第72話「手紙」
「あぁそうだ。ちょっと待ちな」
日課になりつつある診察を終え、自室に戻ろうとした三笠を潮田は止める。珍しい、と思って振り返った三笠に潮田は手に持ったものをずいと差し出した。掌に置かれた物を見て見れば、それは白い封筒だった。
「ん。これ、預かりものだ」
手紙としてはあまりにも簡素で、花が無い。今どき手紙を使う人はあまりないだろう。宛名があるべき場所には何も書かれていなかった。
「あの、潮田先生。これは……」
「なんか、お前にお礼がどうしても言いたいってヤツがな、渡してきたそうだ」
「……そうなんですか!? そんなこと、あるんですね……」
人間違いではないか、と三笠が視線を向ければ、潮田はゆるゆると首を横に振った。
「渡してきたヤツは『銀髪の人なんですけど』って言ってたらしいしな。お前で間違いない」
どうやらこの手紙は、零課に届いたものを潮田経由で三笠へ届けたらしい。彼は腕を組み直し、顎でその中身を改めるよう促す。
糊すらされていない封筒を開くと二つ折りにされた紙が出てきた。少し眩しく感じる白色具合と手触りからして、コピー用紙だろう。とてもではないが、手紙に適した紙ではない。その中身もまたシンプルで、少し崩れた大小の文字が「あの時はありがとうございました」と感謝の言葉を述べていた。
じわり、じわりと浮かび上がってくるものを、必死に飲み干そうとする。そんな三笠に対して潮田は付け足すようにこう言った。
「まー名乗ってないとはいえ、腕章もしてたし、髪色の特徴もあるしなァ。人違いってこたないだろう」
念を押すように言った後、話を終えて潮田は自分の作業に戻ろうとする。
「……あの、潮田先生」
「んあ? なんだよ。それ以外には……本当になんだよ、その顔」
少し気だるげに振り返った潮田はぎょっとして三笠の方を見る。
「お願いといいますか、わがままを聞いてほしいんですけど……」
「気持ち悪い言い方をするな、どうした」
「転華病と上手く付き合っていく方法を教えてくれませんか。僕、まだ引っ込みたくないです」
「──は、お前そりゃ」
死にてェのか、そう言わんばかりに潮田は目を丸くした。彼が反論を口にするよりも早く三笠は畳みかける。
「分かってます、これがただの自殺願望にしか聞こえないことも分かってます。でも、僕が出なきゃできないことが、あるじゃないですか……!」
「っつってもお前、そりゃ不確定な話だろうが! 確かに、竜脈の異常がある今、強力なスペクターが出現する可能性は高い。いつ出てもおかしくない。数も多いだろうなァ」
潮田の言葉に三笠はぐっと息を飲んだ。
「そうですけど、でも、僕だけ引っ込んでいるのは無理です。ただ待ってるだけなんて、嫌ですし、苦しいです」
「そんなこたァ、分かってる」
その返事に言葉が詰まった。
「……すみません、少し、言い過ぎました」
慌てて謝罪するが、潮田自身は毛ほども気にしていない様子だった。それが逆に心に引っかかる。
「言い過ぎってこともない。俺が選んだことだしな。まァ、お前は元々戦闘を専門とする魔術師だし、なおさらキツイのは分かる。とはいえ──怪我が治ったからとホイホイ前線に放り込めるほど視野が狭いわけでもない」
腕を組んで彼ははっきりと宣言した。対策が無い状態で放り込むつもりはない、という宣言でもあった。
「だが、確かにここから先、少数では不利な戦いが予想される。頼れる手数は多ければ多い方がいい。お前の替えが利く魔術師が、現状どこにもいないのも知っている」
「すみません、わがままですよね」
「──そうだな。それで、ただの自殺願望じゃないんだろ。何か対抗策のタネでもあるのか?」
「一応、祖父母が残した記録なんですが……克服するための魔術式開発をしていたみたいなんです。今、完全にできなくても、少しでも折り合いがつけられれば行けると思うんです」
三笠は潮田へノートを手渡す。彼は眼鏡を外してからそれを開いた。
「な、なんだそりゃァ……んなもん、できたとして、今まで通りってワケにはいかんと思うが」
ペラペラとその中身を流しながら潮田は指摘する。当然だ。すでに今まで通りとはいかなくなっている。
「でも」
三笠が言い返そうとしたのを、潮田は止める。
「いい、分かってる。褒めてやるよ。黙ってやろうとしなかったことはな。相当なリスクを負っているってこと、忘れちゃいないよな。最悪前線で転華して、誰かを殺すって可能性も考えて言ってるんだよな」
至極真面目に、低い声で彼はそう言った。これまでも何度か、こうして潮田に注意を受けたことがある。ただ今回ばかりはどんな時よりも重い言葉だった。
