第5話 廊下にて
・・・。
・・・。
・・・。
さあ、ナイトの仮面を取るぞ。
その時
「本庄君じゃないか。そこで何をしているんだい」
白井さん・・・?
後ろから白井さんの声がする。
僕は、おそるおそる振り返った。
すると、少し息を弾ませている白井さんがそこにいた。
げ・・・どうしよう・・・。
しっかり手は、ナイトの兜にかかったままだ。
「このナイトの兜はかっこいいなあって思ってみてたんです。」
う・・・我ながら、かなり苦し紛れだ・・・。
そうして、ナイトの兜を右左に動かそうとした。
すると、
「いかん、いかん!」
と白井さんがすごいスピードで僕の手を取った。
僕は、その行為をあっけに取られながら
見ていると
白井さんが言った。
「すまん!このナイトの置物は古くてなー。触るとすぐに、倒れてしまうんだ」
「そうだったんですね。ごめんなさい。つい」
「いやあ。いいんだよ。これから気を付けてくれたら」
白井さんはナイトの置物を少し用心深く見ながら
髪をかきあげこちらをみた。
「ふーー。そういやーもうみんな来てるよ」
白井さんは、ひと息つきながら言った。
みんなというのは、お昼にきてなかった人の事を指しているのだろう。
「そうなんですね。」
僕は白井さんを見た。
少し、額がきらきら光っている。
うっすらと汗をかいているようだ。
「恵たちはどこに行ったんですか?」
僕は聞いた。
「恵と幸子は、夕食を作りに厨房にいるよ」
「信二は、どこに行ったんだろう。みかけないなあ」
そう言って、少し首をひねった。
「他の、みんなは、まだ謎探りをしているんじゃないかなー」
「そうなんですねー」
そう言って、ふとナイト脇の窓から外を見た。
そこには、かなり背の高い、ひょろっとした男がレンズの大きいカメラを
上に向け、こちらの方を向きながら、仕切りにシャッターを下ろしていた。
「あの人は?」
白井さんが、窓に近づき外を見た。
「ああ、あの人は遅れてきた人達の内の一人だよ」
そう言って僕の方を向き、続けて言った。
「どっかのミステリー雑誌の記者らしい。あと他の3人も一緒だよ。浜田家の謎の特集をやるんだって。そんなにたいそうなものではないと僕は思うんだが・・・」
ふーん
僕は窓から、目を離した。
その時、廊下の向こうの階段から、メガネ三人組が降りてきた。
「ここがこうで・・・」
「違うよ!これは、こうだよ」
と三人は話したまま近づいてくる。
「どうですか。なにか謎はわかりましたか?」
白井さんが声をかけた。
声をかけなくてもいいのに・・・
「そうですねーー。今すごい仮説がでてきたんですよ!で、これからそれを証明しに書斎に行くとこなんですよ。」
「そうなんだー。どんな謎なんだい?」
白井さんは興味をそそられたようだ。
「今は、まだ言えないんです。」
もったいぶるなよ!!
と僕は、叫びたかったが、そこは特に気にするわけでもなく
少し、興をそがれたような気分になり自分の部屋にもどろうかなと思った。
そのまま、メガネくん1号2号3号と白井さんが話している間に、玄関の門が開いた。
西陽が差しこんでくる。
すごく長い人影が、廊下に映り壁にまで延びていた。
「こんにちは!」
僕は、声をするほうを見た。
陽が目に入る。一瞬、目を細める。
よく影で、顔が見えない。ただ、肩から大きなカメラをぶら下げているのはわかった。
「こんにちは」
僕は、手を目の上にかざしながら言った。
「おっとごめんごめん。まぶしいよね」
そういいながら扉を、閉めた。
改めてこう見るとでかい。
190以上はあるだろうか・・・。
顔立ちは、少し、頬がこけているが、気さくな話やすそうな人だ。
「僕の名前は、村木正治です。よろしく。」
そういって僕たちに、笑顔をみせた。
すかさず、白井さんが、僕たちの紹介をしてくれた。
「この右にいる方が、本庄 孝太くん」
そして、今まで話していた、メガネくん3人衆のことを指しながら
「で、こちらが、大学のミス研の 浦井裕也くん。平井太一くん。河合喜一くんです。」
ぼくら4人はほぼ同時に軽く頭を下げた。
「へー、君たちミス研なんだー」
あきらかに僕も一緒にされてないか??
