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短編

断れない系男子の俺がクラスメイトのお嬢様に偽の恋人役を頼まれる話

作者: 夕凪 マヨイ

フォロワー様の作品読んでたら学園ラブコメを書いてみたくなったので書いた作品です

短編作品として文量を圧縮したり、説明省いたりもしてるので色々酷いところしかないと思います

「お願い! 今日だけでいいからあたしと掃除当番変わってくれない?」


 ホームルームが終わって放課後の時間となるや否や、クラスメイトの金髪のオシャレな女子生徒が俺の席にやって来て、手を合わせながら頭を下げて、今日の掃除当番を代わって欲しいと頼みこんできた。


「変わってくれって……その理由は?」


「実はこの後彼氏とデートなんだけど、先生に掃除当番を任されちゃってさ〜。ねっ、お願い? 当番変わってくれたら今度何か奢ったりしてあげるからさ!」


「一応聞くけれど、クラスの他の奴に掃除当番を変わってくれって頼んだりはしたのか?」


「他のみんなにも頼んでみたんだけど、断られたり逃げられたりしちゃってさ~。こんな事頼めるの、もうあんたくらいしか居ないの! ……ダメ? マジのマジで困ってるの!」


 そう言って、彼女はチラリと上目遣いでこちらの反応を伺いながら頼み込んでくる。

 ほんの少しどうするか頭の中で悩んで、俺は小さく溜め息を吐いてから口を開いた。


「はぁ、分かったよ。今日の当番は俺が変わっとく。だから、彼氏とのデートを楽しんできな」


「っ……! さんきゅ、マジで助かる! このお礼は首を洗って楽しみに待っててよ。んじゃね!」


 そう言って俺の肩をバシバシと叩いて、こちらにパチッとウインクを決めてから彼女は教室を出て行った。


「首を洗ってって……一体俺が何をしたっていうんだ」


 なんだか急に疲労感がドッと押し寄せてきて、俺は肩を小さく落とした。

 すると、そこに今度は1人の男子生徒が俺の席にやってきた。


「まーた他人の面倒事を引き受ける事にしたのか? お前は相変わらずのお人好しだなぁ」


「別に俺はお人好しって訳でもないっての。困ってるって言われたら、普通は力になりたいって思うだろ?」


 中断していた数学の課題プリントを解くのを再開しながら、俺は声を掛けてきた男子生徒に返事をする。


「いやまぁ、それはそうかもしれないがな。でも、()()()()()()も断らないで()()()()()()()奴なんてのは、 うちの高校でお前くらいだよ」


 そんな言葉を口にしながら、俺の前の席に座り、やれやれといった様子で両手をあげるイケメンの男子生徒。


 こいつの名前は君島(きみしま)。中学の頃からの付き合いのある俺の友人だ。

 頭は良い方ではないが運動神経抜群で、顔はイケメン、身長もそれなりに高くて、女子からの人気はかなり高いのだが、中身の方は割と……いや、とても残念な奴だ。


「他の奴はみんな嫌だったり面倒だったりしたら、適当な理由をつけたりして断ってるんだから。今まで何度も同じ事を言ってきたが、お前はなんでもかんでも人の頼みを引き受けるのはやめた方がいいぜ?」


