とある子爵家兄妹の婚約破棄の顛末記
久々に登場人物が多い。
作中の公爵家が二つあるので、どっち?ってなるかもしれません。
冊子、それは学園入学時に全生徒に学園から配布される薄くない本である。
中には、恋に恋するお花畑令嬢から、突っ込める穴があれば何でもいい発情期のクソガキたち…もとい、学園で過去に起きた恋愛、婚約にまつわる笑えない騒動とその顛末が個人情報を削除された状態で掲載されている。
実例と対処法と、問題点とその顛末まで書かれたそれは、まともな生徒ならドン引き間違いなしの内容である。
どうしてか毎年のように新しいケースが出たり、「お前ちゃんと読んだの?!」と言う類似ケースが発生するのが学園関係者の頭痛の種。
すでに冊子と言う厚さではないのだが、学園側はかたくなに冊子と言い張っている。
……たとえ目を背けていても、そこにある現実は変わらないですよ、先生方。
当然学園に通っていた親世代も冊子のことは十分知っている。
子供たちから話を聞くたびに「また分厚くなって」「ワァ、これ私たちの代の話だわ(震え声)」などと言う親子間のコミュニケーションの道具として一役買っているとかいないとか。
近年、頻発するのはケース1および3と、5な模様。
ケース1は庶民の女子生徒による複数の上位貴族男子へのハニートラップ。
3はそれに類するもので、男子生徒が婚約者である女子生徒を無実の罪で罵倒し、婚約破棄を行おうとしたケースである。
ケース5は男子生徒からの庶民や下位貴族の女性に対しての関係の強要や、婚約者や夫がいる女性に対して不適切な行為を行ったケースについてまとめられている。
もちろん女子生徒から男子生徒に対する行為も冊子には書かれているが、数は多くない。
と言うよりも、女子生徒が主犯となる場合は内容が複雑化しやすいようで、なかなか普遍化できないらしい。
そういう意味では、思春期の男子は単純なのが多いって話かもしれない。
これは、そんな冊子がある学園を舞台にした物語。
どこにでもありそうな、ごく普通の、貴族の結婚にまつわる物語。
本日の物語のタイトルは――。
そう、とある子爵家兄妹の婚約破棄の顛末記。
朝早く、王都にあるとある公爵家のタウンハウスを訪れた伯爵令嬢を迎え入れたのがその屋敷に住まう子爵令嬢であったことに、特別な意味はない。
たまたま玄関ロビーを横切った子爵令嬢の彼女を、学園の同窓生である伯爵令嬢が見とがめて食って掛かったに過ぎない。
ちなみに公爵家のタウンハウスに子爵令嬢が住んでいるのもこれまた大した意味はなく、単純に子爵令嬢の生家――タラッタ子爵家の寄り親がこのタウンハウスの持ち主であるアンドレイアー公爵家であり、彼女以外にもいくつかの寄り子が王都に滞在する際の屋敷としてこのタウンハウスを利用していた。
もちろんアンドレイアー公爵家だけではなく、他の高位貴族のタウンハウスでもよくある話だ。
特に今は学園の卒業式が数日前に行われ、それに参加するために数多くの卒業生の関係者が王都に来ており、各タウンハウスは賑やかな状態であった。
現在は卒業式もなんとか無事に終わり、多くの貴族の家族が王都を出発しているため、屋敷が閑散としていたことも、子爵令嬢が伯爵令嬢につかまってしまった要因の一つかもしれない。
ともかく、屋敷の使用人が取次ぎをする前に、伯爵令嬢は子爵令嬢を見つけて叫んだのだ。
「リゼ・タラッタ!」
叱責するような激しさで名前を呼ばれたタラッタ子爵令嬢のリゼは、声の主の方へとおっとりとした仕草で視線を向け、数瞬、瞬きをした。
そのあと、該当する人物の情報を見つけたようで、これまたおっとりとした笑みを浮かべて略式の淑女の礼をする。
「卒業式ぶりでしょうか、ローニャ様。本日はいかがいたしました? もうすぐご自身の結婚式でしょうに、このようなところに来るお時間がございまして?」
リゼの言葉に、伯爵令嬢であるローニャは顔を真っ赤にさせた。羞恥ではなく怒りだ。
確かに彼女は学園を卒業してすぐに結婚する予定だった。
これは彼女だけではなく、多くの女子生徒が同様である。
現在この国では学園の卒業式が貴族令嬢のデビュタントを兼ねていた。
そのため、卒業式イコール大人の仲間入りと言うこともあり、卒業を境に嫁ぐ、或いは婿入りする生徒が多いのだ。
ローニャもその一人であり、伯爵家の一人娘であった彼女は何かと忙しいはずである。
リゼと彼女はさほど親しくはないのだが、リゼと親しい友人たちも卒業式の準備と並行しての嫁入り、婿取りの準備が大変だとぼやいていたものだ。
かく言うリゼも嫁入り予定であるので、それなりに忙しい身の上である。
だからこそ、そう尋ねたリゼなのだがローニャにとってはどうやら屈辱の言葉だったらしい。
「っ!! ライオネルに会いに来たのよ!」
ライオネルはリゼの四つ年上の兄の名前だ。少し前までは彼もこのタウンハウスで暮らしていた。
ローニャの口から兄の名前が出てきたことに、リゼは驚いたように目を見開き、口元を手で押さえる。
「まぁ、今までお兄様からのお誘いをすべて忙しいからと無下にしていましたのに、お忙しい中、いったいどうして? それに」
「うるさいわね、あんた、わかってるんでしょう!?」
「わかっている、とは?」
リゼの言葉を遮るようにローニャが叫ぶ。
だがリゼはあくまでもわからないというように小首をかしげた。
「わたくしが存じておりますのは、カタスリプ伯爵家から申し込まれた兄との婚約が、カタスリプ伯爵家から白紙に戻されたということだけですわ。
まぁしがない子爵家の次男である兄は伯爵家に婿に入るならばと懸命に努めていたようですが、白紙に戻される数か月前からはローニャ様と会える日もなく……」
二年前、ローニャの生家であるカタスリプ伯爵家からリゼの生家であるタラッタ子爵家に婚約話が持ち掛けられた。
カタスリプ伯爵家はそれなりに裕福な上位貴族であり、肥沃な農地を持つとはいえ下位貴族であるタラッタ子爵家はかの家から申し込まれた婚約の申し出を断ることもできなかった。
その裏にはローニャからのライオネルへの熱烈な思慕があったらしいことはそれなりに知られた話である。
なんでも妹であるリゼに会いに学園に来たライオネルに一目ぼれしたらしい。
妹のリゼの目から見ても兄であるライオネルは鮮やかなブロンドに青い瞳の王子様然とした美青年だ。
四つ年上ということと実家の農作業で体格は細身ながらがっしりとしているので、同級生の男子生徒に比べれば頼りがいがあるように見えたのだろう。
タラッタ子爵家は荒れ地を開墾し、穀倉地帯にした実績で叙爵されたようなものなので、子爵家と言えども普通に農作業に参加するのだ。
リゼも小さいころから籾の餞別に参加しており、なかなかの目の持ち主だと言われている。
