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バイクにまたがり、目的地へ向け疾走。
——三〇分後……。
「おお! これはこれは! お待ちしておりましたっ」
辿り着いた先は、今日二軒目の神社で……えっと【道明寺】? 寺みたいな名前だな。
僕らが鳥居をくぐって現れるや否や、ゴマをするように両手を擦り擦りしながら現れる袴姿のおっさん(神主)。
「それで……早速で恐縮なのですが、例の依頼品は……」
「どぞー」
「おおっ! これが『どんな願いも叶える』という魔導書ですか! 確かにっ、凶々しい『気』を感じますっ」
ほんとかなー。
僕は今は感じないけど。
「くくく……これさえあれば、我が神社は名を馳せて……!」
じゅるりと口元をぬぐう神主。
いいね、解りやすい。
これぞ人間の業って感じで嫌いじゃないよ。
「親父ィ。バイクの鍵ィ」
と。
奥から現れたのは、バスケユニフォーム姿のツンツン頭ボーイ。
「こらっ、お客さんの前でお前っ。……すいません、愚息です」
「客ぅ? へぇ……」
ニタリ。
僕らを見た愚息はこちらに近づいて来て、
「驚いたぜ。この街にこんな美人が二人もいるだなんてな」
僕の方に手を伸ばし ペシッ! それを、クノミが手で払う。
「この方に触らないで下さい」
「おっと。悪い悪い。けど、君みたいな強気なのも嫌いじゃないぜ?」
「オイ! お前お客様になんて真似を! さっさと行け!」
「へーへー」
手をヒラヒラさせながら愚息は消えた。
「も、申し訳ございません……跡取りだというのに、本当にどうしようもない奴で」
ふんふん……僕は去って行く愚息を目で追って、
「彼には『女難の相』が出てるね」
「なんと……そういうモノまで見えるのですか?」
「ふふんっ、この方は『時を支配する王の一族』ですからねっ。『未来を覗く』など造作も無いですっ」
「お前が答えるんかい。ま、そういうわけだから、気を付けるよう言っといて」
気を付けてどうにかなるもんじゃないけど。
「お気遣い感謝します。しかし、あの愚息は一度痛い目に遭った方がしおらしくなるでしょう。ハッハッハ」
詳細まで『視て』はないけど、痛い目どころじゃ済まないかもね……ま、そこは家族の愛で乗り切ってくれ。
「ゴエさん、案外、再会(回収)は早いかもね」
カタカタ 僕の手の中で、黒い本が揺れた。




