俺たちの町
最初は、暗い水の中に沈んでいるような気がした。
まるで体じゅうに重石を乗せられているように、腕も、脚も、動かすことができない。
息はできるので、目を閉じたまま、じっとしていた。
どこか遠いところから、何か聞こえてくる。
それが自分に呼びかけ続けている声なのだと、しばらく経ってから、ふと気付いた。
声だけではない。
規則正しい振動。
揺れているのは、自分の体だ。
誰かが、自分の体を――肩を掴み、揺さぶっている――
「――い! あんた! おいって!」
「なあ、もう行こうぜ、死んでるよ。戻って報告しようぜ」
「いや、生きてる、体があったけえ。……おい! あんた! おい!」
深い水の底から水面に引き上げられるようにして、カルキノスは、ゆっくりと目を開いた。
「おお」
しょぼつく視界に飛び込んできたのは、木々の梢を背景にこちらを覗きこんでくる、ふたつの顔だった。
どちらも、まだ子供――戦列に加わることを許されないような歳の少年だ。
カルキノスに声をかけ、揺さぶっていたのは、小柄なほうの少年だった。
もう一人は、相棒よりも、だいぶ体が大きい。
だが、歳は似たようなものであるらしかった。
「大丈夫かい、あんた! すっげえ、やられてるじゃん」
カルキノスは、黙ったまま、少年たちの顔を見返していた。
状況が、よく分からない。
(俺は……どうしていたんだった? ここは、どこだ?)
スパルタを出発し、タユゲトスを越える峠道を歩いて、メッセニアに入った。
メッセニアの土地は、大掘割の勝利以来、スパルタの支配下にあるということになっている。
カルキノスが逃亡奴隷に化けてヘイラ山に潜入するという話は、ピュラキダスが抱える斥候たちによって、この辺りに派遣されているスパルタ人たちにも伝えられているはずだった。
だが、行き違いや伝達の漏れで、情報が伝わり切っていない可能性も考えられる。
奴隷たちは、主人の家や土地に縛られた存在だ。一人でふらふらと遠出をしているなどということはあり得ない。
こうして歩いているところを見つかり、本当の逃亡奴隷だと思われたら、無駄にスパルタに送り返される破目になるかもしれない。
いや、この緊張した情勢下では、問答無用で殺されてしまうかもしれない。
だから、隠れながら進んだ。
昼夜を問わず、物陰にうずくまって眠り、茂みにじっと身をひそめ、機会をうかがっては、進めるときに少しずつ進んだ。
スパルタの男たちの夜目の利くこと、夜にも行動する訓練のあることはよく知っていたから、最初は気が気でなかった。
遠くから響く梟の鳴き声に肩を跳ねさせ、小さな獣が駆け抜けて揺れた枝葉の音に飛び上がった。
だが、ヘイラ山が徐々に近づいてくるにつれて、慣れてきたのか、疲労で神経が鈍ってきたのか、これは大丈夫だと感じるようになった。
ここまで来ると、夜にも昼にも、スパルタ人たちの姿は見なかった。
(彼らは、恐れているんだ)
アリストメネス率いるメッセニア人たちの襲撃を恐れて、スパルタ人たちが積極的な行動を控えている。
スパルタの支配が及んでいない現状を、初めて自分の目で見て、衝撃を受けた。
ヘイラ山にさらに近づくと、放置され、荒れた土地が広がりはじめた。
かつて、カルキノス自身の提案によって放棄された耕作地。
農作物を育ててもメッセニア人たちに略奪され、彼らの胃袋を満たすことにしかならないと判断してのことだった。