そんなわけでやや一方的な申し入れではあったが、ライオネルとしても求められたのならばと、伯爵家当主になるための勉強やローニャとの仲を深めるための努力を進めていた。
しかしそこに暗雲が立ち込めたのが今から半年前。リゼの卒業を控えた頃のことだった。
ローニャが同窓生の侯爵子息に一目惚れされ、熱烈に口説かれたということで、ローニャ一人の判断で婚約が白紙に戻されたのだ。
もちろんカタスリプ伯爵家の当主である父親は知らず、タラッタ子爵家からの問い合わせに驚いたようだ。
しかしなんだかんだ言って一人娘に甘い伯爵は、タラッタ子爵家が格下であることもあってそのまま婚約を白紙に戻してしまったのである。
そうしてそのまま卒業式を迎えた。
卒業式での喜劇はリゼの記憶にも新しいが、ひとまず今は関係ない。
「そんなことはどうでもいいのよ、ライオネルに会わせなさい! 子爵令嬢ごときが伯爵令嬢の私にたてつくというの?」
「会わせろと申されましても、私には難しいですわ。何しろ兄は、すでにこの屋敷にはおりませんので」
「え? ど、どういうことよ」
リゼの言葉にバツが悪そうな顔をするわけでもなく、一方的にまくしたてるローニャに、子爵令嬢は首を振った。
そんな彼女にローニャは怪訝そうな顔をする。
「いえ、どういうことも何も、ローニャ様との婚約を白紙に戻されましたので……」
「追い出したというの?! それでよく平気な顔をしていられるわね、この冷血女!」
「心外ですわ」
リゼの言葉を途中で遮るようにして叫ぶローニャに、さすがのリゼも眉をひそめた。
そこに、第三者の声がかかる。視線を向けると、リゼの年の離れた兄が屋敷の使用人とともにロビーの入り口に立っていた。
どうやら騒ぐローニャに状況を察して使用人が呼び出してくれたようだ。
タラッタ子爵家の跡取りとして、王都での仕事を任されている兄の登場に、リゼはほっと安堵のため息をつき、ローニャは眦をますます釣り上げた。
「何の騒ぎだ」
「お兄様」
「ルカ様、ライオネルを追い出したというのは本当ですの?!」
伯爵令嬢であるローニャにそう尋ねられた次期子爵のルカは眉をひそめ、妹へと視線を向ける。
今まで彼女の相手をしていたリゼは、兄の視線に小さく肩を竦めることで返事を返した。
ルカはそんな妹に小さくため息をつくと、伯爵令嬢へと穏やかな笑みを浮かべる。
ライオネルの兄であるルカも弟同様に整った顔立ちだ。嫡男としての教育があったせいか、弟妹達ほどは農作業に出ていなかったこともあり、どちらかと言えば細身の体格であった。
つまり、そんな美丈夫に微笑みかけられ、ローニャは怒りではない理由で頬を染める。
「ローニャ嬢、いったい何の用かな? 伯爵令嬢ともあろうものが、アポイントもとらずに別の家の屋敷に訪れるなんて」
「ライオネルに会いに来たんです!」
元婚約者に会いに来たのだから咎められる理由はないというローニャに、ルカは首をかしげた。
咎める様子もなく、純粋に不思議そうな顔だ。
「それこそどうしてだい? 君とライルの婚約は白紙になった。白紙になるという意味を分かっているのかな? 始めからそんなことはなかったことになるんだ。つまり、キミとライルの関係もね。ローニャ嬢」
破棄や解消ならば関係が残ることもあるだろうが、白紙はそれらすべてをなかったことにすることだ。
つまり、この先の茶会や夜会で彼女がタラッタ子爵家の次男と彼女が顔を合わせたとしても、「はじめまして」と言う挨拶をする以外の選択肢はない。
もとよりカタスリプ伯爵家とタラッタ子爵家は今回の婚約の話が持ち上がるまで特に交流があったわけでもないうえ、娘のやらかしたことで余計な縁がつくのを嫌がったカタスリプ伯爵がそう判断したことであるが、タラッタ子爵家としてもその方が都合がよかった。
そんな、ある意味で親が気を回してくれた結果ではあるのだが、ローニャは戸惑うように視線を揺らしながらも、何とか食い下がろうと尋ねる。
「そ、それは、でも私は、それに伯爵家との婚約が白紙になったからと言ってライオネルを追放したというのは本当ですか?」
「うん? そんな事実はないよ。まぁアイツが屋敷にいないのは本当だけど」
「やはり!」
ローニャは目を輝かせる。彼女の中で何がどのように繋がったかはルカもリゼもわからなかった。
しかし、ルカの言葉はローニャの希望をあっさりと砕くには十分なものであったことは確かである。
「何がやはりかわからないけど、あいつは〝ラッキー、伯爵家のお飾り当主とかにならなくてよかった! 料理の道を究めてくる!〟と言って屋敷を飛び出していったよ。うちの料理人から若いのを何人か連れて行ったし」
「……は?」
ルカの言葉に、何を言われたのかわからない。というようにローニャは首をかしげた。
そんな彼女を前にしてルカは大きなため息をつくと、嘆くように両腕を広げる。
「ハー、本当にうらやましいよ。私も長男じゃなければメリアンナと一緒にサボテンの研究に明け暮れたい」
「メリアンナお義姉さまならお兄様の研究をあっという間に商売に変えてくれそうですが、ダメですわよ」
兄を嗜めるようにリゼが言う。ちなみにメリアンナはルカの妻である女性だ。
母方の親族である男爵家の女性で、商才があるがまだまだ男社会の商家では実力を発揮しづらいだろうとタラッタ子爵家に嫁いできた女性だった。
タラッタ子爵家は他所から来てくれたお嫁さんが家の実権を握って動かすのが伝統芸のようなところがあるので、伯爵家からお嫁さんを貰った彼らの父親である現当主も、男爵家からお嫁さんを貰った長男も、奥さんの尻に敷かれながら働くことに不満は持っていない。
今の今まで母屋が乗っ取られていないのは、そうならないための嗅覚だけは優れているからともいえる。
そんなわけで、次期子爵家当主であるルカも趣味のサボテンの栽培をしながらもなんだかんだ言って楽しくやっているわけだ。
「わかっているよ。あぁそう言うわけだからローニャ嬢、あいつはここにいないよ。先ほど君の家に連絡をしておいたから……あぁ、来たようだ。それでは、結婚式に出席することはないが、どうぞお幸せに」
「お幸せに」
ルカの言葉と同時に、屋敷の使用人が数人のこれまた制服姿の男女を案内してくる。
彼らは嗜めながらも有無を言わせぬ強引さでローニャを連れ帰っていった。
さすがに娘に甘い伯爵でも一度白紙に戻した婚約を再度結びなおすような恥知らずな真似をすることはなかったらしい。
もしそうなれば伯爵家はタラッタ子爵家に借りを作ることになる。
娘可愛さにライオネルが婿入りした後も伯爵家の実権は握ったままでいるつもりであった伯爵には、それはあまり嬉しくない状態だろう。
