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「のろ――」


僕の歯に衣着せぬ物言いに、ヒトミちゃんの顔が青ざめる。


「私も現在進行形で瓏さんとの時間を奪う泥棒猫を呪詛ってますよっ」

「僕のおまじないバリアを貫通出来てないのを見るに君の呪いは大した事無いな。僕に対する思いはその程度か?」

「ぐぬぬ……絶対破ってみせますっ……!」


両手をヒトミちゃんに向けて睨み付けてるクノミは放っておいて、


「まぁ急に霊感に目覚めて幽霊が見えるようになったり引き寄せる体質になったり、ってパターンが無いわけじゃ無いけど、君の場合は『外部からの干渉』の痕跡が見えた」

「呪われ……わ、私、人に恨まれるような心当たりなんて……」

「ホントに? 君にとっては大した事ない遣り取りでも、『相手にとったら』、みたいなの、ここ数ヶ月無かった?」

「相手にとって……、……あっ」


ハッとなってヒトミちゃんは口を押さえ、


「もしかして……先月『振った先輩』……?」

「なんだ、居るじゃんそれっぽいの。そしてさり気無いモテてるアピール」

「まぁ確かに意中でない相手からの好意は煩わしいったらないですよね」

「二人が初めて心通じたな。嫌味ったらしいけど」


まぁ僕もモテるから解るけどね☆


「で、でも、その人はただのバスケ部に居る先輩で……人を呪う方法なんて知らなそうな……ま、まさか、『強い恨みの感情』だけで私を?」

「力を持った余程の霊能者ならそれも可能だけど今回のレベルのは一般人には無理かな。強過ぎる。頑張っても精々、変な声が聴こえたりお腹が痛くなったりする程度」

「な、ならば先輩以外の人が……」

「の、可能性もあるけど、別にそれはその先輩が『腕の良い霊能者に頼んだ』とか『道具を使った』とかって場合もあるから、先輩を除外するのはまだ早いかな」

「うーん、その人が誰か分からない限り、また呪われそうですねぇ。いや、瓏さんのお陰で呪いは無効でしたか。ならば、呪いが効かないと知られれば実力行使で襲ってきやしません?」