「そうです……正直不安ばっかりですけど、でも、僕から魔術を奪ったら、何も残りません」
理論も何もない、ただのわがままにしかならない言葉を三笠は吐いた。聞いたことも無い低い声で、それでも表情はいつもとあまり変わらずに。その言葉を聞いた潮田は目を細めて静かにため息をついた。しかし、彼も何か思うことがあったらしい。少し顔を上げてこう付け加えた。
「まァ、俺としてもデータが集まるし、正直断る理由はない。面倒を見るってところはな。今後に生かすこともできるだろうし。お前が上手くできたら、今後治療法とまではいかなくても、対処療法として確立することだって不可能じゃない」
「……なら」
「そうだなァ。とりあえず調整には協力しよう。ただし、前に出るかどうかはその調整次第だ。場合によっては力づくでも日の出堂に保護してもらうからな」
萌黄色の瞳は鈍い光を放つ。保護、といえば聞こえはいいが、それが意味するのは半永久的な軟禁である。転華したものは、人の手で殺すことができない。それならば、深い深い根の底に追放するしかないのである。言葉も倫理をも捨て去った獣はそうするしかない。詳細は三笠も知らない。心臓に恐怖が爪を立てる。
「それでもいいな?」
確認の言葉に一つ頷く。
「構いません、お願いします」
強くはっきりと返事をする。それからすぐに二人は動き始めた。とにかく時間が惜しい。ゆっくり調整ができるのがベストだが、状況がそれを許さない。日の出堂の庭を借りて、三笠たちは現状把握のための試し撃ちを繰り返した。
「いっ……!」
派手に魔力が暴発する。暴発リスクが高まっていることは予想できていたため、巻き添えになることは無かった。怪我がない事を確認していると、潮田が駆けつけてくる。
「おいおい、大丈夫か」
「大丈夫です、上手く凌げました」
彼に気丈な返事をしつつも、三笠の表情は決して明るくない。
「今ので十発目だし、一旦休憩だな」
「そうですね」
潮田が差し出してきたコップを、三笠は座り込んだまま受け取る。中身は何の変哲もない水だった。今の時期であれば少し冷たく感じるだろう温度だ。それが今は酷く心地がいい。汗ばんだ頬に、結露のついたコップを当てて一つため息をついた。
「暑そうだな。質が火のやつにとって夏は地獄だと聞くが、実際どうなんだ?」
「地獄です。冬はいいんですけどね……下手をすると熱中症になりますし」
「だろうなァ。んで、さっきの試し撃ちの結果だが」
そう言って潮田はノートを開いて見せる。そこには先程の『竜哮一閃』と『春日雨』それぞれ撃った結果について綺麗な字で書かれていた。
「……そもそもちゃんと撃てている回数が少ないですね」
どちらも三分の二が不発だった。それを事前に予想して挑んでいたからいいものの、下手をすれば大怪我を負うこともある。命中率は相変わらず悪くないが、そもそも上手く撃てていないという問題ができてしまった。
「これの原因は分かるのか?」
「多分ですけど……魔力量が多くて誤爆した感じですね。魔力弾が装填した時点で解けてるんだと思います」
「ふーん、そういえば前にそれで指飛ばしてたなァ、お前」
「そ、そうですね……あの時は本当に運がよかったんですよ。もっと遠くに撃とうとしていたらたぶん……」
「最悪上半身と下半身がサヨウナラだろうな。大体分かった。こうと出るなら、魔力弾は使わない方がいいだろ」
「となると、実弾に頼るしかないんですかね」
「そういやなんで今までは実弾使ってなかったんだ? 魔力保有量が低いのは元からなんだろう?」
「それは荷物が増えるからですね……あとは、僕の最大射程に合わせた物となるとそれなりに高いので……」
「あー、そうか。普通に持ち運べるサイズだと、着弾する前に摩耗して消えるんだな」
潮田の指摘に三笠はこくこくと頷く。
パチンコ玉などの、ある一定の堅さを持つ物は基本弾丸として扱うことができる。しかし、物品によっては射程距離が酷く短くなることがあるため、その場の思い付きで使うことはまずない。必ず複数回は試し撃ちをして、有効射程を割り出さないと三笠は実弾を使う気になれない。
「パチ玉の場合だと射程はいくらなんだ?」
「『春日雨』なら二メートル前後ですね。『竜哮一閃』の方では小さすぎて使えないです」
砲身が大きいものに、小さな砲弾を詰めても上手く撃てない。その逆も然り、である。ある程度大きさは弄れるものの、『春日雨』と『竜哮一閃』では規格が違い過ぎる。
「ふーん……最大射程の弾の方はアテがあるのか?」
「お、お金を出せば……」
「お前、今金欠だろ」
「ここでもお金の問題に直面するんですか!」