とりあえずカタスリプ伯爵についてはこれでいいのだ。
アポイントなく無関係の上位貴族のタウンハウスに朝早くやってきた無作法についてをルカは咎めるつもりも吹聴するつもりはないが、かん口令を敷くつもりもない。
一月か、二月。新しい話題がなければしばらくは卒業式の喜劇も含めて陰口の材料になるだろうが、タラッタ子爵家の二人には関係ない話だ。
ルカはあっさりとそう言って伯爵令嬢の存在を切り捨てると妹に尋ねる。
「リゼもそろそろ出発だろう。準備は終わっているのかい?」
「えぇ、あらかた。ほとんどはあちらが用意してくれているというので、ほとんど身一つでいいそうです。気候が違うそうですから」
ローニャ同様に、リゼも卒業とともに嫁ぐ予定だ。
婚約者も卒業式に来てくれていた。彼は現在は別の公爵家のタウンハウスに滞在しており、もうすぐ迎えに来る予定なのだ。
そのせいでそわそわと落ち着きなくロビーに出てきていたリゼがローニャに捕まったのである。
「あー、あっちは寒いらしいからね。タラッタは暖かい方だし。体には十分気を付けるんだよ」
「はい」
兄妹がそんな話をしていると、屋敷を出たはずの次男が屋敷を訪れてきた。
もっとも彼はローニャが来たと聞いても「へぇ」と言う薄い反応を返しただけで、すぐに下町で食べた美味しい料理やら、下働きに潜り込んでいる料理屋の話に移ってしまう。
彼にとってもカタスリプ伯爵家との婚約の話は終わった――いや、始めから何もなかったこととして決着がついているのだ。
さらに少ししてリゼの婚約者や関係者が屋敷を訪れ、屋敷の前はにわかに騒がしくなった。
「リゼ、あちらで不幸な目にあったら旦那のタマでもサオでも潰して帰ってきていいからね」
「まぁお兄様」
下町ですっかり口が悪くなった次男の言葉にリゼは目を丸くする。
ルカとリゼの婚約者が顔をしかめた。ちなみにリゼの婚約者はライオネルと学園の同窓生である。
そんな妹の手に、ライオネルは真っ赤な何かが詰まった小瓶を手渡した。
「これ、俺が調合した激辛スパイス。口の中に放り込んだら三日は水も飲めなくなるから」
「お兄様……」
「おい、止めなくていいのか」
「妹を心配する兄の気持ちでしょう。それとも使われる心当たりがおありで?」
「…………」
ニコリと微笑むルカに、タラッタ子爵家の面々よりも縦も横も大きな婚約者は深い深いため息をつく。
だがそれ以上の文句は言わなかった。
「幸せにね、リゼ」
「幸せにな、リゼ」
「えぇ、お兄様がたも、お義姉さま。兄をお願いしますわ」
「えぇ、任せておいて」
「リーベ伯母様もイーサン様もわざわざありがとうございます」
「体には気を付けてね」
「アライン様もお元気で」
「君がいなくなってしまうのは寂しいね。あちらでも元気で」
最後に兄たち、それから義姉とハグをし、領地に戻っている両親の代わりにとやってきてくれた父の姉とその夫にリゼは礼を言う。
アラインはアンドレイアー公爵家の長男で、タラッタ子爵家の寄り親である公爵家代表としてこの場にいる。
伯母は微笑んでくれたが、その夫であるイーサンは無言でうなずいただけだった。
厳つい顔は一見すると怒っているようにしか見えないが、妻である伯母が「娘の時を思い出して泣きそうなのよ」と、コロコロと教えてくれる。
二つ年上の従姉が嫁いだのは二年前、やはり卒業式のすぐ後だった。
タラッタ子爵家の面々は「えぇ?」とやはり怒っているようにしか見えない公爵を訝しげに見える。
そして伯母の「可愛いでしょ」と言うなぜか自慢げな顔にそれ以上突っ込んで聞くのをやめた。
ちなみに子爵家以外の二人はそんな子爵家の怖いもの知らずな様子に慄いていた。それくらいイーサンの顔は怖いのだ。
そしてリゼはイーサンほどではないものの武骨な顔立ちの婚約者にエスコートされ、長旅用の頑丈な馬車へと乗り込む。
馬車は静かに走り出し、やがてあっという間に見えなくなった。
*
アンドレイアー公爵家のタウンハウスに予期せぬ来客があったのはその翌日のことだ。
「リゼに会わせて欲しい?」
「はい、グリンロッドの御子息がそう言って玄関でわめいております」
タウンハウス内に子爵家の執務室として用意してもらっている部屋でルカは深いため息をついた。
同じ部屋のソファで休憩がてら帳簿を確認していたメリアンナが首をかしげる。
「グリンロッド? 確か西の方の伯爵家よね。そこの嫡男がなんのよ……あー」
脳内で貴族名鑑の照会をしていたメリアンナは途中で言葉を止めると何とも言えないしょっぱい顔をした。
おそらく同じ顔をしているだろうな、とルカは思いながら首を振る。
「ハー、最近の若い者は白紙の意味が分かっているのか。それとも貴族の婚約を軽いものだと思っているのか」
「どちらもでしょうかなぁ」
「ワカイッテイイワネー」
ルカの言葉に長くタラッタ子爵家に勤めている執事が肩を竦め、妻のメリアンナはどうでもよさそうにそう言う。
ひとまず、そのままにしておくわけにもいかないと、ルカはメリアンナに書類を任せると部屋を出た。
そしてロビーでは一人の若者がいらいらとした様子でソファに座っているが見える。
「マーティン・グリンロッド伯爵令息殿、いったい何の用です」
「ルカ殿、リゼに会わせて欲しい!」
ルカに名前を呼ばれたマーティンと言う青年はソファから立ち上がると懇願するように叫んだ。
妹を呼び捨てにされた不快感によりそうになる眉を何とか抑えてルカは事実のみを告げる。
「あの子はもう屋敷におりませんよ」
「な、なぜ」
「なぜも何も、すでに他家に嫁ぎました」
あの子も十八ですから、と、ルカが言う。
するとマーティンは膝をついた。そのまま絨毯の上に手をついて項垂れる。
「ま、まさか、十や二十も年上のおっさんに嫁ぐことになったというのか」
「いえ、四つほど年上ですが、そこまでの年の差ではないですね。と言うか、私、キミより十は年上なんですがね」
私ももう、おっさんていう年なんでしょうか。と、ルカは黄昏れた。
そうなると妻はおばさん、いや、考えるのをよそう。ルカはふとよぎった考えを首を振って払いのけた。
そんな彼に、マーティンは食って掛かる。
「ルカ殿、なぜご自身の妹にそのような無体な真似を!」
「そこまで悪くない縁談だと思いますよ。
北の辺境伯は父の姉の夫である前アーゴン公爵の御母堂の出身地ですし、本人も次男の同窓で知らない仲でもありません。
アーゴン公爵様からもありがたいことに紹介状をいただいておりますし、無碍にはされないでしょう」
そう、出立の時に次男にぞんざいな扱いをされ、アーゴン前公爵であるイーサンから視線をそらしていた青年は、イーサンの大甥にあたる青年だ。
