第16話 活動開始。
僕は、河藤さんの足元から目をはなせなかった。
あれは、血なのか?それとも何かのしみなのか?僕は真剣に見極めようと、じっと見た。
「何見てるのよ!!」
恵が、僕に耳打ちをするように言った。
僕は一瞬その小声にびくっとなりながら
恵の方を見た。
いつの間にか、真剣な顔をしていたらしく、恵が僕の顔に気付き声をかけてきた。
「いや。なんでもない」
今ここで声に出して言うのは得策ではないと思った僕は、とりあえずその場しのぎの言葉を発した。
一瞬、恵は不思議そうな顔をしたが、すぐに普通の顔に戻り
「そう。ならいいけど」
といった。
一通り報告が終わり、次の作戦への話しとなった。
現在の状況から見て、とりあえず危険な城田加奈のチームをどうにかしないといけないのと同時に今のところ、何者かはっきりしない浦井チームの監視を行わないといけないという話しになった。
城田加奈を、とりあえず任意で取り調べを行い、ここへ来た目的は何なのか。そしてどこのスパイなのかを聞く事になった。
一方で浦井チームには、それとなく探りをいれる。
ここにいるチームで、二手に別れ、作戦を行うことになった。
まず、城田の方の作戦のチームは、近藤さん、信二さん、河藤さん、幸子さんの四人で浦井監視には、加賀見さん、恵、白井さん、村井さん、と僕・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
ごめん。嘘だ。
僕は留守番だ。
この無機質な部屋にひとりぼっちで。
最悪だ。
でも、僕が行ってもなんの役にも立たない。
それは僕が一番分かっている。
だから敢えて僕は留守番をしよう。
でも・・・
こわいよー!!!
まじで!!
さっき僕殺されかけたんだぜ!!
これで怖くないってほうがおかしいよ!!
さっき救いの目で、恵のほうを見たのに恵は、ここは頼んだみたいな顔をしてるし。
とにもかくにも作戦は決行されることになった。
信二さんは、城田の確保を遂行するためか、自分の銃を一度壁に狙いをつけたり、弾を確認し、武器を手入れしている。近藤さんと河籐さんはなにやら話しをしている。
ふいに恵が近づいてきた。
「ここはたのむわね。」
そう言って恵はまっすぐ僕の方を見た。
目に信念みたいなものを感じる。
この作戦は、ここにいる人達にとったら特別なものなんだ。
仲間の仇を取るために、この作戦は絶対に成功させたいだろう。
そして、話しを聞いていれば、白狼は神出鬼没で相当なやり手であるという部分からしても今回はかなりのチャンスなのだろう。
恵は、少し目を伏せ言った。
「ごめんね。こんな事に巻き込んでしまって。」
ぼくはその恵の仕草になんてかわいいんだと思いつつも
「ううん。全然いいよ。それよりも恵の方こそ気をつけてな。」
僕は僕に全く似合わないセリフを吐いた。
「うん」
恵は少し目を伏せながら言った。
かくして作戦は開始される事となった。
始めに、城田チーム確保班がドアから外にでて、続いて浦井チーム探り班が外にでた。
最後に出る恵がこちらを向き、唇をきゅっとかみしめる。
それは僕にとって引き返す事のできない大きな事件に巻き込まれた合図のように思えた。