「ヒッ!」

「こらクノミ、不安になるような事言わないのっ」


ほっぺを抓ると嬉しそうに「フヒェヒェ」と気持ち悪く漏らした。


「あっ、ひょうえふっ、のにょいひひひないゃあのきょぎゃ! (そうですっ、呪い知識ならあの子が!)」


クノミはスマホを取り出し、どこかに電話を掛け始める。


「あっ、モリちゃん、今いーい? うんっ、ちょっとねー」


言いつつ、クノミはテーブルにスマホを置く。

スピーカーモード。


『で、なに?』

「今いるお客さんが誰かに呪われたようでさぁ。良い特定方法ないかなっ?」

『それを何で一般人の私に訊くかな。姉さんの近くにいる男に訊いた方が早いでしょや』

「えー、呪いとか魔術とかに詳しいぢゃんモリちゃんっ」

『漫画とか本の知識以上は無いわよ』

「まーまー。てかね、そのお客さんって学校の人だから、犯人も学校の人かもって話なのっ。そっちも私より詳しいでしょ?」

『いや、別に誰かとツルんでもないから情報とか知らんし、興味も無いし』

「モリちゃんはツンデレさんだからねぇ。あっ、因みにっ、犯人の第一候補はバスケ部の先輩? とかいう人っ。(チラッ)名前は?」

「え、えっと……確か、【道明寺】……?」

「道明寺だってっ」

『桜餅の材料みたいな名前ね。……ん? 確か、そんな寺みたいな名前の神社、市内に無かった?』

「神社っ。良い情報だよモリちゃんっ。神社の息子なら人を呪うやり方も詳しそうっ」

『偏見もいいとこね。……てか、最近姉さん達、その神社に『何か奉納した』とか言ってなかった?』

「なにか? 奉納? …………あっ」


クノミは気付く。

僕も気付く。

僕は指をチョキにして『切って』と指示。

頷くクノミ。


「参考になったよモリちゃんっ、ありがとねっ」

「モリちゃーん、クノミ、今日は帰るってー」

「瓏さん!?」


『母さーん、姉さん今日帰ってくるってー』

『……え? 本当……? じゃあ……御馳走にしなきゃね……』

『だって。じゃ、早く帰って来てねー(ピッ)』


「ああ! モリちゃん! ……うう、今更訂正し辛いです……」

「僕とモリちゃんのコンビプレー、見事だったろ?」

「ぅー……二人が仲良くする分には、私は怒れません……」


「あっ、あの……それで……」


おっと、ヒトミちゃんを置いてけぼりにしてたな。


「うん、『原因が分かった』から安心していいよ。君がこの先『危険になる事は無い』」

「ほ、本当ですかっ? で、でも、どうして?」

「『人を呪わば穴二つ』。人を呪うってのは、失敗したら本人に返るもんなんだ。君を呪った相手は痛い目見るから、もう心配は無い」

「えー、でも瓏さん、呪い返しで逆上して逆恨みするって事ありません?」

「まぁたお前は不安を煽って……僕が『無いって言ったら無い』んだよ」

「んー。つまらないオチですが、瓏さんが言うならそうなんでしょうねぇ」


立ち上がるクノミ。


「さ、話は終わりましたね。夕飯調理の途中でしたので、そろそろお引き取り下さい」

「別にそのままにしてお前も実家に帰っていいぞ」

「せめて作ってから帰りますよっ、もうっ」

「ぷんぷんっ」と口で言いながらクノミはキッチンスペースに消えた――と思いきや、

「あっ! (クルッ)言っておきますがここでの事は他言無用! 学校の人間や身内に口軽く話さぬようにっ。本来であれば、瓏さんへの『依頼の対価』は、貴方がた一般人が払えるような【モノ】ではありませんからねっ」

「いいからさっさと行った(シッシ)」

「……あ、あの、今の……」

「ん? 気にしないでいいよ。最初に言ったけど、僕らの『そういうの』は既に成立してるんだ。……というか、寧ろ僕は『謝らなきゃ』な立場で(ブツブツ)」

「え?」

「げふんげふんっ、気にしないで。――ま、そういうわけだからさ、今日は帰りな。もう君は普通の女子高生だ」

「は、はい……」


ソファーから立ったヒトミちゃんの表情は暗い。

まぁ、解らんでも無い。

口で説明されても心では納得出来ない部分もあるだろう。


「じゃあ、指」

「えっ?」


僕は小指をさし出す。

彼女も、おずおずと指を立て、僕の指と絡ませたのを確認し、


「指切りげんまん。明日になったら『全部元通り』。指切った」


なんともリズム感悪く、指切りを済ませる。


「コレで、少しは落ち着いたんじゃない?」

「えっ? あ……本当、です……でも、どうして」

「そりゃあ、言葉には不思議な力が宿ってるからね。『言霊』って言うだろ? 僕はその『言霊遣い』でね。僕の言った事は『全て現実になる』」

「す、全て?」

「全て。君に初めて会った時も、『悪霊退散』って言って、問題解決したろ?」

言葉コールは何でも良い。

大事なのは、込める気持ち。

「僕は探偵だけど、もし殺人事件に出くわしたらツマラない物語になるだろうね、一声で犯人炙り出せるから」

「ふ、ふふ……確かに」

「瓏さーん! 瓏さーん!!」


っと、キッチンのクノミがそろそろ限界だ。


「悪いね」

「い、いえっ。色々とありがとうございましたっ。それでは、失礼しますっ」


カバンを持ち、スタコラとヒトミちゃんは事務所を出て行った。


「……ふぅ」


あー、なんか疲れた。

若い子を相手すると疲労がドッと来るよ。

まぁ僕も年齢的には高校生なんだけど。

……そういや寝る予定だったな。

寝るか(ゴロン)。


「瓏さーん。簡単なものですが、アサリのパスタ出来ましたよー」

「えー……じゃあこのまま食べさせてー」

「うふふ、喜んでっ」


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