親族から見ても恐ろしい顔立ちらしいイーサンを「かわいい」と言ってのける伯母に兄妹が改めて尊敬の念を抱いたのは別の話である。
「北の蛮族ではないですか!」
「訂正された方がいいと思いますよ、北の辺境伯は北の魔獣の脅威からこの国を守ってくださっている皆さんなんですから」
不愉快であると、言葉にはせずとも態度で、口調で、声で、伝えるルカに、マーティンは一瞬気圧された。
だがすぐに気を取り戻したように叫ぶ。
「だからと言って、そこに愛はないんですか?!」
マーティンの言葉にルカは言葉を止めた。
別に何かマーティンの言葉が心に刺さったわけではない。
お前が言うのか。と言う呆れからだ。
ルカは先ほどまでとは違う種類の笑みを浮かべた。彼に対する嘲笑を隠さなくなったのだ。
「大丈夫ですよ、タラッタの女は惚れた男に尽くすタイプが多いんです。惚れてなくてもまぁまぁ頑張ってくれると思いますが、原動力が違いますからね。
あの子は外見は母に似ましたが、中身はまごうことなくタラッタの女です」
くるくるとした巻き毛がチャームポイントのハニーブロンドの少女は、母によく似ている。
何しろ父方の親族は大体みな同じ顔なものだから、親族中に可愛がられた。
そして幼いころから可愛がられてきた妹は、愛されるということと、愛するということをよく知っている。
博愛と違うのは、彼女は自分を愛するものを己もまた愛するということだ。
「辺境伯子息殿はわざわざ北から顔合わせに来てくださいまして、すごいですねぇ。
手のひらがあの子の顔ぐらいありまして、あの子はキャァキャァ言いながら麦刈りの時にたくさん掴めそうとうっとりしてましたね。
辺境伯子息は麦刈りなんかしたことないでしょうに、やってみようとか言って乗り気ですし、相性は悪くないと思いますよ」
ちなみに北で収穫できるのはライ麦である。マーティンが北の蛮族と称したように、北の辺境伯領は冬は厳しい寒さと深い雪に閉ざされる。
さらに北の山から餌を求めて巨大な魔獣が下りてくることもあり、その駆逐のために領民の多くが戦う術を持っていた。
辺境伯の息子であるリゼの婚約者も例にもれず、立派な騎士である。
そんな彼であるから当然農作業などしたことがないだろうに、新妻となるリゼの言葉を馬鹿にすることはなかった。
あの旦那に中央貴族の洒脱さなどは期待できないだろうが、どちらにしろタラッタ子爵家は南の農民貴族である。
むしろ今までの例を考えると、あの子息が妹の尻に敷かれるのもそう遅くはないだろう。
後妻として嫁いだ後、あっという間に公爵家を掌握したあの伯母のように。
「リ、リゼは」
「そもそも、貴殿の学園での所業は当家でも把握しておりました」
それでもなお言いつのろうとするマーティンに、ルカは笑みを消して不快感を隠すことなく告げた。
何の関係もないただの学園で同窓生であるというだけの男に、妹の名前を呼び捨てられるのは不愉快だった。
そしてそんなルカの態度と言葉に、マーティンは顔色を変える。
まさか、ばれているとは思っていなかったとでもいうような顔だ。
「このままでは白紙の可能性、もしくはケース1か3の可能性もあると判断し、あの子を一時的に休学させて手元に戻したのです。
その間に、私どもの方で替わりの婚約者を探しておりました。もちろんこのことはグリンロッド伯爵家にもアンドレイアー公爵家を通じて通達済みです」
そもそもマーティンとリゼの婚約は、マーティンの生家であるグリンロッド伯爵家とタラッタ子爵家双方の寄り親であるアンドレイアー公爵家経由で結ばれたものだ。
そんな婚約者がいるにもかかわらず、学園で他の女と不貞を交わしたとなれば当然斡旋したアンドレイアー公爵家の顔に泥を塗ることとなる。
実際、タラッタ子爵家からの上奏を受け、アンドレイアー公爵家の方でも事実確認を行った。
結果、間違いないものとしてリゼとマーティンの婚約を白紙化し、それに至る経緯を記した証文と少なくない違約金がグリンロッド伯爵家からタラッタ子爵家に支払われている。
双方の寄り親が同じ公爵家であったのでそれ以上のことはなかったのだ。
もし、どちらかの寄り親が異なればさらにめんどくさいことになっていただろう。
事実、寄り親ではないとはいえ、現タラッタ子爵家当主の姉の嫁ぎ先が上位貴族の、それも有力貴族に数えられるアーゴン公爵家であるため、寄り親のアンドレイアー公爵家でもある程度気を使う必要があったのだ。
これはグリンロッド伯爵家からしても同様だ。
そうして、婚約者がいなくなったリゼの嫁ぎ先はどうしようかと父や寄り親が頭を抱えているところに、伯母であるアーゴン前公爵夫人が「夫の親族に未婚なのがいるんだけど」と持ってきたのが今回の縁談である。
もはやそこに、不貞を行ったマーティンの意思など入り込む余地などない。
完全に家と家との話である。
そして、本来貴族の婚約と言うことは、そう言うものなのだ。
たとえ婚約者ができる前に学園で親しい女子生徒や恋人がいたとしても、婚約者ができた時点で関係を清算する。
それが貴族の子息として正しい姿だったはずだ。
それを怠ったマーティンがグリンロッド伯爵家でどのような立場になるのか、ルカにも想像が容易い。
当然のことながら、グリンロッド伯爵家は伯爵家として大騒ぎだ。
この貴族の少子化の時代、しかも学園の卒業間近となれば主だった御令嬢は大体売却済みである。
そうでないのは大体病弱であったり、あまりよろしくない訳ありであったり、婿取り希望の令嬢だ。
グリンロッド伯爵家が付き合いのある家では嫁げる女子が生まれず、嫡男であるマーティンの婚約者選びは学園に入学してもなお難航を極めたのもその理由からである。
グリンロッド伯爵家はこれと言って特産物があるわけでもない――かと言って傾いているわけでもないごく普通の伯爵家である。
そのあまりの特徴のなさに、同格の伯爵家はもちろん、上質と贅沢を知る上位貴族の子女にも、上位貴族に嫁いで楽な暮らしをしたい下位貴族の子女にも全く見向きもされなかったのだ。
そのため寄り親に頼み込み、息子の一つ年上の、悪くない家柄の子女と婚約が結べたと胸をなでおろしていたところでの息子の不始末である。
もちろん同じ学園の卒業生である両親は学園で配布される注意事項をまとめた冊子の内容は承知している。息子にも何度も話して聞かせていたはずだ。
そのうえでの結果に、母親は倒れて三日間寝台から起き上がれず、父親は顔を真っ赤にして剣を振り回して腰を痛めたと言う。
伯爵家の使用人でも腕っぷしのいいものが学園から――もちろん事前に許可を取り――息子を担ぎ上げるようにして連れ帰った。
そうして伯爵は息子であるマーティンに、タラッタ子爵令嬢との婚約が白紙になったことと、伯爵の後継者候補から外すことを伝えたのが、一昨日のことだ。
