表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おせんべい

作者: 梨香

『ひだまり童話館』の『ぱりぱりな話』に参加しています。

「ぱりぱり……ぱりぱり……ぱりぱり……」


 ずっと、私は黙っておせんべいを食べている。


「ぱりぱり……ぱりぱり……ぱりぱり……」


 結衣ちゃんも黙っておせんべいを食べている。


「……ぱりぱり……ぱりぱり……」


 結衣ちゃん家のお母ちゃんが出してくれたおせんべい。そこそこおいしいけど、どちらかと言うと私はポテチの方が好きだ。でも、今はポテチじゃなくておせんべいが目の前にあるから食べている。


「……ぱりぱり……ぱりぱり……」


 結衣ちゃんもポテチの方が好きなのは知っている。でも、私と同じようにおせんべいを食べている。


「のどかわくわ……」


 結衣ちゃんが麦茶の入ったコップに手をのばした。『ぱりぱり』の音が絶えたら、気まずい沈黙だけが結衣ちゃんの部屋に満ちる。


「うん、のどかわくなぁ」


 私も麦茶のコップに手を伸ばす。結衣ちゃん家は秋になっても冬になっても麦茶だ。子どもにジュースやカフェインが良くないと結衣ちゃんのお母ちゃんは考えているからだそうだ。だから、ポテチより油で揚げてないおせんべいなのかもしれない。


「ふふふ……ごめんな」


 結衣ちゃんがあやまった。冬に麦茶を出したのをあやまったんじゃない。


「ううん、こっちこそごめんやで」


 二人でくすっと笑っておせんべいをぱりぱり食べた。


 なんだか前よりもほんのちょっとおいしく感じたけど、やはり私はポテチの方が好きだ。


「なぁ、明日はうちに来ない?」


「ええなぁ」


 家のお母ちゃんは食べたい物を食べたら良いって感じなので、ポテチもありだ。結衣ちゃんもよく知っている。


 学校でしょうもないことで言い合いになって、気まずくなったけど、前からの約束だったので結衣ちゃん家に遊びに来た。でも、なんとなくあやまりにくくて二人しておせんべいをぱりぱりしていた。


「今度から、どうでもええ事でけんかせんとこなぁ」


「そやな、気まずいの嫌やもん」


 二人で食べるおせんべいはそこそこおいしかった。


        


          おしまい




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おせんべいと麦茶、読み手の私からするとおいしそうだけど、結衣ちゃんも「私」も、何か違うなあっていう感じだったんですね。 その言葉に出せない感じを、「のどかわくわ」の一言で共有できて、繋がっ…
[良い点] おせんべいのぱりぱりでしたか。 黙々と食べている雰囲気がどうなるのかと思いましたが、やっぱり「仲良く」がいいですね。二人を繋いだおせんべいに感謝ですね。
[良い点] ひだまり童話館様の企画に初めて参加して、拝読いたしました。 ポテチよりもおせんべいの方が、ぱりぱりの歯ごたえや音がありますよね。 それなので口に出しやすくなったのかなと思います。「ごめんな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