今、肥沃だった広大な耕作地は、生い茂る雑草と枯草に覆い尽くされている。
ここで再び麦を育てることができるようになるまでには、莫大な時間と労力とがかかるだろう。
(でも……いつか、その日は来る。そのために、俺たちは……)
荒れ果てた耕作地に生い茂る植物のあいだに身をひそめ、時には蟹のように這いながら、カルキノスは進んだ。
そして――
昨夜遅くに、ヘイラ山のふもとにたどり着き、斜面を少しだけ登ったところで、力尽きた。
(……そうだ)
やっと、記憶が繋がった。
もう一歩も進めないと感じた暗闇の中で、手近の茂みの中にもぐりこみ、丸くなって――
「あんた、大丈夫か? しゃべれるか? どこから来た?」
「ヘイラでは、見たことのない顔だ」
小柄な少年が嵐のようにまくし立てる後ろから、大柄な少年が、重々しく言う。
「脱走だな。どこから逃げてきた?」
「……ラコニアの、テラプネ」
カルキノスが呟くように答えると、少年たちは目を見合わせた。
「ラコニア……スパルタ人どもの本拠地じゃん!」
「タユゲトスのお山の向こうだ。よく、命があったな」
「その鼻! ひでえ目に遭ったんだな。体じゅう、ぼこぼこじゃんか。連中にやられたのか?」
言われて、カルキノスは表情を歪め、両手で顔を覆って体を丸めた。
ここまで、ひたすら痛みに耐えて歩きながら、何度も何度も、心の中で演技の稽古をしてきた。
何を言われたときに、どうふるまうか。何を問われたときに、どう答えるか。
カルキノスの演技をすっかり信じ込み、少年たちは慌てはじめた。
「いや、悪かったよ、安心しろって。ここはもう、ヘイラのお山の中だからよ!」
「スパルタの連中も、ここまでは手出しができねえ。あんた、助かったんだぜ」
「ありがとう……俺、は……?」
「そこの茂みの陰に、ぶっ倒れてたんだよ」
戸惑ったように漠然と周囲を手で示してみせたカルキノスに、小柄な少年が答える。
「葉っぱの下から、二本の脚だけ、にょっきり出ててな。俺、飛び上がっちまったぜ!」
「そうか……君たちは、いったい……」
「あんたと同じさ。俺たち、自由になるために、ここに来たんだ」
「ここまで来たら、もう大丈夫だぜ。このお山の上には、俺たちの町がある。アリストメネス将軍が、守ってくださる」
(アリストメネス)
その名に、表情が動きそうになるのを、つとめて押し殺す。
「じゃあ……やっぱり、噂は、本当だったんだな? アリストメネス将軍が、帰っていらっしゃったという噂は……」
「ああ、そうさ!」
少年たちは目を見交わし、嬉しげに頷き合った。
「俺たちは、将軍のために働いてんだ。まあ、下っ端だけどよ」
「大人は、将軍と一緒に戦いに出る。俺たちの仕事は、お山の見回りだ」
「あんた、俺たちに見つけられて、運がよかったぜ! このままぶっ倒れてたら、そのまま死んでたかもしれねえし、獣に齧られてたかもしれねえ」
「今から、お山の上に連れていってやるよ。立てるか?」
「お山の……上?」
「そうさ。俺たちの町だ。さあ、立って……」
二人の少年に両脇を支えられ、カルキノスはよろよろと山道を登っていった。
二人の少年の名は、それぞれミノンとドリダスといった。
二人の背丈がかなり違うために、支えられるほうとしてはだいぶ歩きづらかったが、それでもありがたかった。
自分一人では、とてもこの速さで山道を登ることはできなかっただろう。
何度も休憩をはさみながら、曲がりくねった道を登ってゆく。