そして呆然として学園に戻った彼を待っていたのは、伯爵家を廃嫡された彼には用がないとばかりに冷たくあしらう恋人であった女子生徒。
そして、数々の高位貴族や有力者との縁のあるタラッタ子爵家との婚約を無にしたマーティンへの嘲笑であった。
そもそも、グリンロッド伯爵としても息子を廃嫡までするつもりはなかったのだ。
グリンロッド伯爵家の直系の男子はマーティンしかおらず、寄り親の顔に泥を塗ったとはいえ、同じ親の寄り子同士。しかも伯爵家と子爵家である。
ひとまず公爵の手前、後継者のままとするわけにはいかないが、ほとぼりが冷めた後は何食わぬ顔でまた後継者に戻すつもりであった。
そうはならず廃嫡にするしかなかったのは、一つはタラッタ子爵令嬢リゼの新しい婚約者が、アーゴン公爵家の口利きで彼の親族であり、北の辺境伯の息子になったこと。
これによりタラッタ子爵はよりアーゴン公爵家と結びつきが強くなり、アンドレイアー公爵家としてもタラッタ子爵家の意向を完全に無視するわけにもいかなくなったのだ。
もう一つは学園でのマーティンの評判の悪さだ。
グリンロッド伯爵が思っていた以上にマーティンの行いは学園で悪目立ちをしていた。
そして止めが学園の卒業式での彼のふるまいだ。
そもそも彼は自身の婚約者が親に決められた、しかも格下の子爵令嬢であること、一つ年上であることについて、自虐に見せかけたいわれのない嘲笑と罵倒を吹聴していたのである。
もちろん、マーティンも表立ってそのような言動をしていたわけではない。
恋人としていた庶民や親しい友人たちの間だけだ。
だが話と言うのはどこからともなく漏れるものである。
そして学園は、ごくごく普通の生徒や教師にとって、嫌になるほど――冊子になるほど前例に事欠かなかったのだ。
まともな生徒は自らの不幸に酔うマーティンたちとそれとなく距離を置き、それはグリンロッド伯爵の耳にも入ることとなった。
ちなみにこの時に、誰もマーティンに婚約の白紙化の話を伝えなかったのかと言う話だが、タラッタ子爵サイドではリゼの新しい婚約者を探すためにそれどころではなく、むしろリゼが学園を一時休学していた。
そもそも、白紙化はグリンロッド伯爵家の落ち度であるのでタラッタ子爵家がわざわざ伝える義理もなかったのだ。
グリンロッド伯爵家としても、こちらはこちらで新しい婚約者を探す必要があった。
寄り親である公爵家にはさすがに頼れない――頼った結果の婚約者をないがしろにしたのはグリンロッド伯爵家の方である。
そのうえ公爵家の手前、マーティンに代わる後継者の選定も進めなくてはいけなかったのだ。
そうした事情からマーティンに婚約の白紙化が伝えられることはなく、ついに学園の卒業式である。
伯爵自身の内情はともかく、この時点ですでにマーティンはグリンロッド伯爵家の後継としてみなされず、それどころかないがしろにされていたともいえるだろう。
学園の女子生徒にとってデビュタントも兼ねる卒業式では、婚約者がいる女子生徒は婚約者にエスコートされるのが常識である。
そしてその時に身に着けるドレスもまた、婚約者の家が贈るものだ。
当然、マーティンもその時は彼の認識として婚約者であるリゼが卒業するのだから、彼が婚約者としてドレスの準備やエスコートの打ち合わせをするべきであった。
むしろそうして彼が動けば、婚約がすでに白紙化されていることを彼自身が知り、言動を改めるきっかけになっただろう。
しかし、婚約者をないがしろにしてきた男は、そのままないがしろにし続けた。
彼の実家からも、すでに婚約が白紙化されているので、当然卒業式に関して問い合わせや彼に促すような動きもなかった。
それを幸いにと、彼はそのまま自分の嫌なことから目をそらし続けたのだ。
そして卒業式の日、リゼをエスコートしているのが北の辺境伯家の子息であり、卒業式の半年も前にグリンロッド伯爵家との婚約が白紙になっていたと知れ渡る。
すると、マーティンの立場も大きく変化した。
それまでも婚約者の女性をないがしろにする男と言うものだったのが、婚約者でもない女性を貶めるような発言をした勘違い男となったのだ。
しかもリゼの相手はアーゴン公爵家とも縁の深い北の辺境伯家の息子である。
リゼの伯母がアーゴン公爵家に嫁いでいることは学園でもよく知られている話であった。
さらにいうなれば、卒業式のエスコートをさぼり、関係者としても出席することを拒否した――と思っているマーティンはリゼの婚約のことを知らないままだった。
忠告してくれるような親切な知人や友人はそれ以前に、もしくは卒業式を境に彼と縁を切っていたためである。
そうと知らないマーティンは変わらずリゼを貶める発言を続けた。
そう、すでに彼女は学園の一つ年上の先輩でも子爵令嬢でもない。北の辺境伯家に嫁いだ騎士侯夫人である。
北の辺境伯家は当主がまだ健在であり、後継者が決まっていないものの、リゼの夫はすでに騎士侯として身を立てていた。
なんの役目もない、ただの学生でしかない伯爵子息ごときが呼び捨てにしていい相手ではないし、まして貶めるような発言をすれば、アーゴン公爵家が出てこれる立場なのである。
こうして、一夜にしてマーティンは学園の生徒にとって完全にアンタッチャブルな存在になったのだ。
それを知ったグリンロッド伯爵は夫婦そろって三日間寝込み、マーティンは使用人たちに無理やり帰宅させられ、事実を知って、学園で打ちのめされ、今ここにいるというわけだ。
そのことをおおよそ正確に把握しながらもルカはにべもなく告げる。
「そう言うわけですので、お引き取りください」
「そんな、シャーリーは伯爵にならない私になど興味がないと」
「あーケース1でしたか。ちゃんと学園からの冊子は読んで理解してないとだめですよ?」
お客様のお帰りです。と、ルカが使用人に声をかけると、公爵家のタウンハウスの使用人は恭しく、だが確かな強引さでマーティンを屋敷の外に放り出したのだった。
なお、マーティンであるが、結果としてはタラッタ子爵家次男の元婚約者であった伯爵令嬢のローニャと結婚することとなった。
侯爵家の子息に一目惚れをされたとして、タラッタ子爵次男との婚約を一方的に白紙にしたローニャ嬢であったが、その侯爵家子息が一目ぼれした相手は彼女だけではなかった。
ローニャは婚約を白紙にした数日後には一目惚れされた令嬢達のキャットファイトに巻き込まれ、侯爵子息本人はそんな令嬢達に嫌気がさしてまた別の一目惚れをやらかすという悪循環。
卒業式の日は実に七人もの令嬢が一人の男を取り合ったというから、学園の冊子はまた更に分厚くなるだろう。――ちなみに侯爵子息には婚約者がいなかったこと、あくまでも一目惚れである事実を伝えた以外は清い関係であったため、令嬢の方が勝手にのぼせ上って暴走した結果であるとしてほぼお咎めがなかった。
