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白狼  作者: kazuyaX
20/21

第20話 地下室にて(加奈さんの話2)

加奈さんは一息着いた後、木田さんと玲子さんの話をし始めた。

「私が、峰岸と木田と会ったのは、EU諜報部に配属されて1年くらいが経った時だった。

その時、私は、任務で、トルコに行く事になった。

そこで、木田と峰岸と知り合ったんだ。


木田は、特殊部隊員として、武器を手に日々、重要な参考人を殺害したり、

捕獲したりする任務を行っていた。

一方、峰岸は、おとり捜査が得意で、当時私達が追っていた将軍の右腕とも呼べる存在の恋人として

敵の内部に入り、情報を聞き出していた。


そして、私がその任務に加わり、その将軍の裏の顔を暴くとともに、その将軍を捕獲もしくは、殺害する

事になった。


そこで、あの二人の特性を目の当たりにしたんだ。


簡単に言うと、峰岸は

あの美貌と、また、神経毒を作成する能力が、突出していたため、敵に簡単に取り入れられ、

必要な情報を思うがままに取得する事が出来た。また、毒により、殺しも簡単に行うことが出来た。

一方木田は、特異な体質をしており、力を鍛えれば鍛えるほど強くなる事が出来た。

つまり素手では、一般の男なんか相手にならないくらい強くなる事が出来る。」


そこで一息置くと、加奈さんは再び話しはじめた。


「私は、その中でも近接戦を得意として、ナイフでの戦闘は、部隊の中でも私の右に出る者はいなかった。」

そこで再び加奈さんは話をやめると、ペッと口から血を吐き再び話し始めた。

「そして、私達は、お互いの特性を駆使しながら任務を行っていた。そうしてその将軍は、捕獲され任務

も無事成功し、EUはそれを高く評価し、その後は三人で、チームとして行動をするようになった。

お互いを本当は、コードネームで呼んでいるため素性などについては一切知らないが

ここでは、木田夕子、峰岸玲子、城田加奈と呼ぶことにした。

そこで今回の任務、白狼の捕獲作戦についてなのだが

我々はまず、白狼と疑われるやつに近づく作戦を立てる事にした。

そうして作戦を実行する段になって、木田が行方不明になった。

だが作戦をとめる事が出来ない私達は、

白狼と睨まれる人物、そう本城コータに近づくため作戦を開始した。


また、消えた木田について何か知っているかも知れないとも思っていたので

その部分についても聞き出そうと

峰岸を送り込んだのだ・・・。

それが今日の夜・・・。」

そこで、加奈さんは、僕の方をじっと見る。


そうだったのか・・・。

だよなー。あんな美人が僕なんかに惚れるわけないもんなあ・・・

とちょっと落胆したと同時に

白狼と疑われている事を改めて認識し、それについて作戦が行われていた事に

戦慄した。


また加奈さんがゆっくりと口を開く。

「だが、峰岸は帰ってこなかった・・・

そして・・・。

夜深くなってから、私は、コータの部屋へ行くべく行動を開始したって訳よ・・・。


でも、あなたの部屋に忍び込み

あなたの荷物や、あなたのベッドをめった刺しにしてやったけど

あなたはおろか、峰岸もいないし、白狼のような荷物もなかった。」


やっぱりあの時部屋に入ってきたのは加奈さんだったんだ。

僕は、その時の様子を思い浮かべた


じゃあ、あのまま部屋にいたら確実に殺されていたって事か・・・


そう再認識し、改めてこの異常な状況に恐怖した。


その時だった・・・。


地響きにも似た

重い、そして建物全体が揺れるような轟音が地下室に響き渡った。


一瞬僕達は、お互いに目をあわす。

幸子さんが険しい目をする。


「始まったか・・・。戦争が」

加奈さんが不敵な笑みを浮かべ言う。


続けて銃の乾いた音が連続して聞こえる。

その後再び、爆音が響き、建物が振動する。

それと同時に上から、パラパラとほこりのようなものが降って来た。


すぐさま、信二さんは銃を両手で持ち、臨戦態勢に入った。

そして一度上を見上げると

「他のメンバーが危ない!援護に行く!」


そう言って、幸子さん、河藤さん 近藤さんの方を見る。

皆が一度うなずくとおのおのが手元にある銃を確かめだした。


そして、4人がドアの方へ歩く。


ふいに信二さんが振り向き、

「悪い!少しの間またここで待機してもらえないか?」

と僕に言う。


そして、加奈さんの方を振り向き

「もしまだ、コータ君にさっきみたいな変な事を言えば確実に殺す」

と凄んだ。

加奈さんは、依然、信二さんの方を向きながら不敵な笑みをたたえている。


僕は、加奈さんの方をチラッとみて

ここにいる事に恐怖したが

「わかりました」

と声を振り絞るように言った。


そして、信二さん達4人が出て行く。


扉が開けられ、4人が周囲を警戒するように、

低い体勢で出て行く。


待って・・・。

と女の子っぽく叫びそうになったが

結局言葉には出来なかった。


ふと、横の加奈さんを見る。


うわーー!!めっちゃ睨んでるーー!!


そう加奈さんは、この世の物とは思えない顔で僕の方を見ている。


そんな顔してたら美人の顔が台無しですよ・・・


と自分の心の中だけで思い、


このどんよりとした地下室と、

加奈さんの発する殺気オーラから


「あの・・・ロープ痛いですか。」


とまったく場に似合わない訳のわからない事を質問してしまった。


加奈さんがまたすごい顔で睨む。


うう・・・。

その目力だけで、死にそう・・・。


もうじっと加奈さんの方を見られなくなった僕は、

そっと目をそらした。


「痛いよ!!」


と加奈さんが声を張り上げ言う。

僕は、ヒッと自分でも小心者と分かるようなかよわい声を出してしまった。


「でも手も足も、薬のせいで動かねえんだから最悪だよ。」


と今度は、静かに言う。


そして、僕は、今まで疑問に思っていた事を口にした。

「あのー僕ってやっぱり白狼だと疑われてるんですかね。」


加奈さんは、鋭い目でこちらを凝視ししたかと思うと

「そうだよ。」

と言った。


「なんで、僕が白狼に疑われるんですか。年齢も全然合わないのに・・。」


と聞くと

加奈さんは一瞬目を細め

静かに言った。


「お前は、本当に何も知らないのか??」



僕は間髪いれずに

「はい」

と答えた。


そうすると、加奈さんは静かに視線をはずし

「そうか」

と言う。


そして

「白狼は、伝説のスパイだと言ったよな。

白狼というのは、その昔、ソ連が作り出した最強にして

最高のスパイだった。

だがその存在は、謎に多く包まれ、その姿を見たものはいなかった。

そこで起こったのが、白狼はでっちあげなのではないか

今まで、重要な局面において暗躍してきたのは

それぞれ別のスパイで、そいつらが

白狼という隠れ蓑を使いながら

活動をしてきたのではないか。

という考えだ。


しかし、ソ連が崩壊したときに、

ある研究に関する資料が漏れた。

なんとそこには、白狼に関する事が記載されていた。」


そこで、加奈さんは一息入れた。


「そしてそこには、白狼の正体が書かれていたんだ。」


僕は、自分でも分かるほどの音で、ごくりと喉を鳴らした。


「白狼は、実は、人物そのものを指すものではなく

人格なんだ。」


・・・。


・・・。


・・・。


何を言っているんだこの人は・・・。


全く理解できない話しと

この異常な状況のこの場所に

僕の頭は完全に悲鳴を上げ始めていた・・・。







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