第14話 地下室での出来事
幸子さんが入ってきた・・・。
とその瞬間、腰から、銃を引き抜き僕に銃口を向け構えた。
僕は、反射的に両手を挙げた。
手が、コーヒーカップにあたり、地面に落ちた。
中のコーヒーが床に広がる。
僕は、ふと目を見る。
目が怖い。
「待って!!
幸子さん!!!!」
恵が手を前に出し、幸子さんを制す。
「なんでここに、コータ君がいるの?!」
幸子さんは、銃を構え、険しい表情をくずす事なく聞いた。
「違うの!!電源の様子を見にいったときに城田加奈と思われる人物が私の部屋の扉を蹴破ろうとして、それを防いで中に入るとコータがいたの!それでやむなく連れてきたの!!」
恵が言った。
だが幸子さんは、銃をおろさない。
険しい目をしたままだ。
恵は続けて言う。
「そのすぐ後で、コータの部屋に入ったけどナイフでベッドがメッタ刺しだったわ。
明らかにコータを殺そうとしている。
このままコータを一人にしていたら必ず殺されるわ。」
幸子さんは、ちらっと恵の方を見た。
すぐに視線を僕に直す。
「恵、あなた、以前の事件を覚えているでしょう。白狼は誰か、何処にいるかわからないのよ!!その状況で、信用できない一般人を私達の地下室に入れるなんて…
あなたも前の事件で嫌になるほど胸に刻まれたでしょ。
私達以外は誰も信用できないって!
ましてや、コータ君は、キツネなんでしょ。
そんな人をこの部屋に入れるなんて!!」
キツネ???
どういう意味だ??
またよくわからない言葉が飛び出した。
「幸子。暑くなるな!」
一瞬部屋がびりびりするほどのどすのきいた声が響いた。
白井さんだ。
白井さんってこんな声だったっけ?
「白井さん。いくらこの部屋が防音でもその声はもしかしたら外に聞こえるかも知れないっすよ。」
村木さんが柔らかい声で言った。
白井さんは、村木さんの言葉には答えず、幸子さんを見ていた。
「たしかに、白狼に復讐したい気持ちはある。仲間を殺され、激情に流されるままに白狼を八つ裂きにしたい気持ちもある。
しかしその感情が一番危ない結果を生むことは幸子も知っているだろう。」
今度は少し声のトーンを落とし、語りかけるように白井さんが言った。
幸子さんは、今度は、白井さんをちらっと見た。すぐに視線を僕に戻す。
「でも、私は!!
私は!
このチーム以外は誰も信用しない!!!」
幸子さんが少し声をあらげて言った。
「それはそれでいい。だがチームの恵が言っているんだ。コータ君を信用できないと言うことは恵の言うことも信用できないって事にならないか?よく考えろ。」
白井さんが言った。
幸子さんは何も答えない。
しばらくすると幸子さんの手が小刻みに震えだした。
そして、
静かに銃を下ろした。
幸子さんが一息つく。
「分かったわ。恵を信じる。コータ君ごめんね。でももし何か不穏な動きをしたらその時は、ためらわず撃つわ。」
幸子さんはそう言って僕から目を反らした。
一瞬悲しそうな顔をする。
前の事件の時に何かあったのか??
僕は、幸子さんの言葉に何度も頷きながら
心の隅ではふとそんな事を考えていた。
幸子さんは、椅子に腰かける。
しばらくして、近藤さんと加賀美さんが扉を開けた。
僕の顔を見るなり、一瞬険しい表情になるが、恵がしっかりと説明をしてくれ、理解をしてくれた。
後は、信二さんと河藤さんだ。
ところで・・・
さっき幸子さんが言ってた、キツネってなんなのだろう??
僕は、思い切って恵に聞いてみる事にした。
「恵・・・キツネってなんのこと??」
恵は、一瞬険しい顔をしたかと思うとすぐににこっと笑い、
「簡単にいえば部外者って事よ・・・。」
・・・。
・・・。
うーん。
何か腑に落ちない・・・。
キツネっていうのが、部外者なら、さっきの幸子さんが言った、一般人っていうのと
同意義で使われそうな感じもする。
それなら、普通に一般人て言うのでもいいのではないだろうか。
それをわざわざ言いかえるという事は、他に何か意味がありそうな感じもするが・・・。
とは言え、それ以上は、恵は答えてくれそうにもない。
僕は、それ以上聞く事もなく、なんとなく、こぼれたコーヒーの方を見た。
結構な量がこぼれてしまった。
その時、信二さんと河藤さんが帰ってきた。
近藤さんの時と同じく、一瞬怪訝な顔をしたが、恵が事情を説明し
納得してもらった。
「それは、大変な事に巻き込まれたね。」
信二さんが言った。
「これで全員そろったわね。とにかくさっきの行動結果を報告しない?」
近藤さんが、椅子に腰かけながら言った。
「そうだな。」
白井さんが同意した。
そこからみんなが中央の事務机に集まり、白井さんが、山荘の図面を出した。
山荘は、お城のような外観をしているが、中は以外とシンプルな作りになっている。
まず、初めて山荘に来たとき僕たちが入ってきた玄関ともいえる扉だがそれはちょうど山荘の一階の真ん中にある。中に入るとその扉から、右に20m、左に20mほど廊下があり、左右の廊下の突き当たりに階段がある。また山荘への入り口の扉の上は吹き抜けで二階までが見渡せるようになっている。そして扉を背にして左手にぼくが調べようとしたナイトの鎧があり、廊下をはさんで向こう側にまた扉がある。
その扉の中が、今僕たちがいるちょうど真上、つまり食堂になる。
その食堂の奥に扉がもうひとつあり、そこから中に入ると、小さな厨房がある。今までの食事はそこで作られている。入り口に戻って廊下をナイトの鎧と反対方向に歩くと、ちょうど食堂の横になる場所だと思うが、そこにはまた扉があり、中は、白井さんたちの部屋だ。
部屋の作りは入った事がないのでどうなっているかはわからない。
その白井さんたちの部屋の横の部屋が、浜田家の書斎になっている。
この部屋も僕は入った事がないので、どうなっているかはわからない。だが少しこの山荘の部屋の中では、広いような気がする。
その横は、トイレになっている。次にナイトの鎧が置いてある側の方向は食堂の横が、信二さんの部屋でその横が、加賀美さんの部屋、近藤さんの部屋、村木さんの部屋だ。そして階段から上に上がれば、廊下がずっと部屋の前を伸びており、そこに似たような部屋が6つある。多少、大きさに違いはあるが、部屋の作りはほぼ同じである。
端から、OL3人衆の部屋で、その横が河藤さんの部屋だ。その横が、黒木さんで、僕の部屋が並び、その横は、恵の部屋だ。そして最後の部屋が眼鏡3人衆の部屋だ。
こう見てみると角部屋は、他の部屋に比べ若干広いみたいだだから多分人数が多いグループを端の部屋にしているのだろう。
一通り、図面を僕は見た後で近藤さんの方を見た。
近藤さんが口を開く。
「さあ、報告をはじめましょうか。」
そう言って近藤さんは図面を見た。