三笠は思わず両手で顔を覆った。昨年末からずっとこの問題に悩まされている。それもこれも全て収入が不安定なことに起因するのだが、今すぐどうにかできる問題でもない。
「お前本当に金ねェな」
「魔術師って大体そんなもんじゃないんですか!」
「んまァそうだが。……とりあえずここにいる間は俺が出資する」
「えっ」
「言っただろう。今後の転華病患者のためだ。そう考えれば当然の投資だろう」
返す言葉が見つからず、瞬きを繰り返してしまう三笠に対して潮田はノートを渡しながらこう付け加えた。
「投資分を無駄にしないように頑張りな。んで、術式はどの程度弄ることになるんだ。それによってかかる時間と資材も変わるだろ」
「そ、それがですね……」
「なんだなんだ?」
「──一度全て解体して、根っからやらないと駄目っぽいですね。僕の保有魔力と炉心に合わせて作り直すことになる、ので……そこを司るのが基盤に当たる部分にある、ので、そうなりますね……」
言わばそこは土台の部分になる。
「あー、つまり……」
「えぇと、そうですね……僕自身が砲台だと思ってください」
「おう、分かった」
「こっち……胴体が発射と装填を司ります。腕が砲身ですね」
己を砲台に例え、三笠は説明を加えていく。
「本来有効射程には弾の大きさが影響するんですけど……僕の魔術の場合はそれをある程度無視できるようにしてるんです。その分魔術式の量も増えるんですけど」
肉体に組んである魔術式を全て解体し、基盤から直す。そしてその後、その上に新しく組み直した基盤に合わせて対応する魔術式を組み直すことになる。解体するだけならともかく、全ての魔術式が現在の基盤に合わせて作られたものだ。ほぼ全て一から作り直すということになる。
「つ、つまりですね……僕自身が、今までの術式にぴったり合うように手が加えられているので……」
「何も考えずに組み直すと、パーツが余るってことか。チョコレートパズルだな……」
潮田の例えに三笠は勢いよく頷いた。今回はパーツを増やすというよりは、以前の通り動くよう組み直す方が近い。元々拡張を想定して作られた魔術式であるため、不可能な話ではない。これまでの術式設計図があること、一部は手を加えずに再利用が可能であることだけが救いだ。その大変さを理解したのだろう、
「……そりゃ、おめぇ、資金以前の問題だろ。復帰間に合うのか?」
眉根を寄せて潮田は言った。
「間に合わせます、絶対」
少しの間も空けず三笠はそう答える。それに対し彼は少しだけ遠くに目をやった後に、満足げに口の端を上げた。
「相当な作業量なのは覚悟の上か。しっかしまァ、一人ならともかく俺もいる。何とかするしかないだろう。とりあえず必要そうな物を書き出しておいてくれ。俺はその間に仕事を済ませてくる」
「分かりました」
そんなやり取りの後に潮田は仕事へと戻って行った。彼の取ってくれた記録を参考に、これからどう組み替えるかを練る。非情に骨の折れる作業だが、最初が肝心だと言い聞かせて三笠は作業に取り掛かった。
時間制限を考えると、今日から四日ほどの猶予がある。四日目に完成するよう逆算して計画を立てていく。想像通り、予定表は真っ黒になった。無理のないように組んでもこれが限界だろう。そう見切りをつけて、三笠は潮田診療所へ戻る。こちらの世界はすでに日が暮れていた。
(やっぱり時間の感覚が変になるな)
向こうでの三時間は、現実時間の六時間に相当するらしい。庭の場所によって時間の流れ方が違うため、計算の仕方はその都度変えないといけないのだと潮田が話していた。
逆であれば余裕もあっただろうに。
(魔力を薄くすれば時間の流れって早くなるのかなぁ)
などと考えながら診療所の廊下を歩く。電気はついているものの、人はいない。ここが病院であることを思えばいいことなのだろう。しかしどこかそわそわしてしょうがない。三笠は足早に潮田の部屋を目指す。
「先生、いますか?」
そう問いかければ戸の向こうからはっきりと返事が返ってくる。
「とりあえず必要そうな物を書き出してきました」
「お、そうか。俺もとりあえずさっきのヤツ、解析終わったぜ」
そう言って彼は先程まで向かい合っていた画面を指す。三笠は促されるままにその画面を覗きこんだ。魔術行使の際に避けられない術者へのダメージや、出力の割合などなど、調整に必要な要素が数値化して綺麗にまとめられていた。後々やると言っていた作業のはずだが、もう済ませてしまったらしい。
「えっ、お仕事は……?」
「馬鹿、医者が暇なのはいいコトだろうが。ほら、お使いメモあるんだろ?」
そう言って潮田は右手を差し出す。三笠は大人しくその手にメモを渡した。