「……なんか俺を心配してる雰囲気を出しているが、俺にこの課題プリントをやってくれと頼んできたのは君島だよな。このプリント、やらなくてもいいのか?」


 冗談まじりで断ってもいいのかと君島に尋ねてみたら、君島は急に慌てた様子で俺の手をガッと両手で握ってきた。


「課題プリントに関しちゃマジで頼むって! 俺の事情はお前もよーく知ってるだろ? 俺にはお前しか頼れる奴が居ないんだよ……!」


「分かったから俺の手を握るな! また周りから変な目で見られるだろ!」


 君島の手を強引に振りほどきながら、俺は周囲に視線を向ける。

 案の定、俺と君島のやり取りを見ていた一部の女子の黄色い声が聞こえてきた。


「やっぱりあの2人って……!」


「絶対出来てるって! どっちが攻めで、受けで……ううん、どっちでもアリね!」


 そんな女子の声など聞こえていないかのように、君島は大きく体を伸びをしながら欠伸をした。


「別に周りの声なんか気にする必要ないだろ? お前だって後輩から"パシリの人"とか言われてんのに全く気にしてないじゃんか」


「……いや、それは初耳なんだが?」


 えっ、俺って1年生からそんな呼び方されてたの……。


「なんだ、知らなかったのか。結構有名だよな?」


 俺の言葉を聞いた君島が、まだ教室に残っていた他のクラスメイト達に問いかけた。


「有名っていうか、この学校じゃもう周知の事実みたいな感じじゃないか?」


「私達からしたら、寧ろ知らなかったんだって感じだね」


 クラスメイト達の反応に内心少しショックを受けていると、君島が俺を励ますようにバシバシと肩を叩いてきた。


「ま、別にパシリってのはお前の日頃の行い的にもあながち間違ってねえし、あんま気にするような事じゃねえだろ」


「……俺はパシリじゃない。人助けをしてるだけだ」


「周りからしたらあんま大差ねえっての。その風評が嫌なら、頼まれたから全部引き受けるんじゃなく、たまには断るって事も覚えるんだな。そのうちとんでもないお願いをされても俺は知らねえぞ?」


「その時は俺もちゃんと断るよ。流石にその辺は理解してるつもりだ」


「本当かぁ……? ま、お前の親友の1人として忠告はしといたからな」


「あぁ、ありがとな。ほら、ついでにお前のプリントも終わらせといたぞ」


 君島にそう告げて、俺は席を立ち上がった。


「おぉ、サンキュー! やっぱり持つべきものは頼れる友人だな!」


「いい加減毎回頼られる身にもなってもらいたいんだがな……。んじゃ、俺は早速掃除の方を済ませてくるかな」


「えっ、お前本当にあいつの掃除を代わるつもりなのか?」


 すると、普段は俺の手伝いなど殆ど無関心な君島が珍しく聞いてきた。


「いや、まぁ、当番変わるって言っちゃったしな。流石にここで俺がサボるわけにもいかないだろ」


 俺は自分の荷物を片付けながら、聞いてきた君島に言葉を返す。

 そして、教室を出ようとしたところで、君島は衝撃的な言葉を口にした。


「でもよ、あいつが任されてた掃除場所って確か()()()()()だぞ」


「……な、何だって?」


 ピシッと石のように硬直しながら、ギギギと俺は後ろを振り返った。


 これからは誰かに助けなどを求められても、引き受けるのは相手の話を聞いてからにしよう。

 ほんの少しだけ俺はそう思った。




 ◇




「はぁー……今日もギリギリ下校時刻までに全部終わった」


 疲れた体を大きく伸ばしながら、俺は廊下をのんびりと歩く。

 女子トイレの清掃、花壇の水やり、職員室で書類整理、図書室で蔵書の移動の手伝いなどなど……。

 本日も色んな人の手助けをした1日だった。


「とりあえず、もう女子トイレの掃除は懲り懲りだな……」


 日頃の行いのお陰もあって、なんとか教師同伴で掃除する事を許された感はあったが、2度目はもう無いだろう。

 というか、俺の精神が女子トイレという空間に居続ける事に耐えられる気がしなかった。


 そんな事を考えながら、肩の力を抜いていたその時だった。


「──今日も人助けお疲れ様です、音無(おとなし)世界(せかい)くん」


 そんな透き通るような女子の声と共に俺の名前が呼ばれ、パチっと教室の電気が付けられた。


「ん……?」


 思わず背後を振り返ると、そこには1人の女子生徒がいた。


 彼女の名前は竜胆(りんどう)華音(かのん)

