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白狼  作者: kazuyaX
15/21

第15話 ミーティング。

報告は、白井さんから始まった。

「まず私の部隊、恵と村木くんの三人だが、切れたカメラの原因を調査しに山荘の横にある倉庫へ行った。

カメラの電源はそこからひいているのだが、電源は切られていた。スイッチをオンに入れてもつながらないところから見ると、電源を完全にショートさせたか、あるいは何らかの原因で壊れたかだ。

しかし、手入れを欠かさなかった装置だというところを考えてみるとやはり人為的なものではないかと思われる。」

そこで白井さんは、ちらっと僕の方を見た。

「そしてその後、山荘に帰ってくると、二階で何やら物音がしたので、そちらの方へ行こうとすると、城田らしき女がものすごい形相で恵の部屋のドアを叩いていた。直感的にただならぬ雰囲気を感じた私達は、城田と交戦を行った。

城田の方は勝てないとふんだのかすぐにその場を立ち去った。

その後、恵の部屋に誰かいると思った我々は、部屋に踏み込もうとしたが、恵が多分中にいるのはコータ君だといい、恵が一人で行くことになった。

幾分、嫌な予感はしていたが、中は本当にコータ君だったらしく、コータ君だったら地下室に連れて帰ってもいいと私が許可を出していたので、そのまま連れて帰ってきた。

そしてカメラの状態だが、多分今日中には復旧は無理だろう。」

白井さんがそこまで言うと

「ということはつまり…


これからも、俺達以外の奴らの動きがわからないってことか。」


加賀美さんが静かに言った。

その後、近藤さんが口を開いた。

「それじゃあ白狼が現れても、行動がわからないってこと?」


白井さんは、近藤さんの方を見ずに答えた。

「そういう事になる。」

「ただでさえ白狼の足取りをつかむのは難しいのに、この山荘の様子がわからないんじゃ白狼を捕まえるのは絶望的なんじゃないの?」

近藤さんが言った。

「たしかにそう考えればそうだが、もしかすると白狼がカメラの電源を破壊したのかも知れない。少なくとも私はそう考えている。

私だってもし、敵陣に侵入するとしたら居どころがわかる情報は、掴まれないようにするだろう。」

白井さんがあごに手を置きながら言った。

「ってことはカメラがあるって事はばれていたということか…」

信二さんが腕を組みながら言った。

「そして、もうひとつ…


白狼がもう山荘のなかにいるってことになる」


幸子さんが静かに言った。

僕は、何故かわからないがその言葉を聞いた瞬間とてつもない胸騒ぎに襲われた。

ただでさえ普通じゃない状態だ。

そこに、さっき恵から聞いた事件の中心人物白狼があらわれるのだ。

多分、話しから察するに白狼は人殺しをなんとも思わないだろう。

そう考えると、もしかするとこの後、多くの血が流れる結果になるかも知れない。

僕は、恵の方を見た。

恵は、図面を見ながら何かを考えているようだ。


そうなったとき僕は恵を守れるだろうか。

はっきり言って自信ない。

現時点では、恵の方がぼくなんかよりもはるかに、強い。


だが僕は僕が出来る事をやろう。それがどういう結果になっても、僕にはそれしか残されていない。


ふいに信二さんが手を上げた。

「じゃ、次はぼくの報告といこうか。」

信二さんは、そういいながら、手を下ろし図面を見た。


「僕達の部隊は、電気が切れた原因を探りにブレーカーを見に行った。


そして、あるものを発見した。」


信二さんは、そういって、ポケットからごそごそ何かを取り出した。

それは、黒く焦げているが金属の破片のように見える。

その金属の破片らしきものは、全長が大体2cmくらいの細長いおおきさのもので片方の先には、なにやら、デジタル数字が表示されるような小さい四角の電光掲示板みたいなものがついていた。


「時限爆弾か…」


白井さんが静かに言った。

僕はそれを聞いた瞬間、なにやら胸にひっかかるものを感じた。

それは、違和感とまではいかないが漠然とおかしな印象を、時限爆弾という言葉に感じた。


「だがこの爆弾はごごくごく微少の爆発しかできないようになっている。つまり対人用などではなく確実に電気系統のみを狙った爆弾といえる。こういった爆弾を作れるのは、工作員の訓練を受けたものであると考えられる。

僕達以外の誰かであるとするとここに潜りこんでいる工作員か、もしくは、白狼か。」

そこまで信二さんが言うと、白井さんが口を開いた。

「だがここに来ている工作員に、電源の場所がわかるのか?」

白井さんが言うと、恵が今度は口を開いた。

「ここの工作員には電源を調べる時間は十分にあったとおもうわ。だって浜田財閥の秘密を探ると見せかけて、この山荘のシステムを探る事が出来たと思う。」


確かにその通りだ。

ここに来ている工作員は、浜田財閥なんかよりも白狼の方がよっぽど価値があるだろう。

そして、互いの事が何もわからない内は、浜田財閥の事を調べると言いながら、この山荘や白狼について調査をした方がいいだろう。


「ふむ…」

白井さんが納得したように言った。


「次は私達ね」

近藤さんが言った。

「私達のグループは、外との交信ができる橋の近くの小屋に行ってきたわ。

そこの交信所もさっきと同じような爆弾で電話線の部分だけ破壊されていた。」

白井さんがすかさず口をはさむ。

「そこまで知られているのか?!」

近藤さんが続けて言う。

「それが白狼のせいかどうかはわからないけど事実として交信所の電話線は破壊されていた。」

そこで近藤さんが一息つくと、

「少なくとも、こちらの動きを妨害しようとしているものがいる。」


「そして、幸子さんには先に帰ってもらって、この事態を報告してもらおうと思ったの。でもまあ皆ちょうどそろったから報告はそれからでもよかったけどね。」


その時だった。

ふと河藤さんの足元を見た。

そこにはさっきまでは気づかなかったが、ズボンのすその辺りに何やら赤いしみみたいなものを発見した。


それを見た瞬間、直感的に僕は血痕だと感じた。


ゆっくりと河藤さんを見る。

河藤さんは白井さんの方を見ている。


それは河藤さんの血か?

それとも何かの弾みでついたのか?


何故かわからないが僕の胸騒ぎはだんだん大きくなっていった。













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