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白狼  作者: kazuyaX
13/21

第13話 地下室にて(白狼)

「はくろう・・・????」


僕は思わず聞き返していた。

そうその言葉には、聞き覚えがあったからだ。

今日のお昼に黒川さんが話していた多分人だろうと思われる言葉だ。


「そう・・・当時、私たちは、スパイ摘発に力を注ぎ、もうあと一歩で日本でのスパイ活動を無くすところまで来ていた。そのとき、私たちに最後の大物を捕獲する任務が課せられた。私たちは今までの任務が上手くいっていたのもあって、今回の任務も簡単に終わるんじゃないかって、みんな思って任務についていた。


当時、中国の外交官…


名前はAとしとこうかしら、そのAは、表向きは親日家で有名だったけど、実は裏では日本の兵器を作る技術を盗むために、中国から送られてきていたの。


私たち情報部は、その情報をいち早く察知し、Aを捕獲する作戦を遂行しようとした。

Aの居所をつかみ、作戦が練り終わり、後は作戦を実行にうつす日を待つだけになった。


そして、作戦を実行する日になった。

私達の作戦は初めに情報伝達係と連絡を取り、作戦を開始する手筈だったんだけど、なぜか情報伝達係と連絡を取ることが出来なかった。

でももうすでに引き返すことが出来なかった私たちは無理やり作戦を実行した。」

そこで、恵は一息おいた。

コーヒーカップからは静かに湯気がたちのぼっている。

僕は、信じられない話しを聞かされ、何も声を発する事ができなかった。

村木さんは無言で、腕を組みながら、少し難しい顔をし、恵の話しを聞いている。

そして、恵は静かに、淡々と口を開いた。

「しかし、Aは全て知っていたの。

Aは、私たちが作戦配置に着こうとしたその時を狙って、攻撃を仕掛けてきた。

私たちは、不意をつかれたのもあって体勢を立て直す間もなく、完全にやられた。

その結果はもう惨憺たるものだった。

私達の作戦に従事していた仲間のほとんどが殺され、完全に作戦は崩壊していた。


命からがらなんとか退却できた私たちは、この作戦がなぜAが知ることが出来たのか。なぜ失敗に終わったかを徹底的に調査をした。

そして、


登場したのが白狼だった…


白狼は、当時、大きな作戦や、戦争では必ずと言っていいほど名前が上がっていたスパイで、出身はおろか見たものさえもいないと言われているの。

その暗躍ぶりや神出鬼没さは、他のスパイとは一線を画し、もはや伝説となりつつあるスパイなの。


それを、知った私達は、激しい怒りを感じるとともに、白狼の行方を全力で追った。

最高の技術を誇る日本と、海外の協力を借りやっと白狼の情報をつかんだ。」

そこで、恵は、コーヒーを一口飲み、

ぼくの目をまっすぐ見つめ言った。


「それが今日ここで日本に関わる重要な取り引きをするという情報だったの。


そして私達、あの作戦で生き残った者が集められ、再び任務が課せられた。

それが…


白狼を捕らえること…


で、みんなここにいるわけ。」


ぼくは、話しを理解しているのかいないのか自分でもわからないまま

「じゃあ、ここにいる人みんながその作戦に関わった人ってこと??」

と言った。


恵は、飲み込みが早いじゃないと言いたげな顔をしながら大きくうなづき

「そう」

と言った。


「でも、この山荘に来た人で仲間は、後から遅れてきた、村木さん達と私の親戚としてここに入っていた白井さん一家だけで、それ以外は、どこかの国のスパイか。もしくは一般人なの。


今分かっている情報では、黒川夫妻は、イスラム圏のスパイって事と、峰塚達は欧州圏のスパイっていう事実。メガネくんたちは今のところ目立った行動もなくて、一般人じゃないかなって思ってる。」


そういうことか

僕はこの恵の言葉で昼の黒川さんの会話の意味がわかった。


つまり、黒川さんもスパイで、どこかからか白狼の情報を掴み、今日ここに来たんだ。

そして、もうひとつ恵達とは違う国のスパイで、仲間ではないと言うこと。

それが意味しているのは…


現在のところ、良い言い方をすれば競争相手。

悪い言い方をすれば、



と言うことだ


僕自身、自分の考えに寒気を覚えた。

だがまだまだわからないことはたくさんある。


恵は話を続けた。

「今日の作戦は、私達が浜田財閥のミステリーツアーという名目で毎年行われているこのツアーを国から今年だけ買取り、この山荘で捕獲しようとする作戦なの。


だから至るところに、カメラを仕掛けて、逃げられないように、橋を通れなくし、外との通信を立つため、妨害電波を発信した。」


そうか。

携帯の電波がつながらなくなったのは

そのせいだったのか。


「コータが、ナイトの頭に興味を示して、ナイトの頭を取ろうとしたでしょ。

実は、あの中にも、高性能カメラが仕掛けてあったの。

だからコータが、頭をとろうとしたときあわてて、白井さんが止めに入ったの。」


あのときかいてた汗は慌てたためにでてた汗だったのか。



ぼくは徐々に明らかになる違和感の正体にとまどいを覚えるとともに少しスッキリした気分になっていた。


少しずつ脳が今の状況を理解していると言うことだろうか。


恵は再び口を開く。

「でも、ついさっきなぜかカメラからの信号が全部切れてしまった。

そして、あなたの部屋に峰塚が入ってちょっとしてから電気も切れてしまった。」


そっかあ

やっぱり恵も玲夏さんが部屋に来たこと知ってたんだ。

そりゃあ知ってるよね、だってスパイだもん…


はあ…



僕の恋も


おわったなあ


あっけなかったなあ


「何寂しそうな顔してんのよ!!」

恵が怪訝な顔をして言った。


僕はあわてて顔を変え、恵の話しを何事もなかったかのように聞く姿勢をとった。


「まあ停電と言ってもここは自家発電もしてるから、外からの電気が遮断されても、すぐに電気系統を自家発電に切り換えて、復旧するんだけどね。」

恵は、そういった後、とっさにドアを見た。

するとしばらくして地下室のドアが音もなく開いた。


僕は、とっさにドアの方を見る。


そこに、立っていたのは、幸子さんだった。
















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