「んー……まァ、このくらいなら知り合いのところ回ればいけそうだな。そこそこお高いモンばかりだが……問題ないだろうなァ」
「で、ですかね……」
眉を下げながら三笠は頷く。
「それもだが、解析結果だが……現状を見るとあっちでの行動はあんまりよくないな。あっちでやるのは試し撃ちだけだ。体力も考慮して一日二回までってのはどうだ」
「二回ですか。調整したら、すぐ撃てるようにしたいんですけど……」
三笠がそう言うと潮田はかぶりを振って時計を指した。
「仕方ないだろう。前にも言ったが二、三日以内に事は動き出すだろうし、あの場所に留まりすぎた結果間に合わないってなったら一番悔しいことになる。そこで転華する可能性もあるしなァ」
「確かにそうですね。慎重に、だけど確実に……って感じですか」
確認するような問いに潮田は大きく頷いて返してくれた。
「おうよ。頼んだぜ。んじゃ、とりあえず今日は寝な。不安だって言うなら一緒に寝てやってもいいぜ」
「あ、それは遠慮しておきます」
翌日。三笠は起きてすぐに作業を開始した。潮田が買い物に出ている間に、設計図を描き直すところから始める。大枠から描き始め、細かいところを詰めていくのがセオリーだ。ただひたすらに描き出す作業だが、三笠は全く慣れていなかったために時間がかかってしまう。
魔術というものは基本的に『継承』『再解釈』『再構築』の順に人から人へ伝えられていく。実体のない物であるために、引き継いだ魔術師ごとに構築し直す必要があるのだ。構築の仕方は人それぞれで、今回の三笠のように紙に描き出す者、脳内で全て書き切りそのまま出力できる者、喋りながら構築する者、その他三笠の知らぬ方法を使う者。
今回の場合は『再解釈』をもう一度行い、『再構築』へ繋げる必要がある。元より拡張を想定して作られた魔術式ではあるが、祖父母と三笠冬吾の構築の仕方には大きな違いがある。祖父母はどうも、脳内で済ませてしまうタイプだったらしい。そのためメモも十分とは言い難い、抜けの多い内容であった。それを丁寧に紐解いて書き直す作業もまた、三笠の気力をごっそりと削いでいく。そんな具合で一時間、二時間が過ぎ……そしてあっという間に昼になった。
「おーい、三笠ァ。買って来たぞ」
「あ、潮田先生……お疲れ様です」
集中力が切れ、やる気だけを持て余していた三笠は立ち上がって潮田に駆け寄る。
「買って来たモンはお前の部屋に突っ込んどいた。ちょうど作業も一区切りついたみてェだし、昼にしようぜ」
三笠の疲労を見抜いたのか、潮田はさっさと自宅の方へ向かう。
潮田診療所は潮田家に併設された建物内にある。潮田不在の折、三笠が作業をするときは必ず診療所の方で行うと約束をしていた。自宅の方が魔術的な環境が整えられているからだ。
「お昼は何かアテがあるんですか?」
意気揚々とキッチンに立った潮田に、三笠は控えめに問いかける。彼はエプロンを着ながら冷蔵庫を開けた。
「んー、ありもので適当に作る。ま、いつも通りだな……お、これならいけそうだな……」
ぶつぶつと独り言を口にしながら、潮田はいくつかの食材を手に取った。
「僕も手伝います」
「病人は黙って机でも拭いてろ」
せっかくなら、と差し出した手に布巾を押し付けられる。潮田の言葉に逆らえない三笠は、黙って食卓を拭きに行った。それはもう、丁寧に、念入りにだ。それでも時間を持て余したので、先に座って作業をしながら待っていた。しかし作業は早々に手が止まり、三笠の意識は眠気に飲まれた。
「おい……そんなに疲れてたのか」
目の前に皿が置かれた音と、潮田の声で三笠は目を覚ました。
「えっ、わっ、す、すみません」
「いいぜ別に。ただ飯は食っておけ。抜くと生活習慣が乱れるしなァ」
彼は三笠にスプーンを差し出しながらそう言った。皿を見てみれば、山盛りの焼き飯が湯気を立てている。冷蔵庫にはちくわが入っていたのだろう。小さく切られたそれらがコメの間から見え隠れしていた。そのボリュームに気圧されながら、三笠は両手を合わせた。
「い、いただきます……!」
「はいよ。……ん、結構上手くいってるな」
「……ちくわってこんなにおいしいものでしたっけ」
一口頬張って、ちくわの香ばしい香りに目を輝かせる。何度も何度も咀嚼すれば、焼き飯の正体がだんだんと見えてくる。味付けに使われたのはカレー粉だろうか。
(ウスターソースとか、ケチャップもあるのかな……大胆な味付けだ)
頬張りながら料理から潮田らしさを感じて、三笠は思わず微笑んでしまう。
「んなの調理次第、だろ。まぁ、ちくわはシンプルだしな。主役にするのは難しいかもしれん」
そんな三笠の反応を見ているのかいないのか、適当なことを言いつつ潮田はあっという間に皿を空けた。