険しい岩場のような場所では、身の軽そうなミノンが先に上がって、「もっと右に寄れ」「左の石は動くから掴むなよ」などと指示を出し、ドリダスが後ろから黙って押し上げてくれた。
(今、どのあたりだろう……)
出発前にピュラキダスが見せてくれたヘイラ山の地図を、カルキノスは思い起こそうとした。
丹念に描き込まれたその地図を、できる限り頭に叩き込んできたつもりだったが、こうして実際に山道を歩いていると、自分が通っているのがどの道なのか、そもそも地図に存在していた道なのか、まったく確信を持つことができなかった。
「なあ、その、鼻」
何度目かになる急登の後で、ミノンが話しかけてきた。
だいぶ息が上がっているが、音を上げる様子はない。
「スパルタ野郎に、やられたのかい?」
カルキノスは、暗い顔をした。
それは、恐ろしい記憶がよみがえった人間としての演技であり、同時に、カルキノス自身の心情のあらわれでもあった。
この少年たちは、一面識もなかった自分を助けようと、わざわざこんな苦労までしてくれているのだ。
自分がしようとしていることは、彼らを騙し、陥れようとすることに他ならない。
――いや、今は、こんなことを考えている場合ではない。
(役目を果たすことだけに集中するんだ……後で、歳の若い者たちはできるかぎり殺さないように、スパルタの男たちに頼めばいい……)
「ああ」
カルキノスは、擦れた声で答えた。
「一度目に、逃げ出そうとしたとき、失敗した。見つかって、捕まった。それで……」
「ひでえや。鼻を削ぐなんて、野蛮人のすることじゃねえか。かわいそうに!」
「その痣も……殴られたんだろ。よく死ななかったな」
「ああ……」
「もう少しだぜ。がんばって――」
「止まれ!」
急に、鋭い男の声が響き、横手の茂みががさりと鳴った。
(よく、見えない!)
カルキノスは、頭巾をかぶった顔を必死に上げて状況を確認しようとした。
相手の方が高い位置にいるために、頭巾のふちが邪魔になっているのだ。
茂みの中から立ち上がっているのは、数人の男たちらしい。
全員が、弓矢か、投石器を手にしている。
剣をさげている者もいるようだ。
「ミノンと、ドリダスだな」
「はい!」
「そっちの男……男だな? 何者だ?」
「生き倒れです。下の茂みで見つけました!」
「ラコニアから来た逃亡奴隷だそうです。上に連れていくところでした」
「ラコニアから? ……どんな奴だ、顔を見せてみろ」
どくん、とカルキノスの心臓が跳ね上がった。
今喋っている男は、俺のことを知っているだろうか。
俺の顔を、見たことがあるだろうか。
知っていたとして、この顔を見ても、俺のことを見抜くだろうか――
「どうした、顔を見せろ。……見せられないのか?」
男たちが、つがえた矢を引き、投石器を持ち上げるのが分かった。
カルキノスはミノンの肩にかけていた右手をのろのろと上げて、頭巾をずらした。
男たちの険しい表情が、はっとしたように変わるのが見えた。
「……なるほど。スパルタ人にやられたか」
気勢を殺がれたように呟いた男に、カルキノスは黙って頷き、頭巾をもとに戻した。
「いいだろう、行け。よく来たな。ここまで来れば、もう安心だぞ」
「将軍が守ってくださるからな!」
「ミノン、ドリダス」
年嵩の男の一人が言った。
「上に着いたら、まずは、どこへ行くか分かってるな」
「はい!」
(『どこへ行くか』だって?)
