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4.俺で満たして side勇者

4話目です。

勇者による前世回想。


目の前で崩れ落ちる華奢な身体。俺はそれを抱き上げ、必死に彼女の名を呼びかける。

そして魔王の問いかけに、彼女は最後の力を振り絞りこう告げたのだ。


「貴方様が、彼を殺す、…の、みたく…なか…。」


その言葉は魔王を想ってのことなのか、俺を想ってのことなのか、それを知るすべはもうなかった。


彼女の裏切りは確かに身を引き裂かれるような痛みを覚えた、だがやっとミスティアの憂いを知れた、やっとその憂いを排除できると思ったのに。


「お前がいないこの世に、意味などあるわけがない。」


魔王は彼女の亡骸にそう静かに告げ、目の前で自ら命を絶った。

なんて勝手なやつだ。俺からミスティアを奪っておいて、自分はそれを追いかけてさっさと死んでしまうなんて。


「勇者、妙な事を考えていませんよね?」


俺の近くまでやってきた神官が、言外に俺まで死のうとするなと告げてくる。こいつは知っている、みんなの憧れの勇者様は決して聖人君子ではない事を。


「魔王は死んだ、じきにこの城も崩れ落ちるでしょう。これで勇者様の役割も終わりになります。」


だったらとっとと俺を彼女のもとに向かわせろ。

もし次に彼女に会うことができたなら、今度こそアイツに奪わせない。

憂いも、悲しみも、全てを取り除いて、俺で満たして俺だけのものにしてみせる。






「きゃっ!」

「っと、ごめん!怪我はない?」

「は、はい!」


考え事をしていたせいか、人にぶつかってしまった。ぶつかった少女に目を向けてその顔を確認するが、やはりその目にはあの愛おしい憂いは見当たらなかった。

俺に見つめられたからか、目の前の少女は顔を赤くした。


「あ、あの、私に何かございましたか?」

「あっもうこんな時間か。ごめんね、もう行かなきゃ。」


そう言って期待を込めた視線を振り払いまた歩き始める。今世ではまだミスティアと出会えていない。



はやく、俺の元に現れてくれ。

そうしたら、やっと俺だけのものにできるのに。



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