 俺と同じクラスの女子生徒であり、恐らく彼女の名前を知らない生徒はこの学校にいないだろう。

 腰辺りまで伸びた、手入れの行き届いた綺麗な黒髪に、モデルの様にすらりと整った体型。誰もが1度は視線を釘づけにしてしまうであろう程の美少女。

 品行方正、才色兼備と全てにおいて非の打ち所は一切なく、更には実家はかなりのお金持ちという絵に描いたような大和撫子なお嬢様である。


「珍しい事もあるんだな。竜胆がこんな遅い時間まで学校に残ってるだなんて」


「そうですね。いつもは習い事などの関係ですぐに帰宅していますから、こうして下校時刻まで校舎にいたのは初めてかもしれません」


「ふーん。もう少しで完全下校時刻だけど、誰か待ってる奴でもいるのか?」


 教室の中を見渡してみるが、俺の様に自分の席に荷物を残しているような奴は誰も見当たらなかった。

 一体誰を待っているのだろうと思っていると、竜胆は俺の席までやって来て口を開いた。


「えぇ。音無くんに頼みたい事があったので、こうしてずっと教室で待ってたんですよ」


 教室を見渡していた俺は、竜胆の言葉にピタリと動きを止めた。


「……俺に、頼みたい事?」


「はい。そうです」


 視線を竜胆に戻しながら尋ねると、竜胆はニコリと笑みを浮かべてこくりと頷いた。

 そして、竜胆は心を落ち着かせるように小さく深呼吸をしてから、意を決したように口を開いた。


「音無くんに1つお願いがあるんです。……私の恋人になって頂けませんか?」


「………………えっ?」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は完全に頭の中が真っ白になってフリーズしていた。


 こ、恋人?

 それって、つまりは竜胆と彼氏彼女の間柄になる訳で……。えっ、ええっ……?


「ちょ、ちょっと待ってくれ竜胆。どうして俺に恋人になってくれだなんて……!」


 突然の事に頭の中がぐちゃぐちゃになって、五月蠅いくらいに心臓がバクバクと鼓動を打っているのを感じながら、俺はなんとか平常心を取り戻して竜胆に尋ねた。

 すると、竜胆は肩を落としてちょっと困った表情を浮かべながら、俺に事情を説明し始めた。


「そうですね。実はちょっと……いえ、私にとってかなり困ったことがありまして……。それを解決する為に、音無くんには私の偽の恋人になってもらいたいんです」


「……竜胆が困っているというのはなんとなく分かったけど、どうして恋人役に俺なんだ? どうせ恋人に選ぶなら、俺以外にピッタリな奴はいっぱいいるだろ?」


 そういえば、一番最初に竜胆はお願いがあるって言っていたのを思い出した。

 ちょっとだけ。本当にちょっとだけがっかりしながら、俺は竜胆に更に詳しい説明を求めた。


「私は偽の恋人関係になってもらいたいだけで、相手に本気になられても困りますからね。音無くん以外の男子は全員勘違いしそうですが、音無くんはその点をしっかりと弁えてくれると思いましたから」


