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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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白と黒

 ビアンカとシルフィーを追い越し、風より速く白い影が迫った。


「アルフィン殿っ!!」


 十四郎が叫ぶ! ノヴォトニーの腕剣が四方からアルフィンに目掛けて振り下ろされる。その速度は尋常ではなく、ツヴァイ達には残像しか見えなかった。


 物凄い風圧は周囲を搔き乱すが、アルフィンの姿はノヴォトニーを越えて遥か遠くにあった。


「何だ?……アルフィンが瞬間移動したのか?」


「私には見えなかった……」


 ココとツヴァイは唖然と呟くが、マアヤは呆れた様に言った。


「天馬とは、よく言ったものだ……魔法使いの声と同時に、魔物の剣を寸前で躱しやがった……アタシでさえ、避けられなかったのに」


「アルフィン殿! ツヴァイ殿達の傍へ!」


「分かった!」


 十四郎の声に、アルフィンはツヴァイ達の方に踵を返す。だが、またノヴォトニーの至近を通ろうとした。


「あいつ!!」


 マアヤが叫び、怒りに満ちたノヴォトニーは今度こその渾身の腕剣を振るうが、腕剣が振り下ろされた瞬間! アルフィンは大空に跳んだ!。


 その高さは尋常ではなく、ノヴォトニーも跳ぼうとした瞬間! 十四郎の斜め斬りが炸裂する。二本の腕剣で受けると同時に、残る二本で超速の突きを繰り出すが、十四郎は瞬間に刀を返して横薙ぎで打ち払った。


 間髪入れない次の攻撃はノヴォトニーで、四本の腕剣で四方向から斬りかかる。だが、十四郎は円を描く様な太刀筋で全てを受け流し、そのまま刀を肩に担ぐ! ノヴォトニーは間合いの感覚が麻痺するが、勘で嫌な気配を察すると物凄い速度で距離を取った。


 丁度その時、ビアンカが到着した。素早く、シルフィーを降りると泣きそうな顔で十四郎の顔を見詰めた。


「十四郎、大丈夫?」


「ええ、大丈夫です」


「シルフィー、アルフィンと一緒に……」


 ビアンカが言いかけた時、エリーゼが両腕剣を振りかざして突進して来た。


「待ってたぞ!!」


 叫ぶと同時に最上段からの一撃! ビアンカは揚羽で受け止めた。


「何だ? ハルバートの一種か?」


 エリーゼはビアンカの持つ薙刀を、怪しい笑みで見た。


「ナギナタだ……」


 ビアンカはエリーゼを睨み、低い声で言った。ノヴォトニーは、薄笑みを浮かべるエリーゼを強い視線で見た。


「分かってるだうな」


「ああ、魔法使いには手を出さない。用があるのは、この女騎士だ」


 エリーゼは、両腕の剣をを重ねると、火花を散らした。ビアンカは揚羽を八双に構えると、十四郎に言った。


「こちらは大丈夫、十四郎はそいつに集中して」


「はい」


 十四郎もノヴォトニーに向け、霞の構えを取った。


_________



 十四郎とノヴォトニー、ビアンカとエリーゼが対峙して空気が張り詰める。我慢ならないのはバラッカだっが、場を緊迫させる圧倒的な威圧感が近付いた。


 バラッカは、唸り声を上げると遥か彼方を睨んだ。そこには小さな点があり、やがて視界を結んだ。


「十四郎……」


 バイエカから降りたアウレーリアは、十四郎だけを見詰めた。輝く銀色の髪が風を纏い、鎧の胸に鈍く光る逆さ十字の紋章は、ノヴォトニーとエリーゼを無言で威嚇した。


「来たか、アウレーリア」


 ノヴォトニーが笑い掛けるが、アウレーリアは視線さえ向けなかった。


「アウレーリアはバラッカに……」


 エリーゼの言葉が終わらないうちに、バラッカがアウレーリアに襲い掛かった。その形相は凄まじく、全身の盛り上がった筋肉は人であった事さえ曖昧にしていた。だが、既に人の言葉は失われているが、アウレーリアに対する屈辱と憎しみだけは強く存在していた。


「……」


 迫るバラッカをアウレーリアは、氷の様な深い碧の瞳で一瞬だけ見た。そして、視線はまた十四郎に向けられた。


「ガウァツ!!」


 雄叫びを上げバラッカは襲い掛かるが、アウレーリアは剣さえ抜かなかった。


「アウレーリア殿!」


 十四郎が叫ぶと同時にアウレーリアが、見えない速さで抜剣! バラッカは後方に吹き飛んだ。


 だが、直ぐに起き上がったバラッカは、全身から吹き出す血飛沫を瞬間に止血した。そして、天に向かい雄叫びを上げた。その声は自信に満ち、周囲に響き渡った。


「何だ? どうした?」


「アウレーリアの一撃でも倒せないのか……」


 ココは状況が分からずに、ツヴァイはアウレーリアでさえ倒せない黄金騎士の姿に驚愕した。


「人なら即死だがな……」


 呆れた様にマアヤは呟いた。


「奴らに弱点はあるのか?」


 ツヴァイはマアヤに聞くが、マアヤは首を振る。


「魔物のアタシに聞くかぁ?……まあ、いい。同じ魔族でも弱点は色々だ、首を刎ねたり心臓を刺したり……種類によるな」


「つまり?」


 ココは身を乗り出すが、マアヤは平然と言った。


「わからんって事だ。魔族は瞬時に傷を癒せる……だから、その前に……」


「でも、瞬時に治るんだろ?」


 当然、ココは首を捻った。


「大丈夫だ……十四郎様達は……」


 ツヴァイは十四郎達の背中に、熱い視線を向けた。


__________



「つったく、お前ら平気なのか?」


 肩で息をするバビエカは、平気そうなアルフィンとシルフィーに唖然と聞いた。


「全然平気だよ」


「私は少し息切れ、アルフィンは私達とは違うから」


 アルフィンは平気で言い、シルフィーも平気そうだった。


「まあ、そうだろうな……だが、何だ? あの魔物達は?」


 異様な雰囲気の黄金騎士達を見て、バビエカは背筋が冷たくなった。


「人の怨念と怒り、あらゆる負の感情、そんなドス黒いモノ……それと、魔物の融合体だ」


 遅れて来たローボは吐き捨てるように言った。


「ローボ、十四郎は大丈夫だよね?」


 心配顔のアルフィンに、ローボはキラリと牙を見せた。


「今のところ、迷いは無い様だ」


「ビアンカも大丈夫だよね?」


 シルフィーも心配そうに聞いた。


「ああ、心配ない……それより……」


 ローボはアウレーリアに視線を移した。直ぐに察したバビエカは、溜息交じりに呟いた。


「何か、機嫌悪いんだよな」


「えっ? どこが?」


 全く感情が分からない普通に見えるアウレーリアの姿に、アルフィンは首を傾げた。バビエカは、眉間にシワを寄せて呟くように言った。


「魔法使いがさ……あの女騎士ばかりに構うと……あいつ、キレるかも……」


「そうみたい……」


 シルフィーも察して溜息を付いた。そして、敵をそっち除けで二人で戦う場面が頭を過った。


「あっ、それは有り得るかも」


 納得したアルフィンは、大きく頷いた。


「あの化け物達より心配な事なのか?」


 呆れた様に耳を下げ、ローボは言った。


「だって、ビアンカとアウレーリア、ケンカばかりだもん」


「はぁ……」


 困った様なアルフィンの顔を、大きな溜息で見たローボだった。


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