「そんで進捗はどうなんだ? あんまよくなさそうな顔をしていたが」
潮田の問いかけに三笠は手を止める。
「それが……設計図の描き直しに手間取ってまして」
「あー、そこからか。まァ……既成術式ならそういうこともあるわな」
「回復系統は全部その場で組みますもんね」
「そうだな……とはいえ、俺も既成術式を使わないわけじゃない。ちょっと見せてくれや」
描きかけの魔術式を潮田に渡す。彼は図面を凝視して何かを考えている様子だった。三笠は食べる手を止めたまま答えを待つ。
「……なるほど、実弾に合わせて組み直すとこうなるんだな。魔力弾に使っていた保護が要らなくなるから、他に割けるが……発射を司る術式の改良が必須と」
「そう、なんですよね……ただ、そこを改良するとなると、今までのような射程は難しくなりそうです」
「フーン……それはしょうがねェな。削っていくらだ? 言ってもお前の、元からめちゃくちゃ長いだろ」
「えっと……希望的観測ですと五キロですかね……以前が十キロだったので。もしかすると……一キロもいかない、かもですね……」
「ん、ならそれでいい」
「え」
潮田の即答に、三笠は目を丸くする。その反応に対して彼は小さくため息をついて、こう付け加えた。
「だってそうだろ。そこまでの長射程、今まで使ったこと無かったろ? んなら、まずはしっかり撃てるようにすればいい。射程伸ばしは後でもできる……か?」
首を傾げつつ、彼は三笠に目をやる。
「でき、ますね……その辺りの調整は術式の中でも外側なので……じゃあ、とりあえず発射機構だけでも形にしようって感じですかね」
「それがいい。最終的には元の射程を超えることも考えていいだろうが……まずは撃てるようにするのが先決だ。そんで次は命中率。そうだろ?」
「そう……ですね……」
目を丸くして、三笠はほうと息をついた。
「何呆けた顔してるんだ。全く。あんまり勝手に追い詰められても困る。そういうので進行するかもしれねェんだぞ」
ずばり、と現状を潮田は指摘をする。それを聞いた三笠は慌てて頷いた。
「す、すみません。失念してました……でも、そうですね。とりあえずそれでやってみます」
「んならいい。とりあえず飯食って片付けしたら、作業に戻れよ」
「は、はい」
三笠は返事をしてスプーンを持ち直した。しかし寝起きだからか思うように早食いができない。結局時間をかけてゆっくりと山盛りの焼き飯を腹に納めていくことになった。その途中で、三笠はずっと抱えていた疑問を潮田に投げかけた。
「……そういえば、潮田先生って転華病のことをどこから知ったんですか?」
それを聞いた潮田は新聞紙から顔を上げて、瞬きをした。質問の内容が意外だったのか、少ししてから彼は口を開く。
「ん? あぁ、それか。イヤ、特に奇抜でもない。単に身内がそれで死んだって聞いてなァ」
「え、あ……」
さっと顔を青くする三笠に、彼は手を振ってこう付け加えた。
「構わねェよ。ていうか別に、特別知ってる人でもなかったんだ。ただ、原因不明ってのが引っかかってなァ。その時はもうすでに、医者になることを決めてたモンだし、異形化して死んだってなったら……気になるだろ」
その目にあるのは知的好奇心か、それとも後悔か。三笠はそのどちらでもないと感じた。使命感、が一番近いかもしれない。
「それであんなに詳しかったんですね」
「ま、実際に発症したヤツに会ったのは幸嗣さんが初めてだと思うけどな。本当に気が付かなかった。大抵はすぐ異形化するからな」
「そういえば、そのせいですぐ死んでしまうから存在自体が知られにくい、って言ってましたね」
三笠の言葉に潮田は頷いた。そして指を立てて、幸嗣についての話を広げていく。
「これは俺の予想なんだが……幸嗣さんが分かりやすく異形化しなかったのは、特性が変幻自在だったからなんだろうなァ」
「なる……ほど? つまり、異形化した場合は明らかに入れ替わっているのが分かるけど、あの人の場合は入れ替わった上で擬態していた、みたいな感じですか?」
異形化する時、その造形に影響するのは魔術の特性らしい。ヒルコという神になれなかった、何者でもないモノを使役する魔術師。後世にいくつもの物語を付け足されたヒルコは『何にでもなり得る存在』と化したらしい。
「その通りだ。あの姿を、異形化したままの姿だと思わない方がいいだろうな。転華した後に改めて、人の姿に変化すれば話の筋は通る。元々姿かたちに囚われない性質だから、自我も失わずに済んだ、というわけだ。頭がよく回るじゃねェか。珍しいな」
「自分のこととなるとやっぱり……理解できるようになりますね」
