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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第一章 黎明
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聖域の森 13

「待ってよアルフィン!」


「ごめん」


 流石のシルフィーもアルフィンの速度に舌を巻く。その速さは尋常ではなく、如何に十四郎を心配してるとは言え、驚嘆に値した。あっという間に隠れ家の入り口に到達し、二人? は息を潜め、物陰に隠れた。


「様子がおかしい」


「何か感じる?」


 そこは社会生活の先輩であるシルフィーが先に気付く、アルフィンの頭には十四郎の事しかなくて、異変に気付くのが遅れた。


「人の気配は減ってるけど、凄い殺気が十四郎の……」


 シルフィーが言い掛けた途端、アルフィンは猛ダッシュで入口に向かう。


「待つんじゃなかったの?!」


 慌ててシルフィーも後を追った。悪い予感は当たるもの、シルフィーは胸の痛みを抑え思い切り走った。


_______________________



 瞬間、十四郎に迫るエルゴが見えた。弓を引くココは、抑え付ける二人の男が邪魔でエルゴに狙いを定められない。焦る腕を震えと汗が襲い、照準る目を曇らせた。しかし、その刹那一瞬目を切ると、視界の隅にリルの姿を見付けた。声が出る前に、リルは矢を放った。


 矢はエルゴの腕に命中し、一瞬怯む。立て続けに十四郎に覆い被さる二人を射るが、脚や腕に命中するも、狂気の表情の男達は押さえ付ける事を止めない。


 腕から抜いた矢を地面に叩き付けると、エルゴは物凄い形相で改めて剣を振り上げた。動きたくても二人掛かりの力は物凄く、十四郎は身動きが出来ない。


 その時、雄叫びと共にホールにアルフィンが突入して来た。一直線に飛び十四郎に迫るエルゴを体当たり吹き飛ばし、前足で押さえ付ける男を強引に剥がす。怯んだ男に強烈な後ろ足キックをお見舞いし、残る男は解放された十四郎が、膝蹴りで倒した。


「アルフィン殿、ありがとう」


 怒られると小さくなったアルフィンに、思い掛けない十四郎の笑顔と言葉は、驚きと喜びを混ぜ合わせた。


「全く、無茶なんだから」


 少し遅れて到着したシルフィーは、ビアンカの後ろの男を蹴飛ばしながら溜息を付いた。


「アルフィン……シルフィーまで」


 振り向いたビアンカが唖然と呟き、ローボが直ぐに叫んだ。


「十四郎! 親玉はまだ倒れてないぞ!」


 剣を杖に起き上がったエルゴが、十四郎を睨んでいた。


「それではアルフィン殿、下がって下さい」


 十四郎はアルフィン下がらせると、拾った刀を構え直す。ビアンカは周囲の男達を蹴倒しながら、その戦いを横目で見た。


_________________________



 睨むエルゴの目が血の様に赤く見えた。それは強膜が極度に充血していたからで、口元もだらしなく開き、よだれを垂らしている。


 それだけではない、アルフィンに強烈なキックを受けた男も十四郎に倒されたはずの男も、エルゴと同じ表情でフラフラと十四郎に向かった。


 剣を振り上げ、十四郎に切り掛かるエルゴの動きは速度を増していた。その剣を受けとめる十四郎の両腕に激しい圧力が掛かる。まるで大木で殴り付けたかの様な力と、恐ろしい程の闘気は見ている者を威圧した。


「おかしな臭いがする……まるで……」


「あの目……まさか……」


 ローボやココは異変に気付いた。


「ココ! あいつ等何なの!」


 粗方敵を倒すとビアンカは叫び、ココは確信した。


「マカラかもしれません」


「何だそれは?!」


「禁忌の薬です。マカラルの根から取れ、飲むと痛みや恐怖が無くなる」


 聞いた事があった。飲んだ者を悪魔に変える禁断の薬、圧倒的力を手に入れる代わりに破滅をもたらす”絶対死”と言われる魔薬……。


 ローボは嫌な臭いの原因を悟った。確かにマカラルの臭いだった、だがマカラルは聖域の森でもローボ達の住処近くにしか生息せず、幻の魔薬として存在する量などゼロに等しい。


「十四郎! 気を付けて! そいつ等、薬で狂暴化してる!」


「その様ですね、ビアンカ殿もお気を付けて」


 一度距離を取った十四郎は、エルゴや二人の男の様子は確かに変だと気付いた。しかし、十四郎は自分の事よりビアンカの事を心配していた。


「全く……」


 呟くビアンカの背後に男が迫る。振り向き様に剣を一閃すると男の持つ槍が宙を舞う、次の動作はやや身を屈め足元を払い、倒れた所に落ちて来た槍を掴むと男の腹を石突で突いて気絶させた。


「ほう」


 流れる様なビアンカの動作に感心したローボがニヤリと笑う。ココもやや中腰で矢を射続け、その命中率にもローボは笑った。ただ、リルだけは依然として防御など御構い無しに矢を放ち続け、そこだけはローボも顔をしかめた。


「アルフィン! 前に出すぎ!」


 シルフィーはアルフィンを庇いながら戦う、二人? の息はピッタリで、相互が協力しつつ敵を倒していた。


「さて、こちらも」


 周囲を確認し、味方の奮闘を見た十四郎は改めてエルゴ達三人と対峙した。


 状況を傍観していた七子は口元に薄絵笑みを浮かべると、急に表情を変え十四郎を睨み付け呟いた。


「相手は悪魔に身を売った亡者達だ……鬼斬りに相応しい相手だろ?」


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