徒然なる日々
第一話 ねねと私(1)
ノアの方舟が私に任されて、一人しか乗せられないとしたら、乗せるのは、ねね、だ。ねねは、13歳半の家の猫。気のいいねねは、唯一の私の家族なのだ。
「『一人』しか乗せられないというのなら、ねねは人ではないではないか!」とおっしゃる方もいらっしゃるいるかもしれない…いや、そう堅いことをおっしゃらずにお願いしたい…唯一の家族、ねねは私にとって、この世で最も大切な命なのである。
ありがたいことに、ねねは13年半も気のいいまま私と暮らしている。そして、今日も一人(彼女のことは、一人と数えさせていただこう)マンションでお留守番しているのだ。
私は、銀行員だ。どこの銀行で、何をしているかは守秘義務があるので控えさせていただこう。誰かが「人は自分を主人公にした小説を一本は書ける」なんて言っていた。今は、個人情報保護と守秘義務が壁を日に日に高くしているので強硬突破は難しい。私の「これ(この話)」は何に当たるかですか?ふふふ、ご想像にお任せしよう。
私は月曜日から金曜日まで一生懸命(主観ですよ)働いている。その間、ねねは、のんのんのんびり陽当たりのよい南向きのマンションで一人留守番している。
私は土曜日、趣味の本屋巡りをして、ほぼ毎週家にいない。その間、ねねは、のんのんのんびり陽当たりのよい部屋で一人留守番をしていて…「お前はいつ家にいるのか!」とおっしゃる声があちこちから声が聴こえて参りますが、はい、おっしゃるとおり。
もはや、家はねねが守っているのでございます。私はマンションの主であるねねが、のんのんのんびり過ごせることが幸せ。そのマンションのローン返済のため、日々私は一生懸命働いている訳でして、土曜日の本屋巡りはお許しいただきたい。
今日もねねを思い、のんのんのんびりしているだろうことを祈って仕事に邁進しているのである。