そこはかとなく不安を煽る言い回しに、カルキノスは眉をひそめた。
だが、彼の両脇を支えて再び進みはじめた二人の少年たちの表情には、カルキノスを陥れようとしているような陰は微塵も見られない。
「あの」
思い切って、直接尋ねてみることにする。
「さっき、上に着いたら、どこかへ行けって……」
「ああ」
ミノンが、軽い調子で答えてきた。
「ライオスさんのとこへ行くんだ」
「ライオス……?」
「まあ、壁の外側の顔役、ってところだな」
「壁の……外側?」
「怒らせたら、めちゃくちゃやばい人だ」
何か思い出すことでもあったのか、ドリダスが、神妙な顔で言う。
「その……ライオスさんも、スパルタから、逃げてきた人なのかい?」
「ああ、いや、違う。そうだよな、ドリダス? ライオスさんは、メッセニアの出身だ。どこだったか、海の近くの……なあ?」
「そうだ。それから、あちこち旅をなさってたらしい」
「旅を?」
「この戦争が始まる前からスパルタ人と戦い続けてきた、筋金入りの人なんだ。
とにかく、めちゃくちゃ腕っ節が強くてよ! ちょっと前なんか、喧嘩があってよ、仲裁するのに、どっちも興奮しちまって言うこと聞かねえもんだから、ライオスさんが腕にものを言わせたんだが、二人とも、一発で伸びちまったね」
「丁寧に挨拶するんだぞ。ライオスさんを怒らせたら、鼻どころか、肩の上から首がすっ飛ぶことになりかねねえ。……ほら」
ドリダスが視線を上げて促し、カルキノスも顔を上げて、それを見た。
「ヘイラ。……俺たちの町だ」
木々の梢のあいだから、自然石を積んで組み上げた防壁が姿をあらわしている。
(嘘だろ)
確かに、ピュラキダスの地図にも「防壁」は描かれていた。
だが、簡単な柵程度のものだろうと思っていたのだ。
ミノンたちが言う通り、これは確かに、もはや町だ。
首尾よくたどり着いたという喜び、達成感以上に、戸惑いと危機感が湧き上がった。
(思った以上に、厄介なことになっている……)
ちらちらと見える防壁から、目を離すことができなかった。
ミノンたちも、カルキノスの様子に気付いたようだったが、その表情を驚異または感嘆と受け止めたようで、自分たちが誉められたかのように、へへと笑った。
そのうち、カルキノスは、ふと先ほど言われた言葉を思い出した。
「じゃあ……あれが『壁』なんだね? 『壁の外側』っていうのは、どういう意味だい?」
「うん、まあ、狭いからな、壁の内側は」
ミノンが、呼吸をととのえながら言った。
痩せた肩の動きから、それが伝わってくる。
「後から来た組……まあ、俺たちみたいな奴らは、防壁の外側に住みかをこしらえて、寝泊まりしてるんだ。ライオスさんは、その『壁の外側』のまとめ役さ」
「壁の内側には、アリストメネス将軍とか、このヘイラの町の建設のはじめからいた人たちが住んでる。……でも、いざという時には、俺たちも中に入れてもらえるんだ」
「いざという時、っていうのは……」
スパルタ人たちによる攻撃があったとき、ということか。
「いや、心配はいらねえ! 俺たちみたいな見張り組が、山ん中をうろうろしてるし、大人の物見役だって、いつも見張ってるんだ。スパルタ人どもが来やがっても、ここまで上がってくる前にぶっ殺せるよ」
ミノンが、明るい声で言った。
自分たちと同じ逃亡奴隷のカルキノスが不安がっていると思い、励まそうとしているのだ。
(ごめんよ)
自分たちの未来は明るいと、戦ってそれを勝ち取ることができると、信じ込んでいるようなミノンの眼差しが気の毒だった。
自分は、それを叩き潰すために、ここに来たのだ――
「よっ、おじい! 生きてる?」
「生きとるわい!」
防壁に近づくにつれて、いくつもの天幕が見えてきた。
小屋とも呼べない、木々の幹のあいだに紐を張って布をかぶせただけの簡易なものだ。
「パオンのおっちゃん、元気か」
「まあな。そいつは誰だ?」
「新入りだよ。今からライオスさんのとこに行くんだ」
「そうか、ご苦労さん」