侯爵家という高位貴族の次男であるということが多分に忖度された結果ではある。
本人も決して同格以上や、面倒な平民の女子生徒に手を出さなかったあたり、わかっていたのだろう。
結局彼は学年がひとつ上の、在学中は生徒の中でも地味な部類に入っていた伯爵令嬢と結婚し、彼女の家に婿として嫁いで行った。
残されたのは一時の熱狂で婚約破棄までしてしまった令嬢達だ。
中には親にこってりと締め上げられ、または婚約者が許したことで再度婚約状態に戻ったものもいる。――その力関係が変化したのは致し方がないことだろう。
ローニャもそうした復縁をもくろんだのだが、彼女の父親が力関係の変化を嫌って復縁に動かなかったこと、何よりタラッタ子爵家に復縁する意思がなかったため、彼女がタウンハウスを訪れた以外は何も起きなかった。
そして残されたローニャが、これまたほぼ余り物のマーティンとくっつけられたのも当然と言えば当然の話なのかもしれない。マーティンの伯爵家の寄り親であるアンドレイアー公爵家としても、面倒ごとはさっさと片づけておきたかったのだろう。
双方伯爵家であること、マーティンが家を継がないものの跡取りの教育はそれなりに受けていたことが決め手になったらしい。
グリンロッド伯爵家は遠縁の子爵家から養子を貰うこととなり、彼の居場所はなくなった。
二度も寄り親の公爵家の顔に泥を塗るわけにはいかず、かと言って実権を手放さない舅に飼い殺しのような窮屈な暮らしを送る羽目になったマーティンである。
だが、ローニャとの間に一子設けることができ、婿養子としての面目を保つことはできたようだ。
孫が生まれてからは舅の関心も娘から孫へと移り、その頃はようやく伯爵家当主として動けるようになるのだが、それはまた別の話である。
「トリルビィ先輩! ご近所となりましたのでどうぞよろしくお願いいたしますわ」
そう言って挨拶をするのは、当家の寄り親であるフィロード辺境伯家に嫁いできた一つ後輩であった少女だ。
在学時から変わらない、どこか小動物を彷彿とさせるちんまりとした彼女が、屈強さで知られるフィロード辺境伯家の特徴をしっかりと継いだ子息と並ぶと、遠近感がおかしくなった気分になる。
具体的に言うと、子息に視線を合わせると夫人は一切視界に入らず、夫人に視線を合わせると子息はお腹しか見えません。首が痛くなります。
何代か前にフィロード辺境伯家からお嫁さんを貰った当家の跡取りである私も女性としては背が高い部類なので余計に首が、首が痛い。
身長順ですと後輩、私、辺境伯子息です。どっちに向いても首に負担がかかる二人です。
あぁ、ご挨拶が遅れましたわ。
私、北にある伯爵家の一つ、テックル家息女、トリルビィでございます。
そして今、寄り親であるフィロード辺境伯ご子息のブラント様のところに中央から嫁いできた女性が来るということで、こうしてお邪魔しているわけです。
まさかそれが一つ下の後輩のタラッタ子爵家のリゼ嬢だとは思いませんでしたわ。
学園では一部は学年の区別のない授業もありまして、そこで知り合ったのがリゼ嬢でしたわ。
お互い北と南と言う違いはあれど、辺境出身と言うこともあって何かと気が合いました。
南北凸凹コンビなんて言われてましたわねぇ。
「そう言えば先輩もご成婚されたとお聞きしたのですが」
そうでしたわ。そのご挨拶も兼ねてましたわ。
デカオンナと、影で男子生徒にバカにされていて、学園では婚約者どころか恋人もできなかった私ですけど、まさか卒業して一年後に結婚相手が来るとは思いませんでしたわ。
えぇ、婚約すっ飛ばして結婚と言うあたりがもう中央でなんかやらかした奴なんだな。と言う嫌な予感がひしひしとしましたわ。
リゼ嬢……フィロード辺境伯夫人はよくご存じの方なんですよねぇ。
「まぁ、ニコラス様!? どうしてここに!? え、テックル伯爵家に婿入り? ニコラス様侯爵家でしたわよね? いえ、まぁ階級的にはおかしくないですけど」
まぁ侯爵家は伯爵家の一つ上ですからねぇ。
おかしくないと言えばおかしくないですわねぇ。
でも夫の生家は中央でもゴリッゴリの文治派で、北の私たちのことなんて北の蛮族だとか言ってます。
かと言って南と仲がいいかと言うとそう言うわけでもないんですよねぇ。
ちなみに武断派の筆頭がアーゴン公爵家なので、仲良くしたくてもできないのかもしれませんけど。
そんなわけで、彼の生家が北の我が家に婿入りさせることなんてありえないんですよ。それこそ、何らかの罰でもない限りは。
……うちは流刑地じゃねーぞ。コホン。おほほほほ。つい素が。
「はー、ニコラス様、いえ、伯爵はうまくやりましたわね」
夫人が感心したような顔をして頷いています。その頃になってようやく四人がソファへと移動しました。
辺境伯子息のブラント様の隣にちょこんと座る夫人が本当に可愛らしい。
座ってもあまり身長差が変わらないですが、テーブルを挟んでそれなりに距離があるのでそこまで首が痛くならなくて済みますわ。
私の夫のニコラスも私の隣に座ります。
ブラント様が夫人に学園でのことを聞いておりますわ。
「えぇ、トリルビィ先輩は私たちの間でもお婿さんにしたい女性ナンバーワンでしたわ」
まぁこれでも北の貴族の一員ですから、中央の軟弱男に比べればそれなりに鍛えていると自負しておりますわ。
いえ、ブラント様との手合わせはご遠慮します。無理無理無理無理、死んじゃう。
雪山のレッドベアの異名を持つブラント様との手合わせとか本当に無理。
ちなみにブラント様が赤毛であることと返り血で真っ赤に染まっていることからついた異名だそうだ。絶対後者が理由の八割だよね。
ニコラスも「新婚ですので試合と言えども私以外の男を見据える妻を見たくはありません」と拒否してくれたのでよかった。
さすが中央貴族。口がよく回る! 北の貴族はこう言うとこほんとだめ、うちの男連中は最後は威圧で会話するからね!
まぁそんなわけで、在学中は男には全くもてなかった私だけど、女子生徒には慕われていたらしい。嬉しくないわけじゃないけどビミョーよね。うん。
まぁともかく普通なら婿入りすることなんてないはずのニコラスが我が伯爵家にやってきたのは理由がある。
一応理由は本人からも聞いたけど、同窓生である彼女が「うまくやった」と呆れている以上は表ざたにならなかった何かがあるんだろう。
は? カップルクラッシャー?
女子生徒に「キミに一目惚れしたんだ」と、熱烈に口説いた?
思いを伝えただけで口説いてない? 触れてもいない? あたりまえだボケ。
婚約者がいる女生徒をくどくなって冊子にも書いてあるでしょう!!