「そんなモンだろ。他人のことってならァ、なんとなく理解はできても実感はしない。けど、自分の身に起きるとなれば嫌でも理解する。そういうモンだ。だから愚者は──なんて言うんだろ」
誰の言葉だったかな、と潮田は付け加えた。果たして賢者などいるのだろうか。こんなことを聞くだけで実感できるような者が、いるのだろうか。いつしかの疑問を飲み込みながら、三笠は小さく息をついた。
「ま、あんまり心配事増やしても精神衛生上よくねェからな。これが通常運転ってことだろう。俺も、お前も」
「そう、ですね」
「……医者の仕事はそういうもんだ。予防は結局、当人が頑張らなきゃいけないからな。それなのにお前ときたら」
「すっ、すみません」
「謝んな。無茶をしたっていうのは確かだし、それが原因であろうことも理解できるが……それなりに努力してなきゃこうはならねェ。ある程度の練度がなきゃ、転華病にはならないはずだからなァ」
口の端を吊り上げながら潮田は付け加える。その言葉を聞いた三笠は一瞬きょとんとしたが、すぐに真面目な顔をして頷く。
「……やりましょう、活路は絶対にあると思います。今後のためにも」
日が沈むころには改良の目途が立つ。それを図に描き起こして、その日の作業はようやく終わった。
※
翌日。
潮田旭は腕時計に視線をやる。あれから一時間。出てくると宣言した時刻になっても、扉は開かない。一秒も開けず、潮田は扉を開け放つ。暗闇の中ポツンと一つ、スタンドライトの灯りが浮かんでいる。その下、血だまりに突っ伏す人物がいた。血に濡れた刃物を携えたその人は、薄っすらと目を開けて乾いた唇を動かした。しかし、声が思うように出なかったらしい。代わりに乾いた空咳が一つ聞こえた。
「全部予想通りにしなくてもいいんだぞ」
「す、みませ……」
小さく謝罪の言葉を口にして、三笠は弱々しく咳き込む。それが治まるよりも早く潮田は傷の処置を始めた。鈍い光を湛えた血だまりと、皮の内はぬらぬらと蠢いているように見える。目を凝らさずとも、血肉の間に刻まれた魔術式が映り込んだ。
こういうシロモノであるために、魔術の枠を組み替えるには文字通り身体を開かねばならない。手先を狂わせるから、と言って彼は痛み止めを飲まなかった。ならば代わりに、と潮田は錯覚を起こす魔術をかけたが、効果はあったのだろうか。痛みや苦しみを感じずとも、ここまで鮮やかな赤を見ていれば、当然気分が悪くなるはずだ。
(──だから既成術式は発達しねぇんだよな)
潮田も手伝いたいところだったが、未だに三笠の魔術を理解できていない。
端的に言えばあの魔術式は『複雑かつシンプル』で、いわばピースの多いミルクパズルのようなものだ。三笠は時間をかけて一つ一つについた傷やへこみを覚えこんだという。初見でそんなものを短時間で読み解けるほど、潮田は頭の回転が速いわけではない。
そのために今回は補助に尽力することになった。痛みを和らげる魔術に、震えや恐怖の除去。苦しみを取り除こうと手を尽くしたが、完全にはできない。作業自体が失敗しては意味が無いからと、痛覚を麻痺させる系統の魔術は使えない。せめてもの助けになるようにと、潮田は人体解剖学を三笠に叩き込んだ。致命傷を負わないように、自らを傷つけ過ぎないように。潮田ができるのはここまでだった。歯ぎしりをしながら、彼は必死に魔術式を繰る。慎重に、それでも早く。三笠の病を刺激せぬように。
「よし、そのまま動くなよ。輸血するからなァ」
てきぱきと用意していた医療器具を広げていく。
(本来はこうならないんだろうな。設計者は自分が死ぬことを考えていなかった、か)
三笠の身体は自分で組んだ治療魔術を受け付けない。他者からのそれは正しく発揮するが、自分で組むとどうしてか無効になる。
これについて、彼はきっちりと潮田に説明をしていた。
『魔力由来の回復術式はどうも組み込まれているんですが……しかも治癒力を上げるタイプのやつです。父は『身体固定魔術』と言っていましたが、どうも繊細でこまめな手入れが必要だったみたいなんです。実際に見て見ないことには、どうしようもないんですが……』
三笠の予想に潮田は思わず唸ってしまった。
そして予想通り三笠の持っていた治療魔術は身体の内から治すことを促進するものだった。術式自体は非常に単純でよくあるものだった。ただそれが、少しだけ弄られ本来は持ちえない特性を持っていた。それが『他の魔術式には反応できないが、特定の魔術式に反応した場合その効果が増幅する』というものだ。
