第9話 夜、廊下にて
・・・。
・・・。
・・・。
ん・・・。
胸・・・。
胸・・・。
ん???
なんか感触が硬い。
なんだこれ。
手を上下にさすってみる。
サシュサシュと布をさする音が聞こえる。
胸じゃないのか???
この感触はあきらかに胸じゃない・・・。
そう言って少し考えたのち状況に気づいた。
枕か・・・。
くそ!!!!!
最悪だーー!!
枕と戯れていたのか!!!
そして僕は、少しやりきれない気持ちで目を開いた。
真っ暗な中に、机が見える。
今日のお昼に腰かけた机だ。
当然のことだが、部屋は何も変わったところはない。
僕は頭を抱えながらゆっくりと起き上った。
ズキン・・・。
少し頭が痛む・・・。
よく寝起きのとき、脳が起きていないせいか
少し、頭が痛む時があるが
それとは異質のものだった。
その瞬間、
急激に頭に電撃走ったような痛みに襲われた。
僕は、たまらず、頭を抱え込んだ。
僕の脳裏に何かが浮かぶ。
女の子だ。
何歳ぐらいだろう・・・。
泣いている。
次に場面が変わり
突如火が現れた。
その火が僕の周りを包み逃げ場をなくす。
やがて、火は大きくなり、炎となった。
それはまるで生きているように、僕の周りをうごめいている。
そしてその火がまさに僕に襲いかかろうとした瞬間
今までが、嘘のように頭痛が消えた。
そして僕は、額に汗が溜まっているのを手でぬぐった。
なんだってんだ。
僕の頭の中では、何が起こっているんだ。
あの女の子は一体誰なんだ・・・。
そして僕はふとシャツを見た。
濡れている・・・。
そこには、暗くてよくわからないが
何やら、どす黒い液体がシャツを濡らしていた。
なんだこれは・・・?
僕は、それに少しだけ触れた。
手にどす黒いものがつく。
その瞬間
僕は、そのどす黒いものの正体に気づき
さっと飛び起きベッドで
けつまづきそうになりながらも電気をつけた。
やはり
血だ・・・。
そうそのどす黒く見えてた液体は
実は、赤黒くまさしく血そのものであった。
僕は、そう思うや否や、いま着ていたものをすべて脱ぎ、
何か、けがをしていないかどうかを探した。
その結果
どうやら、僕の血ではないらしい。
僕の体には傷一つなかった。
ではこれは、誰の血だ??
この量から察するに相当血が流れているように思う。
ちょうどその血は、僕のシャツ全体を大きく濡らし
ベッドの方にもびっしょりとついていた。
もしかして、玲子さんの血か???
僕は、少し、ベッドを見たあととりあえず新しいシャツとズボンに着替えた。
そして、頭を抱え、イスに座りながら
今の状況を考えた。
さっき、玲子さんが訪ねてきて・・・。
ベッドに座り・・・。
いいにおいがし・・・。
そのまま僕は、胸へ・・・。
と僕は、とっさに時計を見た。
今何時だ。
玲子さんと会った時は、確か、そんなに夜遅くもなかったように
思う。
大体10時くらいだろうか?
今は・・・。
1時だ。
そう考えると
僕は約3時間意識がなかったことになる。
3時間も・・・。
僕は一体何をしていたんだ。胸が近づいてきて・・・。
そこからの記憶がほとんどない。
僕は、しばらくじっと考えていたが
答えが出そうになかったので
とりあえず恵にこの状況を話そうと思った。
そうして部屋のドアを開ける。
外は真っ暗闇で、何も見えない。
たしか恵の部屋は隣だったはず・・・。
黒木さんはもう寝ただろうか。
今日の夕方の、ドアから聞こえてきた奇妙な会話
を思い浮かべながら、ゆっくりと歩を進めた。
ギ・・・。
ギ・・・。
なるべく音を立てないようにしているが
二階
廊下部分は木でできているため、木がきしむ音がする。
そして
ほとんど何も見えず
手を前に、探り探り、ゆっくりと恵の部屋の方へ歩いていたが
ついに左の壁にドアノブと思われる突起物を発見した。
それを僕は、一度二度とさわり、形がドアノブというのを確認すると
ノックをするために、右手を軽く握った。
そして、ノックをするため少し手を引いた。
その時・・・。
ギ・・・。
ギ・・・。
ギ・・・。
どこかで、二階の床を歩く音がする。
その音から察するに向こうもどうやら
音をたてないように歩いているようだ。
僕は、その音が聞こえるとともに反射的にかがんだ。
音はどこからだ・・・。
僕は、かがみながら
左右を見る。
影が確認できない。
僕は次に音を、便りにどちらから聞こえてくるかを確認しようとした。
・・・。
僕の部屋とは反対の方からだ・・・。
・・・。
・・・。
だがよくよく考えてみると
そんなにびっくりする必要がないような気がしてきた。
ここに、いるのは、僕たち以外にもたくさんいるし
ましてや、トイレは自室についているものの廊下にもあるので
なんらかの理由でそちらを使おうとするのは
十分考えれることでトイレに外に出るという考えもあった。
そして僕は、意を決し
「誰ですか」
と、少し震える声で
声を発した。
それが床を軋む音を出している相手に聞こえたのだろう。
床がきしむ音が止んだ。
だが
次の瞬間
びゅん
っという音ともに僕の横を何かが高速で通り抜けた。
!!!
僕は、少し痛みを感じ、ほほに手をやった。
血だ!!!
そして、高速の物体が飛んで行った方を一度見る
だが暗くて何も見えない!!
また音が聞こえる。
ひゅっ
ひゅっ
ひゅっ
三つ立て続けに聞こえたあと僕はとっさにドアに密着し身を、なるべく廊下にださないようにした。
カッ
カッ
何かが廊下に刺さる音がする。
キンッ
ひとつは、壁に当たり、高い音の金属音を出した。
僕は、身をかがめながら、その床に刺さっているものを見る
!!!
ナイフ!!!!!!
なんでこんなものが!!!!
僕は、床に刺さっているナイフをみ、完全に今の状況を飲み込むだけの
思考力・・・。冷静さを
持つことができなかった。
僕はとっさに立ち上がり、恵のドアノブをひねった。
ドアは以外にも鍵が閉められていなく
僕は、部屋の中に転げるように入った。
そして急いで、ドアを閉め鍵をかけた。
そしてベッドに横になっているだろう恵に声をかけた。
「恵!!恵!!起きろ!!」
・・・。
・・・。
・・・。
反応がない。
僕は、しょうがなく力づくで恵を起こそうと考えた。
「恵!!起きろってば!!!」
そういいつつ
掛け布団を勢いよく引っ張った。
!!!
いない!!!
だれも!!!
そうそのベッドは、だれも寝ていなかった。
また使った形跡も残されていなかった。
そ・・・
そんな・・・
どういうことだ・・・。
僕は、もうわけがわからなくなり、ドアを背にしその場にしゃがみこんだ。
どういうことだ!!!!
恵はどこにいったんだ!!!!
てかベッド自体全然使われてねーじゃねーかよ!!!
どうなってんだよ!!!!
ここに来てから何かおかしなことばかり起こる!!
はじめは、僕の考えすぎかと思っていたが
どうやらそうでもないらしい。
そう考えているところに
ギギギ・・・。
・・・。
・・・。
ちょうど横の・・・。
そう・・・。
僕の・・・。
つまり
僕の部屋のドアが開いた音がした。
僕は、ドアにへたり込みながら
恵の部屋から僕の部屋がある壁をとっさに見つめた。
誰かが・・・。
誰かが・・・。
僕の部屋に入った!!!!!!