で、ニコラスの「一目惚れ」を本気にして、婚約破棄までしちゃった令嬢が実に七人。
うわー。
そのうちの一人がリゼ嬢の兄上と。で、ブラント様の同窓生。
セケンテセマイデスネー。
「いえ、本人は大喜びだったので、全然かまわないんですけど、あー、うまくいってなさそうなカップルにだけ声を、まぁ一人に責められるか二人に責められるかは大きいですわよね」
男が素直になれないだけならそれとなく発破をかけて、女性が素直になれない場合は簡単な恋愛相談をしていたらしい。何をしていたんでしょうか。
そして本命は家の力関係がいびつなカップル。
それも女性の家の方が強いところを狙っていたとか。
まぁニコラスは顔だけはいいから、そんな男に「キミに一目惚れしたんだ。けど、婚約者がいる君にはこのことしか伝えられないね」と憂い顔で言われたら。
恋に恋した令嬢たちはたちまち舞い上がって婚約を破棄したり白紙にしたりとそりゃもう盛大に暴走したとか。
もともと力関係がいびつなところを狙い撃ちにしているわけだから、婚約者であった男子生徒も何も言えなかったんでしょう。
その結果が、卒業式の七人のキャットファイト。
学園史に名を残す不祥事ですわ。そりゃうちに流されるわ。いやだからうちは流刑地じゃない。
冊子を更新しなければいけないと肩を落とす恩師たちの顔が脳裏をよぎりますわねぇ。
せめて心の中だけでもエールを送っておきましょう。
ファイト!
「僕はねぇ。親の決めた相手が二十歳年上の有閑マダムの後添えだったんだよ。
いやね、これでも侯爵家に生まれ、そのおかげでいろいろと優遇されてきたことは自覚している。貴族の結婚は家のためでもある。恩を返すという意味でも親の決めた相手に否を言うつもりはなかった」
でもさ。と、ニコラスはため息をつく。
二十歳年上の有閑マダムの玩具は嫌だったんだよ。と、小さくつぶやいた。
どうやら中央貴族では悪名高いマダムだったようで、その生贄に選ばれたのがニコラスだったようです。
だからこそ余計に、女性の家の方の力関係が不自然に強いカップルばかりを狙い撃ちしたのでしょうね。
ニコラスが当家に婿入りしたのは、そのマダムが「身持ちの悪い男はいらない」と拒否したこともあるとか。
「政略結婚が全部悪いってわけじゃないよ」
ニコラスが慌てて言う。
まぁ目の前のお二人もゴリゴリの政略結婚ですからね。
うちもですけど。
でもニコラスはリゼ嬢を見くびっておりますわ。
彼女、前から言っていましたものね。自分が小さいから、旦那様は大きい人がいいって。
肩とかに乗れるような相手を見つけて見下してやるって言ってましたものね。
……ブラント様、乗れそうですわよね。
「覚えててくださったんですね。先輩」
きゃぁと。頬を染めるリゼ嬢。
うふふ、と笑いながらブラント様の手を取って自分の手を合わせる。
赤ん坊と大人みたいなサイズ違いですね。
「私、旦那様の手が大好きです。えぇ、本当に。それ以外は全く問題はありませんわね。いいんです。私も所詮タラッタ子爵家の女です。惚れた男には弱いんですの」
うふふ、と、笑うリゼ嬢の笑みに照れたように顔をもう一方の手で覆うブラント様。
ですが、あなたの奥方様が浮かべているのは肉食獣の笑みですよ。
うん。大丈夫だ。たぶん彼女はこの北の地でもうまくやっていけるだろう。
それにしても、リゼ嬢はニコラスのことはそこまで知らなかったのかしら?
「彼女は卒業式の前に休学と言う形で一時期、学園にいなかったからね」
あら。
あーなるほど。前の婚約者が不貞を? 怒ったりしなかったんですの?
「前の婚約者ですか? 学園を卒業する年に婚約が決まりましたし、決まってからの顔合わせを数回した後にもすでに他の女子生徒と親密な関係にありましたから、なんとも……」
……そうですわよねぇ。
冊子で言うところのケース1かな。って思ったら触るなばっちい。ですものねぇ。
数ヶ月ほど様子を見て変わらないようだったので実家に連絡を入れて対処したと。
卒業式までの半年なんか女生徒は嫁入りや婿取り、デビュタントの準備で大忙しですから、学園にいないことも多いですもねぇ。
相手女性は彼女と争う様子は見せず。愛人志望のようだったので、これは単純に元婚約者の考えが足りなかっただけなのも大きいとか。
それもそうですわよねぇ。その恋人だか愛人だかわかりません女子生徒だって、何の保証も取り決めもなく愛人にされても困りますわよねぇ。
生まれた子供の扱いはどうするんだとか、住むところはどうするんだとか、お役御免になった後の生活費はどうするんだとか。
貴族が愛人を囲うと言うことはなかなかに大変なんですのよ。
まぁ、頭がお花畑に侵食されている方はその辺をきちんと取り決めをせずに「愛があるから大丈夫」で突っ走って痛い目を見て現実を知るんですけれどね。
私の代は傾いた伯爵家の子息が持参金目当てにお金持ちの子爵家のお嬢さんをお嫁さんにもらうはずだったのを、真実の愛の相手を愛人として囲うとか言い出した男子生徒がいて大変でしたわぁ。
「それって、もしかして愛人の費用を奥方に出してもらおうとしたのかい?」
その通りですわニコラス。真に愛する人を日陰の身にするのだから、それくらいして当然。と言うのが男性の主張でした。
しかもその主張を聞いて「その手があったか」みたいな顔をした男子生徒が他にもいたあたりがまた……。
もちろん即断即決で婚約は破棄され、婚約期間中の諸経費はまるまる伯爵家に請求されたそうですわ。
二匹目のドジョウを狙った男子生徒もそれで沈黙しましたわね。いえ、そもそもドジョウ、獲れてないんですけど。
あれ、どうなったんでしょうねぇ。
「あぁ、その話でしたらその伯爵家に元婚約者の子爵家の令嬢が養子に入り、伯爵家の親戚から婿をとることになったとか」
夫人が後日談を教えてくれた。なるほど、そうなりましたか。
そうなると真実の愛とやらを見つけた同窓生の末路は考えるだけ無駄ですね。
どうせこの先会うことはなさそうですし。
さすがにそこまで愚かだったわけではないけれど、あまりたいして変わらないのが彼女の元婚約者だったわけです。
ゆえに、彼女にとっては全くもってどうでもいいこと。関心を寄せる以前の話らしい。
さすがにこれには、現妻の元婚約者の話題に眉をひそめていたブラント様も呆れた顔をされておられます。
まぁ相手の男がアホすぎて嫉妬する気にもなれませんわよね。
ニコラスはニコニコしていますが、その表情は「本当にアホだよねぇ」と言っているようですわ。
そんなわけで、寄り親であるフィロード辺境伯家のご子息の結婚祝いのための訪問は無事に終わりました。
当家の夫婦関係はまだまだ問題がありそうですが、それはまた別の機会に――ですわね。
アンドレイアー公爵家
タラッタ子爵家の寄り親にあたる。
子爵の親が即公爵なのは普通ないのだが、初代タラッタ子爵家の奥方がアンドレイアー公爵家の令嬢であったことから、現在も寄り親と寄り子の関係が続いている。
アライン(28)
アンドレイアー公爵家嫡男。
現在は王都のタウンハウスを仕切っている。ルカは同窓生。奥さんも同様。