つまりその特定の魔術式でしか、三笠は自分を治す方法を持ちえない。他の治療魔術を三笠自身が使うことはできない。潮田のような、別の魔術師が彼に治療魔術を使うことは可能だ。自己修復力が皆無な魔術師は、治療が可能な魔術師の庇護下にいなければ戦闘に参加することもできないだろう。
(コイツの祖父母は、いや、母親は治癒力を全て魔力由来にしたかったわけだ)
もちろん、例の隔離されている身体維持専用の魔術式を解析すれば、彼自身が使える治療魔術も組むことができるかもしれない。だが、おそらくあの魔術式は膨大な量の魔力さえあれば発動する単純なものだ。トリガーとなる魔力量を三笠一人では満たせないだけで、仕組み自体は使い古されたもののように潮田の目には見えた。
自然な治癒力を捨て、超人的な治癒力を求める。炉心があればその効果は増大するだろう。膨大な量の魔力があれば、回復し続けることができる。転華対策というのはこれのことも指しているのだろう。
治療魔術の本懐は、術者が指定する『元の形に修復』するというものである。異形化にさえ対抗できる治療魔術となれば膨大な量の魔力が必要になるのは当然だ。魔術師の壁を超える存在として、そうあるように手を加えられ続けた存在。目の前で寝転がる彼は、そうあるよう強く望まれていたらしい。定期的なメンテナンスが必要なのはきっと、意図してのことだろう。執念すら感じさせる祝福を潮田は睨む。
「…………なァ、それでもお前は、恨んじゃいないんだよな」
空しさから一つ、言葉が零れ落ちた。眠る彼の、意識にはきっと届いていない。
※
「なぁ三笠、お前幸嗣さんの記憶を見たって本当か?」
翌日。潮田は外出先から帰ってくるなり三笠にそんな問いを投げかけた。
「あ、はい。え、誰から聞いたんですか?」
潮田の勢いに正面から巻き込まれた三笠は目を丸くして頷く。今日は貧血から回復した後、試し撃ちを行った。三笠は潮田から、その結果を整理しつつ休息をとるよう言いつけられていた。一人大人しく宛がわれた部屋で横になりながら分析をしていたらしい。近くの机には菓子の袋がいくつか放ってあった。それをゴミ箱に放りながら潮田は答える。
「津和野から聞いたんだよ。色々確認することがあってな。適当に話していたらその話題になったんだ」
「な、なるほど、そうだったんですね」
津和野と潮田が何を話すのか、三笠には全く想像がつかない。津和野は潮田に対して人見知りにならないのだろうか。話がある程度弾むということはそれなりの仲ということだろうか。津和野と潮田の関係について考える三笠の横で、当の本人は顎に手を当てて考えごとをしている。
「んー。となると……実質一度は転華を克服している、と考えるのもありか」
「えっ、そんなのありなんですか!?」
三笠は思考を中断して、そちらに突っ込む。
「だって考えてみろよ。津和野にもしっかり確認は取ったんだが……要は、アレは記憶の追体験。痛みも苦しみも同様に感じることになる、んだろ?」
「え、ええ……まぁそうですけど」
「転華病で異形化した時に、即死に繋がってしまうのはストレスコントロールが適切でないから、というのもあると俺は思う。感情は魔術の大事なピースだからなァ」
「確かに、感情は魔力と質が似ていると言いますし……」
「そんで、何かヒントになりそうなアレソレとかなかったのか?」
「えっ……あー……」
潮田の質問に三笠は目を泳がせる。その反応を見た彼は肩を落とした。
「……ないのか」
「ない、と言うよりは……分からなかったんです」
眉を下げながら三笠は弁解をする。
「理解が追い付かないって言いますか。津和野さんも『狂人のそれだからあんまり聞き入れないで』って後で言っていましたし……全部が全部見れたわけではないので……」
「まー……そうか。なんだかんだ言って、狂ってなきゃ抑制は難しいんだろうな」
焼け落ちた記憶の事もある。仕方ないか、と呟いて潮田は落胆しながらメモを取った。
「とはいえ……その追体験で転華病が進行しなかったのは確かだ。何か、どこか無意識の内では、その考え方を理解してるんだろうよ」
「そうなんでしょうか。それはそれで、複雑ですけど……」
納得のできないまま三笠は首を傾げる。
「イヤ、なんてったって、転華するところを見たって所がミソだ。見たんだろう? 一応」
「あ、確かに見ました……けど、うーん。どうなんですかね……」
指摘を受けて、その場面を思い出そうとしてみる。しかし、それ以外に気にかかることがあったからだろう。思い起こされる記憶はあまりにも朧気で、要領を得ない。あの記憶の中身全てが濃かったと言っても過言ではない。それ故に、普段であれば覚えていそうなことも、他の濃い記憶にかき消されてしまっているようだった。