誰かが表に顔を出していると、ミノンとドリダスは必ず名を呼んで声をかけ、相手も応える。
(住人の識別が、徹底している……)
間諜対策ということか。
これでは、見知らぬ者が一人で行動することは難しい。
大勢の逃亡奴隷たちが寄せ集めの所帯で暮らしているのならば、顔見知りでないものがうろついていても咎められることはないだろうと思っていたのだが、そうはいかないようだ。
さらに防壁に近づくにつれて、はじめはまばらだった天幕がどんどん密集し、ごたごたした迷路のような有様になってきた。
木材を使って屋根や壁をこしらえた小屋のような建物もある。
乳飲み子を抱えて戸口に座りこむ女、走り抜けていく少年たち。眠っている男。
ミノンとドリダスは次々と相手に声をかけ、続々と返事がくる。
どうやら、単にすすんで顔見知りに挨拶をしているというわけではなく、見回り組は、出会う者すべてに声をかけるのが決まりになっているらしい。
(これは……とにかく『ライオスさん』という男に会わずには、済ませることはできないみたいだな……)
だが、このまますぐに会いに行くのは、少し不安だった。
ミノンたちはうまく騙すことができたが、そのライオスという男は、百戦錬磨の戦士らしい。
相手がどう出てきたときに、どういう受け答えをするか、頭の中で整理しておきたかった。
「ありがとう、もう、ここまでで大丈夫だ」
「はあ?」
急に何を言い出したんだ、という顔で、ミノンがカルキノスを見た。
「なんで。あんた、ライオスさんの家、知らねえだろ?」
「ライオスさんの家には、明日、行くことにするよ。
俺はもう、くたくたなんだ。少し休みたい。どこでもいいから、横になって眠るよ。
ライオスさんの家は、聞けば、誰でも教えてくれるだろう……」
「駄目だってば!」
ミノンが叫び、ふらふら去ろうとするカルキノスを押し留めようとした。
だが、そうするまでもなく、ドリダスの手ががっちりとカルキノスを腕を掴んでいて、離さなかった。
「ちゃんと、あんたを連れて行かねえと、俺たちが大人たちにぶっ殺される。掟なんだ。言うことを聞いてくれ」
「そうだぜ! あんただって、今日からここで暮らすなら、掟は守らなきゃいけねえ。
きちんと届け出をしておかねえと、おめえ誰なんだってことになって、厄介だぜ。
スパルタの野郎どもが入りこもうとしやがることがあるから、しょっちゅう見回りがあるんだ。俺たちならいいが、知らない見回り組が来たら、あんた、しょっぴかれるぜ」
「見回り……」
思わず呟いてから、逃亡奴隷が気にするところはそこではないと気付き、言い直す。
「スパルタ人が、ここまで来ることが、あるのか?」
「大丈夫だ」
ミノンの答えには、確固たる響きがあった。
「前に、何度かあったけどな。全員、捕まえてやった。みんなで石打ちにして殺した」
「死体は崖から捨てて、鳥に喰わせた」
「……そうか」
それは良かった、と言おうとして、その声が喉から先へ出なかった。
ピュラキダスの部下たちだ。
彼らの名前は何だったのだろう。妻は、子供たちはいたのだろうか。
前に、会ったことがあっただろうか。話したことはあっただろうか。
(だめだ)
こんなことで心を乱されているようではだめだ。
自分は、逃亡奴隷だ。
こき使われ、虐待され、脱走に失敗して鼻を削がれ、棒で散々に打ち据えられた。
スパルタ人を恐れ、憎んでいる逃亡奴隷――
「そこだよ」
不意にミノンが言い、指をさした。
防壁の真下に建てられた、少し大きめの小屋だ。
戸口には、薄汚れた鹿の皮がかかっている。
大きさと、鹿の皮を除けば、他の小屋と比べて大して立派なつくりであるようには見えなかった。
「見回り組の、ミノンとドリダスです! ライオスさん、いますか?」
「おう! 入りな!」
張りのある、ほとんど陽気なと言ってもいいような男の声が中から聞こえた。
ミノンが目配せを残して、先に入る。
カルキノスはドリダスに支えられて、狭い戸口をくぐった。




