラウンベリーの採集を頼まれて近くの森に来ている。


「ふんふふんふふん〜♪」


あのおばあさんもお店で買えばいいものをわざわざ私に依頼してくれるなんて本当に人がいいな。今後も仲良くしたいと思う。

カゴいっぱいにベリーを摘み納品に行こうと立ち上がった瞬間、背後からガサガサッと音がした。

······出てしまったか。今日は森の奥の方で他の九十九屋が害獣の討伐をしているらしい。それに触発されてこんな浅い方でも害獣が出たのだろう。

さてこんなときどうするか。普通の九十九屋だったら相手によるが交戦するだろう。しかし今の私は九十九神と契約していない身、つまりただの人間だ。ただの人間が森の深くにいる害獣に勝てるはずがない。ので、相手が何かアクションを起こしたらすぐに逃げよう。

ガサガサッ。

音が近付いて来た。大きく息を吸い込んで吐き出し走り出す準備をする。バッと右側から狼のような生き物が現れ、その反対方向に走り出す。

クソッ、あの狼は群れで行動するタイプの害獣だ。面倒くさくなってきたな。しかも森の出口からどんどん離されて行く。どこかでUターンするか、このまま森深くの九十九屋に助けを求めるか。······このまま街まで逃げよう。身体を右側に傾けた瞬間目の前の茂みが揺れ、狼が私に飛びかかってくる。なんとか屈んで躱したが今のは危なかった。

迫り来る狼を避けているうちに気付けば霧が深いところまで来ていた。ヤバイヤバイヤバイ。いつまで追いかけてくるんだよあいつら。ここまで深いところまで来ると他の九十九屋に会える確率も高くなるが、それよりももっと脅威度の高い害獣に出くわすかもしれん。それだけは避けたい。

そう思いながら走っているとき、足に衝撃を感じてパッと視界が回転する。顔面に鈍痛が走って初めて自分が転んだ事に気付いた。焦って立ち上がるも周りでは狼が私を囲み唸りを上げていた。もう打つ手が無くなったと思われたとき、頭の中に声が響いた。


『助けが欲しいならば5時の方向に向かってスライディングしろ』

「は!?」

『はやく!』


周囲の狼が飛びかかる瞬間、言われた通り5時の方角にスライディングする。すると偶然にも狼は私の頭上を飛んでゆき、間一髪私は生き延びることが出来た。


『そのまま全力で走れ!そして祠が見えたら中に入って刀を抜くんだ』

「はあっ、はぁ、あな、たは誰なの」

『そんなことはどうでもいいから走れ!』


声に言われた通り走り続ける。すると1分ほど走ったところで祠が見えてきた。扉を乱暴に開け、室内から刀を探す。部屋の奥に大きな木箱が神棚のような場所にあるのを見て直感的にこれが探している刀だと悟る。中を開けると包帯?紙?でグルグル巻きにされた刀であろうものが見えてくる。


「あった!」


包帯のようなものを頑張って剥がそうとするもどこらから剥がせばいいのかわからず混乱する。すると先程まで距離があったはずの狼達がもう祠の入口まで来ていた。低い唸り声が祠の中に響いた。先程まで頭に響いた声はもう聞こえてこない。


「いやっ、いやぁぁぁぁぁ!」


狼が噛み付いてこようとするが手に持っていた刀でなんとか防ぐ。その瞬間、狼の歯が鞘に引っかかり包帯が解け落ちる。すると頭の中に、部屋全体にあの声が響き渡る。


「刀を抜け!」


脊髄反射で右手が柄を持ち、鞘から抜く。するとブワッと目の前に煙が広がり、目の前に何かが現れる。


「よくやった少女。褒めてやる」


煙が晴れたその先にはとても美しい白髪の九十九神がいた。


「後は俺に任せておけ!」

こんにちは羊木なさです。

今回から新しいお話が始まります。

楽しんで頂けたら嬉しいです。

それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