「んー、見たつっても無意識下だと最大限欲しい効果は得られんだろうし……」
「やっぱり、ちゃんと言語化して理解しないと安心はできませんよね」
「幸嗣さんがどういう状態だったのかは覚えているか」
「えっと、異形化したうえで初瀬幸嗣という人間に変身していた……ですよね」
「あぁ。お前の性質と合うかは分からないが、万が一異形化しても人の姿を保ち続ける方法のヒントにはなるだろうからな。もう一度思い出してみてくれや」
そう言って潮田は報告書のコピーを差し出した。分厚いそれを三笠は両手で受け取る。ずっしりと感じる紙の重みは、その中身の濃さを示していた。
ぺらり、とそれを一枚めくってみれば、あの時見た記憶が映像のように脳内で蘇る。
その後半日は記憶の咀嚼に費やされた。
(あと一日、か……)
魔術式の修正は終盤に差し掛かっていた。しかしやることは最初から一つも変わっていない。直して、撃ってみてまた直す。そこが直ったら今度は別のところがズレる。それも直す。そしたら今度は最初に直した場所がダメになる。複雑で幾重にも層を成す魔術だからこそ、生まれるズレだった。直す、試す。試す回数には限りがある。一日一回、できて二回まで。それ以上は難しいと潮田も三笠も分っていた。
直す、直す……じっと己の魔術を見つめている。
そのうちに、どこもかしこもおかしいのではないか。そんな気さえしてくる。そんなはずはない、そんなはずはない。ちゃんと基本には沿ってある。説明書に当たるものだってある。闇雲にやっているわけではないはずだ。
あちらを立てればこちらが立たない。
蓋をしようとすれば底が抜ける。
そんな具合に永遠と直す個所が湧いては消える。当然だ、新しいことをやろうとしているのだから。簡単にできるはずもない。それができれば、誰も苦労はしていない。
立たぬ、崩れる。
炉心を組み込む場所を残して、魔術式を削って、書き加えて。書き込む枠を増設したり、そこへ新たに書き込んだり。
全体のバランスが悪くならぬよう、何度も俯瞰する。見返すたびに小さなミスが見つかる。
「どうしてこんなミスに気が付かない?」と何度思っただろうか。気が付くことができれば違和感を抱けるのに、気が付けなければ完璧だと思ってしまう。
その繰り返しはいつしか夢にも出るようになっていた。
起き上がって時計を見る。午前三時、少し過ぎ。寝汗を服の裾で拭きながら三笠はベッドを出た。先ほどまで何か夢をみていたような気もするが、苦しかったことしか覚えていない。
(……何かヒントになったかもしれないのになぁ)
少し惜しいと思いながら給湯室へ行ってコップを手に取った。冷えた水を喉に流し込めば、少し頭がすっきりする。そのままの勢いに任せて、三笠は外へ出た。このまま眠れる気がしなかったからだ。
(そっか、明日か)
潮田から告げられた期限はなんと明日だった。これ以上待機はできないと零課も敷宮も結論を出したらしい。ああ言った手前、どうにかして形にしたい。そんな焦りがあった。三笠は適当な軒下に腰かけて、空を仰ぎ見た。
もう一度、と膝を立てはしてもそれ以上身体が持ち上がらない。
あの時ほどボロボロではない、小奇麗になった己の掌を見る。これじゃ、誰かを守るどころか、足を引っ張ってしまう。これなら、こんな自分ならいない方がマシだ。いない方が絶対にいい。
(自分を犠牲にしないで、誰かの助けになるなんて弱い僕には無理なんだ)
不意に溢れた黒い感情の動かすままに拳を振り上げてみた。が、そこから勢いよく振り下ろすことはできずに、そのままの状態で息を吐く。ゆっくりと振り上げてしまった手を下ろしながら思考を落ち着けた。静かに息を吸って吐く。しばらくそれだけに集中することにした。
(いや……でも、待たずに動く方がいいのかもしれない)
思考の波の合間にふわりと浮かんだアイデアを捕まえる。幸嗣の記憶の片隅。焼け落ちた記憶の残滓。そこにいた人物が、もしかしたら竜脈を解放しに来るかもしれない。
三笠には、石見の正体に心当たりがあった。
自分のことを知っていて、初瀬幸嗣のことを知っていて、なおかつその死をきっかけに三笠に恨みを抱いているかもしれない人物。
今日改めて彼の記憶を覗き見て、思い当たった人物だった。
(なら、答えは決まってる)
彼、いや、彼女が場を荒らしに来ることは想像に難くない。それでまた誰かが死ぬのは嫌だ、と軋む心が呻く。
(大丈夫、当てられなくても全部の魔力を突っ込んだら、道連れに……確実に仕留められる。僕が方を付けなきゃ)
ぐっと恐怖も卑屈も飲み込んで覚悟を決める。
一人突っ走ろうとするその姿を、空にぽつんと浮かぶペーパームーンだけがそれを見ていた。




