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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第一章 黎明
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聖域の森 6

「森の境界線上、西側の山の麓に隠れ家がある。そこに白い狼を捉えている」


「白い狼?」


 盗賊の言葉に十四郎は首を傾げた。


「名はブランカ、私の一番大切な者だ」


 ローボの声には、悲しさと悔しさが混じっていた。十四郎が場所を告げるとローボはルー達に出発を促した。


「お願いがあります。二人が薬草のある場所に行くのを許して下さい。彼らも大切な人の為にここまで来ました、薬草さえ手に入れれば直ぐに森を出ます」


 頭を下げる十四郎の姿に、暫く考えるとローボは頷いた。


「分かった」


 直ぐに十四郎はココに告げる。


「ローボ殿の許可が出ました、二人で薬草を取りに行って下さい。場所は分かりますね?」


「分かるが……あなたは、盗賊の隠れ家に行くのですか?」


「約束ですから」


 笑みを浮かべる十四郎に一礼すると、ココはリルの手を引き森の奥へと向かった。その背中を見送り、十四郎はローボに向き直った。


「我々も行きましょうか」


「十四郎、乗って下さい」


 促され、アルフィンに乗った十四郎は戸惑い座り込む盗賊に言った。


「他の者も起こして、この場を去って下さい。隠れ家は今から行きますから、他の安全な場所に」


 黙って頷いた盗賊は、他の者を起こしに掛かった。


「出発だ」


 ローボを先頭に、十四郎達は移動を開始した。


________________________



 ビアンカは焦っていた。手掛かりらしきモノの欠片さえ見つからず、泣きたい気分は全開だった。街中を歩き回り、脚は棒になり喉はガラガラになっていた。


 街の中心、噴水の縁に座ったビアンカは疲れ果てていた。


「何してるの?」


 その声に顔を上げると、目の前に腕組みしたリズが立っていた。


「リズ……か」


 大きな溜息を付くビアンカに、呆れ顔のリズは言った。


「まさか、考えも無しに聞きまくってただけ?」


「考えたよっ!」


 顔を赤くして叫ぶビアンカが可愛くて、リズは少し意地悪く微笑んだ。


「そうは見えないけどなぁ」


「なら、リズには考えがあるって言うの?!」


 立ち上がったビアンカは、リズに顔を押し付けた。


「聞きたい?」


「聞きたい!」


「どう、しょうかなぁ」


 背中を向けたリズは、また焦らす様に言った。


「お願いリズ……」


 直ぐに前に回り、ビアンカは泣きそうな顔で懇願した。赤く染まる頬、下がる眉毛、ウルウルの瞳……魔法に掛かって、ビアンカは本当のビアンカに戻ったんだ。そう考えると、なんだかリズは嬉しくなった。


「猫、いたでしょ……何時も十四郎様と一緒だったから、きっと行先を知ってるよ」


「でも……猫の言葉……分からない」


 俯くビアンカの頭をそっと撫ぜたリズが、優しく言った。


「もう、シルフィーに聞いて貰って……」


 途中まで聞くだけで、ビアンカの脳裏に電球? 蝋燭? が点灯した。シルフィーに飛び乗ったビアンカは、物凄い速度で駆けて行った。残されたリズは、苦笑いで呟いた。


「全く……最後まで聞きなさいよ」


__________________________



「お願いシルフィー、猫に十四郎の行き場所を聞いて」


 走りながらシルフィーに頼む、シルフィーにビアンカの思いは伝わる。ブルブルと鼻を鳴らして答えるシルフィーの思いも、ビアンカに伝わった。 


 爆煙と共にケイトの家に着いたビアンカは、大声で叫んだ。


「猫、いますか?!」


「アミラなら、そこに」


 唖然とするケイトが、窓際を指さす。飛んで行ったビアンカは、物凄い勢いで聞いた。


「十四郎は何処に行ったの、知ってるんでしょ?!」


「何だよ! 急にどうしたんだよ?」


 アミラにはビアンカの言葉は理解出来るが、答える術は無い。毛を逆立たせ、尻尾を膨らませたアミラは驚く。飛んで来たメグも驚いた顔でビアンカを見た。


「シルフィー!」


 ビアンカが呼ぶと、シルフィーが部屋に入って来た。


「十四郎が何処に行ったか教えて?」


「えっ?」


「お願い教えて! ビアンカが……」


 シルフィーは心からビアンカを心配していた。横目で見たビアンカは今にも泣きそうな顔でアミラを見詰めていた。大きな溜息の後、アミラは仕方なく告げた。


「聖域の森に行った……詳しく知りたいなら、マルコスの所に行けばいい」


「ありがとう」


 礼を言うとビアンカに振り返るシルフィー。ビアンカは直ぐに察知して、シルフィーに駆け寄った。


「分かったの?」


 大きく頷くシルフィーに、ビアンカはビアンカは抱き付いた。


「十四郎、何処に行ったか分かったの?」


 今度はメグがビアンカはの袖を持ち、ウルウルの瞳で見上げた。しゃがんだビアンカは、優しくメグを撫ぜた。


「大丈夫よ、必ず十四郎を連れて帰るから」


「きっとだよ」


 我慢しきれず泣き出すメグを、ビアンカはそっと抱き締めた。そんな様子を微笑んだケイトも優しく見守り、アミラもシルフィーに言った。


「十四郎とアルフィンを頼むよ」


「任せといて下さい」


 シルフィーは明るく答えた。



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