アンドレイアー公爵家は初代タラッタ子爵の子を養子にもらっているので、タラッタ子爵家とは遠い親戚でもある。
タラッタ子爵家
南に広大な穀倉地帯を領地に持つ。土地は広いが金はない。
男は脳筋系タンポポで、女は肉食系座敷童のような一族である。(なお男も草食系ではない)
商売が下手と言うよりはうまいのだが、儲かったら公共事業や備蓄に使ってしまうのでいつもお金がない。
なお、男はゴリゴリの脳筋一族なので、家の難しいことは嫁さんにやってもらうのが定番化している。女性が当主の時は脳筋を旦那にしている。
基本的にタラッタの女は筋肉が好きらしい。そりゃ生まれた時から近くにあるからしょうがないね! なお、中央のもて男のトレンドとは完全に逆走している模様。
リゼ(18)
タラッタ家の長女。ちんまりしている。
おそらく150センチぐらいしかない。
ハニーブロンドの巻き毛に緑かかった青い瞳の美少女。
ライオネル(ライル)(22)
タラッタ家の次男。がっしりした180センチ未満。
ダークブロンドに青い瞳の青年。料理人になると言って下町に転がり込んでいる。
ルカ(28)
タラッタ家の長男。次男に比べたら細身の175ぐらい。
弟より背が低いのがひそかな悩み。
サボテン栽培が趣味。
ちなみにサボテンステーキを弟に食べさせたことが、弟が料理に目覚めたきっかけらしい。
メリアンナ(28)
ルカの妻。男爵家出身。黒髪に緑の瞳。
ちなみに一児の母で、すでに第二子が腹の中である。
カタスリプ伯爵家
西の方にある貴族の一つ。
現当主が一人娘にめちゃめちゃに甘く、彼女の望むまま婚約をし、そして白紙化した。
もしあのままライオネルが婿入りしていたら、現当主が同じく実権を握ったまま飼い殺し状態にしようとしただろうが、ニコニコした顔で着実に根っこを伸ばし、種を飛ばし、気が付けばあたり一面にライオネルの息がかかったものがいて引っこ抜けない状態になっている。タンポポ系男子の根っこはなかなかに長いし太いしで引っこ抜けないぞ。
ローニャ(18)
カタスリプ伯爵家の一人娘。両親に溺愛された我が儘娘。
ライオネルに一目惚れして親に頼み込んで婚約したが、高位貴族に一目惚れされたことに舞い上がって一方的に白紙化した。
グリンロッド伯爵家
アンドレイアー公爵家の寄り子。中央貴族の一つ。
遅くにできた息子に婚約者がおらず、寄り親に頼んでタラッタ子爵家のリゼと婚約にこぎつけたが、息子がやらかした。
なお、やらかさずに結婚していた場合、マーティンは気が付いたら肉体改造が行われてムキムキになり、実家の実権はリゼに握られていたと思われる。
肉食系座敷童は自分の居心地のいい場所に移るのではなく、作り上げるのだ。
マーティン(17)
グリンロッド伯爵家の一人息子。
跡取り息子として十分な教育を受けてきたはずだが、視野の狭さと性根の小ささはどうしようもなかったらしい。
自嘲に見せかけた嘲笑で「僕悪くないもん」と言う態度をとっていたが、タラッタ子爵サイドが見切るのが早かった。
シャーリー(17)
庶民の女子生徒。別に彼女も本気だったわけではなく、貴族の愛人にでもなって左団扇を夢見ていた模様。
自分が正妻になれると思い込むほど夢は見ておらず、そう言う意味ではリゼとも対立はしていなかった。
フィロード辺境伯家
一部の貴族には「北の蛮族」と呼ばれている。
北の雪山から人間をおやつ感覚で食べに来る魔獣たちの脅威から国を守っている国の防衛の要である。
なお、南の脅威は初代タラッタ子爵が排除したのだが、アチラは一匹、こちらは複数であるため、質が違う。
ブラント(22)
フィロード辺境伯子息。
レッドベアの異名を持つ偉丈夫。190センチぐらいはある。
堅物で口が重い。四つ年下のちんまりとしたお嫁さんを貰ってどうしたらいいかわからない。気分は初めて小動物を持った状態である。
だが残念ながらその小動物、肉食なんだ。
テックル伯爵家
北にあるフィロード辺境伯家の寄り子。
親戚関係にもあり、付き合いは深い。
トリルビィ(19)
テックル伯爵家の一人娘。背が高く170。
骨太ではあるが、グラマラスな美女である。自分に自信のない男には敬遠されがち。
ニコラス(18)
テックル伯爵家に婿入りした元侯爵家次男。
なお彼は彼でトリルビィのことは彼女が卒業する前から目をつけていたらしい。
彼の伯爵家に婿入りにあたっては兄が一枚噛んでいるようだが、今のところ真相は不明。どう言い訳しても彼のやらかしたことは人の心のないろくでなしの所業であり、本人もそれを否定しない。
彼が婿入りする予定だったマダムのところには、ニコラスが在学中に目をつけていた相性がいいだろう男子を放り込んで事なきを得たらしい。熟女好きだって世の中にはいるもんだ。
アーゴン公爵家
中央貴族の一つ。かなり力のある貴族で、武断派の筆頭とも言われている。
現当主の祖母がフィロード辺境伯家から嫁いでいる。
イーサン(57)
前当主。
もともと身長200センチの大柄な体格に泣く子もショック死しそうなぐらい顔が怖い。視線を向けただけで土下座されたことがあるとかないとか。
赤い髪に赤い瞳で、学生時代は赤鬼と恐れられていたらしい。現在は年のせいかだいぶ縮んだが、それでも180センチはある。
無口と言うわけではないが、そもそも雑談が続いたことがない(顔が怖いから)ため、会話に慣れていない。
十年下のお嫁さんが自分のことを「可愛い」と言い切ることにジェネレーションギャップを感じたが、途中で「あ、これ嫁の感性がおかしいだけだ」と気がついたらしい。
でもタラッタ子爵家の人間は自分をあまり怖がらないので嬉しくてついついかまってしまう。そのため、今回の姪と甥の結婚の白紙化にはそれなりに思うところがあってじみーに、じみーに動いていた。(表立っては動けないため)
なお、現在公爵家は息子が継いでいるため、夫婦そろって王都で隠居している。
リーベ(47)
アーゴン前公爵夫人。
元タラッタ子爵家令嬢。リゼたちの伯母にあたる。
三男三女を生んでいるが、そうとは見えない若々しさと、子供たちがほぼ彼女そっくりなこともあって、タラッタの女性は男の生気を吸い取って分裂しているのではないかと密かに噂されている。なお、そんな事実はない。
ただ単にタラッタ子爵家はパッとしない平凡な顔立ちなので、美男美女が多い高位貴族の中ではみんな同じように見えるだけである。そう、おそらく。きっと。子供のころなどは特に。
なお、男児は成長すると美形になり、女子は化粧映えはするのでそれぞれ「化ける」と言われる。
ちなみに最近三女が第二王子の婚約者に内定した。
タラッタ子爵家の人間は他の国にも進出しており、家や国を乗っ取りながら着実に増え続けていますが、基本的に人畜無害なので大丈夫です。
たぶん本人たちもタラッタ子爵家のことを知らないことが多い。でも自分たちのルーツを知ったときに「あー」と呻くように納得するでしょう。そう言う感じの一族です。
ちなみにまだ当主が五代目とか六代目とかなので、歴史は浅いです。
リーベのせいで加速度的に関係者が増えてるんですが、それまでは彼女が言うように多産の家系でもないのでそこまで関係者が増えてなかったんですね。