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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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追憶

 騎士なら、戦いに恐怖を感じる事は無いのか? 下級の騎士なら、斬られれば痛みもあるし死ぬことは怖いはずだ。


 だが頂点に立つ黄金騎士なら、恐怖など無縁だろう……。


「黄金騎士の凄さは分かっていたつもりだった……彼らは自身の強さに裏付けられた絶対の自信ががある」


「どうした? 急に」


 ツヴァイは突然、呪文の様に呟きココは唖然と聞き返した。


「だが、その自信はアウレーリアによって打ち砕かれ、十四郎様に屈辱に変えれらた……アウレーリアと戦えば、生き残るのは”運”でしかない……だが、十四郎様は黄金騎士の全てを否定した……」


「抗えないモノは仕方ないとしても、そりゃ怒るはなぁ……」


 ココはツヴァイの言葉を受け、背中に悪寒を走らせた。


 爆発しそうな怒りが具現化した様な、悍ましいその容姿がノヴォトニーの心情を物語っていた。


「戦いに於いて、相手の命を気遣う……十四郎様の戦いは……それは騎士にとって最大の侮辱……」


 ツヴァイは言葉を失い掛けるが、ココは強い視線で十四郎の背中を見た。


「そんなの最初から分かりきった事だ。俺は付いて行くと決めたんだ」


 ココの強い言葉に、ツヴァイは頬を緩めた。


「……ああ、そうだった……私も、とうに決めたんだった」


_____________



 ノヴォトニーの怒りは、快楽に変わりつつあった。魔物の力を手に入れてさえ尚、十四郎は互角に戦っている。


 どんなに速い打ち込みも、どんなに重い打ち込みも平然と躱し続けている。しかも、速くて重い打ち込みに高度な技を織り交ぜても、十四郎は受け流していた。


 ”普通”の人間なら自分の限界で攻めても、攻めきれないのであれば焦りや不安に包まれるだろう。だが、自分の中に確かに存在する”余裕”は、既に人間を超越した事を感じさせた。


 また、これだけ攻撃を続けても微塵も疲れを感じない事、例え傷を負っても痛みさえ無く、瞬時に回復する事は、絶対の優位であるとノヴォトニーを根底から支えた。


 そして、何より十四郎は本気で戦い……命を奪う剣を、自分に対して振るっている。これ程喜ばしい事があるものか……。


「お前の強さは認めてやろう」


 怪しい笑みは、ノヴォトニーの余裕の現れだった。だが、十四郎は表情を変えず、ノヴォトニーの上段からの剣を受け流すと、後方の跳んだ。


 同時にノヴォトニーは前に跳び、十四郎に襲い掛かるが、十四郎は後ろに跳びながら刀を横薙ぎに一閃した。


 丁度カウンターの様に、跳んだ速度が速すぎた事で、ノヴォトニーに避けきれずに剣を腕が大量の血飛沫と共に切断され、宙を舞った。


「やった!」


「……まだだ」


 ココは声を上げるが、ツヴァイは冷静に事態を見た。


「下がりながら、来るのを待っていたか」


 ノヴォトニーは、腕を拾いながら口角を上げた。そして、斬られた腕を元の場所に付けると、腕は瞬時に繋がった。


 そして、漆黒の闘気を陽炎の様に燻らせ、体全体を震わせるとエリーゼの様に両腕の先が鋭い”剣”になった。だが、ノヴォトニーは、それだけではなかった。大きな雄叫びをあげると、両肩の上部分から、腕が生えて四本腕になった……当然、生えた腕も剣に変わった。


「両手剣でもヤバイのに、四本かよ……」


「そうだな……だが……」


 身震いしながら、ココが呟くがツヴァイは十四郎から目を離さなかった。十四郎は、また霞の構えを取り、真っすぐにノヴォトニーを見詰めていた。


________



 十四郎とノヴォトニーは対峙したまま動かなかった。どう見ても十四郎が不利なのだが、ノヴォトニーは先には動かなかった。


「今度は、四本か……」


 見守るココとツヴァイの傍に、ヨロヨロとマアヤが呟きながら戻って来た。


「お前、大丈夫か?」


「大丈夫に見えるか?」


 ココの問い掛けに、マアヤは脇腹を押さえながら言った。脇腹には血が滲んでおり、魔物の回復も追いついて無い様だった。


「お前、血が……」


 心配顔のツヴァイを見て、マアヤは少し赤面して顔を背けた。


「腕や足なら直ぐに治るが、その、腹の中がぐちゃぐちゃに潰れてるんだ……再生するのに、時間は掛かる」


「治るのか?」


「……ああ、治るから、そんな顔するな」


 心の底から心配している事が、ツヴァイの顔を見て分かったマアヤは言葉を途切れさせた。


「おい、あれ!」


「ビアンカ様!!」


 その時、遠くに白い何かを見つけたココが叫び、直ぐに気付いたツヴァイも叫んだ。


「やっと来たか……さて、そこの小娘を起こして、お前は魔法使いを援護しろ」


 マアヤはココにそう言うと、その場に座り込んだ。


「あっ、おう。起きろ、リル」


 ココがリルを揺り動かすと、リルはそっと目を開けた。


「どうなった?」


「十四郎様や、ビアンカ様が来た。もう、大丈夫だ」


「そうか……」


 リルは頭を振って立ち上がり、魔弓を握りしめた。

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