「いえいえ!僕は、ちがいますよ。」
「そうなの?」
「僕は、白井さんの姪御さんと友達で気分転換に旅行に来ただけなんです。」
「あ、そうなんだー。んじゃ君は、ミス研じゃないんだね。僕は、月刊歴史ミステリーという雑誌の記者をしているんだ。よろしくね」
そう言って、村木さんがカメラを抱えた。
「一枚記念に撮っとこうか??」
そういってなれた手つきでファインダーを構えた。
シャッターが、1度、2度と押された。
「あとで、現像したら、あげるよ」
「はい!お願いします。」
浦井くんが言った。
その後、村木さんは、少し話をし、2階の自室へ戻って行った。
「んじゃ僕たちも書斎にいきましょうか」
平井くんが言う。
それから、浦井くんと河合くんがうなづき三人は、書斎の方へ歩いていった。
僕と、白井さんも、そこで別れた。
とりあえず、また部屋で、ぼーっとしとくか・・・。
そう思った僕は、ゆっくりと階段の方へ歩いていった。
廊下の端の階段を上り、部屋まで歩いた。
そして、鍵を開けるため鍵を取り出す。
うん・・・?
隣の部屋からなにやら声がする。
確か、僕の部屋の横には、恵がいる。
そして反対側には・・・。
黒川さんだ・・・。
僕は、興味本位で、少し聞き耳を立てた。
中から声がする。
「・・・。だから俺には、秘密なんてどうでもいい・・・。」
「ええ、それは分かってます。」
「お前は、俺にしたがっておけばいいんだ・・・。どうせここから出たら赤の他人なんだからよ」
「そうですね」
・・・。
何・・・?
どういう事だ・・・?
離婚のことなのか?
だがそれなら、俺にしたがっておけとはどういうことだ?
黒川さんの言い方が、全然旦那さんっぽくない
言うなら、突然組まされたチームみたいだ。
しかも、今回だけの・・・。
まだ、中で話しは続いている。
「今日か、明日中には、必ず白狼を確保せねば・・・」
白狼???
「そうですね。」
「今日は必ず、白狼が来る。これは、確かな筋からの情報だからな。だが・・・。」
そこで、一旦黒川さんは一息ついたようだ。
「誰が白狼なんだ・・・。」
・・・。
・・・。
・・・。
この人たちは、一体何を話しているんだ。
全く分からない・・・。
話が、全く別の次元のものに聞こえる。
まるで、何かの仕事で来ているようだ。
ただ、今の時点で分かっていることは
黒川さん夫妻は、浜田家の秘密を追っているのではないようだという事。
そして、白狼・・・。
話からして多分人だろう。
その白狼を捕まえようとしているという事。
という事は・・・。
僕達がお昼に食卓を囲んで話していた事のうち、浜田家に興味があるっていうのは
嘘だってことか・・・?
何故、そんな嘘を・・・?
何者か分からない白狼に疑われないようにするためか?
その時・・・。
ドアが開いた。
「ああ。本庄くんじゃないか!どうしたんだこんなとこで。」
やばい・・・。
一瞬にして、僕の顔に汗が浮かぶのが分かる・・・。
どうしよう・・・。
「いやー、部屋に入ろうとして鍵をここに落としてしまって」
といい僕は、廊下の隅を指差した。
「もう鍵は取ったんですけどね」
と苦し紛れに鍵を見せる。
「実は僕の部屋はとなりなんです。」
「そうだったのか。横が、君の部屋だったんだな。」
「そうなんですよー。んじゃ、また後で、夜ご飯の時にでも
浜田家の秘密の事について教えてくださいね」
そういって、逃げるように部屋に入った。
ばたん・・・。
ふーー。なんとかしのいだか??
外から、声が聞こえる・・・。
「・・・。本庄くんか・・・。
彼は嘘をついているな・・・。」
!!!
なにーー!!
ばれた!!!
一瞬にして、心拍数が上る。
「じゃあ私たちの話を聞かれたのかしら?」
「ああ・・・。たぶんな。」
そう言って、少し間があり
「まあ・・。いいだろう・・・。彼が、俺たちの邪魔をするとは思えん。」
そう聞こえると、部屋のドアを閉める音が聞こえた。
二人とも部屋に戻ったのか・・・。
なんだってんだよ!!
本当に!!
今日はやたらとヘンな事に気が付くじゃないか!
そういって、僕は、窓から外を見た。
・・・。
・・・。
・・・。
一体何が起ころうとしているんだ・・・。
かなり更新が遅くなってすみませんでした。これから物語は佳境に入って行きますので乞うご期待ください。