「な、成る程ね……。それじゃあ、竜胆に偽の恋人が必要な事情は何なんだ?」


「その辺りの説明はこの話を引き受けてくれたらお話しします。それで音無くん、私を助けると思ってこの話を引き受けてくれませんか?」


 そう言って、竜胆はこちらをじっと見つめる。


「…………」


 数時間前に君島に言われた言葉が一瞬頭の中を過ったが、俺は竜胆の頼みを──。


 竜胆に返事をしようとした瞬間、ガラガラと教室の扉が空いた。


「おーい、もうすぐ下校時刻だぞ。いつまで教室に残って……って、竜胆に音無か。もう教室を閉めるし、校門も閉めるから、お前たち二人も残ってないで早く下校するんだぞ」


「……分かりました。音無くん、行きましょう?」


「あぁ。すみません、今すぐ出ます」


 放課後の見回りでうちの教室やってきた男性教師の言葉に従って、俺と竜胆は話を中断して一緒に教室を出た。


「今日の所は一先ず時間切れの様ですね。音無くん、いい返事が聞けることを楽しみにしてますよ。それでは、また明日会いましょうね」


「あ、あぁ。また明日な……」


 そして、竜胆と別れの挨拶を済ませて、俺は不思議な感覚に包まれながら帰宅したのだった。




 ◇




 竜胆から付き合って欲しいと頼まれた日の翌日の昼休み。


「ねぇ、()()くん。昨日の話の続きなのですけど、OKしてくれる気になってくれましたか?」


 4限の授業が終わったばかりでまだ多くの生徒が教室内にいるというのに、竜胆は俺の元にやって来てそう告げた。


「……き、昨日の話とはなんでしょう。竜胆さん」


 ぎこちない態度の俺に対して、竜胆はクスリとした笑いをこぼしながら口を開いた。


「あらまぁ、たった半日ちょっとで昨日の事を忘れてしまったのですか? 私は一世一代の決心をして、あなたに()()をしたというのに……」


「なっ、竜胆……!?」


 その瞬間、クラス中が一気に大騒ぎになった。


「あの竜胆さんが音無くんに告白!?」


「今まで色んな男子生徒がアタックして、その全てを断ってきた竜胆が……!?」


「私のオトキミのカップリングが……!」


 廊下にまで響くくらいに騒がしくなった周りを気にする俺に対して、竜胆は俺にだけ聞こえるくらい小さな声で囁いた。


「さぁ、音無くん。これでもう逃げられませんね。この場で私の頼みを引き受けるのか答えていただけますか?」


「お、お前……。なんで態々(わざわざ)こんな人がいっぱいいるタイミングで……! 2人きりになったタイミングとかで良かっただろ……!」


「私も音無くんもお互い2人きりになれるタイミングなんて全くないじゃないですか。それならこうして動いた方が早いと思ったまでです」


 俺の抗議など一切気にせずに、竜胆はそのまま言葉を続ける。


「それより私は早く世界くんの答えを聞きたいです。因みに私としては、少しでも世界くんがいい思いが出来る方を選択した方が良いと思いますよ? さぁ、どうしますか?」


「じ、自分でそれを言うのか……」


 小悪魔の様に微笑む竜胆に対して、俺は若干げんなりした気持ちで言葉を返す。

 すると、竜胆は小さく咳ばらいをして、いつものおしとやかな雰囲気で口を開いた。


「こほん。……それで、音無くん。私の告白を受けてくれますか……?」


 遠慮がちに頬を赤く染めた竜胆の手がこちらに差し伸べられ、あれだけ騒がしかった教室が一瞬で静まりかえった。

 そして、早く返事をしろと言わんばかりに俺に無言のプレッシャーが襲い掛かってくる。


 こ、こいつ……。何がなんでも俺に今すぐ答えさせるつもりでこの空気を作りやがった……!


 竜胆の渾身の演技だというのが分かっているのに、バクバクと鼓動する心臓に落ち着けと命じながら、俺は昨夜出した結論を竜胆に伝える事にした。


「……よろしく、お願いします」


「ふふっ。それではこれからよろしく頼みますね、世界くん」


 俺は差し伸べられた竜胆の手を優しく握り返す。

 そして、俺の返事を聞いた竜胆はとびっきりの笑顔で微笑み、ギャラリーの悲鳴が教室を通り越して廊下にまで響き渡った。


 あぁ、これから俺の高校生活はどうなってしまうのだろう。

 そんな大きな心配と、ほんの少しばかりの期待が、俺の胸の中を埋め尽くしていったのだった。

続きは(考えて)ないです

二作同時進行などという器用な真似は無理なんでね

ただ、ハイファンタジーとはまた違った感じで書いててとても楽しかったです




最後にあらすじは超適当に書きました。すみませんでした

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