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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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順番

「追うからっ!」


「待てっ! ガリレウス様が追うなと言ったろ!」


 我慢の限界に達したノィンツェーンが叫ぶと、リルも前に立ちはだかって叫び返した。


「誰が何と言おうと、私はビアンカ様を守るんだっ! お前は平気なのかっ!? ビアンカ様一人に行かせてっ!」


「……平気な訳……無い」


 リルを押し退けてノィンツェーンが叫ぶ。リルは抵抗せず押されて、小さな声で呟いた。


「なら行こうっ! ビアンカ様を助けるんだっ!」


「出来ない……ビアンカの……為にも」


 大声で肩を揺するノィンツェーンに、リルは俯いたまま呟いた。


「何でだっ!? 」


 更に肩を揺するノィンツェーンの目には、薄っすら涙が浮かんでいた。


「……」


「お二人共、ありがとうございます」


 黙り込むリル……ガリレウスは、そんな二人に優しい笑顔を向けた。驚いてガリレウスを見る二人にガリレウスは、ゆっくりと頭を下げた。


「私が余計な事を言いました……ビアンカの事ばかり気にして、お二人の気持ちを考えていませんでした」


「……ガリレウス様……」


 リルは目を見開き、ノィンツェーンも困惑した表情になった。


「どうか、ビアンカを宜しくお願いします」


 更にガリレウスは頭を下げた。


「行くぞ」


「分かった」


 顔を見合わせた二人は、下に続く階段に走った。


「でも、地下は大丈夫なのか?!」


「忘れたさ、そんなモン!!」


 走りながら叫ぶリルに、ノィンツェーンは大声で叫び返した。


______________



「あの人が来た……」


 急に立ちどまったアウレーリアが呟いた。


「誰が来ったって!?」


 目の前のパペットを蹴り飛ばしたツヴァイが大声で聞いた。


「あの人……」


「だから、誰なんだっ!?」


 小さく呟くアウレーリアの顔は明らかに不快そうで、直ぐにツヴァイはピンと来た。


「ビアンカ様なのか?!」


「……」


 アウレーリアはツヴァイを見ないで、小さく頷いた。


「何処だっ?!」


「……分からない」


 アウレーリアは、またツヴァイを見ないで呟いた。


「マアヤ! ビアンカ様の居場所は分かるかっ!?」


「ああん? あの女か? そうだな、もっと下の方の様な……」


 一旦パペットをブン殴る手を止め、マアヤは怪しく笑った。


「マルコス殿、ここをお願いします!」


「おい、待て」


 マルコスに向かって叫んだツヴァイは、一目散に下へ続く階段に走った。残されたマルコスは、大きな溜息の後に、ラディウスを見た。


「出来るか?」


「やれと言われれば」


 ラディウスは腰の大剣を抜くと、ニヤリと笑った。


「……私は……」


「十四郎に言われたろ」


 上目遣いのアウレーリアに、マルコスは溜息交じりに言った。


「アタシは行って来るから」


 マアヤはそんな事はお構いなしに、飛び跳ねる様に階段に向かった。


「勝手にしろ……」


 更に溜息をつくマルコスは、まだ大勢残ったパペットを力無く見た。


______________



「ローボ殿! ビアンカ殿の居場所は分かりますか!?」


「地下なのは確かだが、特定は難しい。それより人形の奴、相当怒ってるぞ」


 十四郎は黄金のパペットの凄まじい闘気を感じながらも、ビアンカの事を心配した。


「その様ですね。さっさと終わらせますので、ローボ殿は場所の特定をお早く」


「終わらせるって、お前……」


 十四郎は簡単に言うが、黄金のパペットの闘気はローボでさえ経験した事のない凄まじいモノだった。


「気は確かか魔法使い? 我が最強の……」


 老人が言い終わらないうちに、十四郎は祭壇に向かって走る! 直ぐに黄金のパペットが後を追った。


 荘厳な石造りの祭壇は高い天井に届く程巨大で、大きく見上げる程の外観は宮殿の様だった。


「まさかな……」


 ローボは苦笑いするが、その思いは数秒後に現実となる。十四郎は祭壇の中心で鯉口を切ると、何時もより低く構える。そして、ゆっくりと数本ある巨大な柱の前で待ち受け、飛び込んで来た黄金のパペットの一撃を神速の抜刀で受け流す! その太刀筋のまま巨大な柱を見えない速さで一閃!した。


 そして、今度は瞬時に後ろに飛び、次の柱の前に……。


「何を企んで……」


 老人は呟くと目を凝らした。一見、何も無い様に見える巨大な柱には、一筋の斜めの”線”が入っていた。


「それは無理じゃないのか?……奴も速いぞ……」


 ローボは呟くが、十四郎は柱を斬り終えると祭壇の中心近くで正眼に構えた。そして、先に動いたのは黄金のパペットだった。


 それまでの片手剣から両手に持ち替えた剣筋は、今までの速さを凌駕する。だが、十四郎は右手で刀を握ると、左手は鞘に添えた。


「何だと!?」


 老人が叫んだ瞬間! 十四郎は黄金のパペットの渾身の一撃を、瞬間に抜いた左手の鞘だけで受け流した! だが、両手首を瞬間に返した黄金のパペットの一撃が今度は十四郎の脳天目掛けて振り下ろされる!。


 だが次の瞬間! 黄金のパペットが、その場で転倒した!。


「何があった!?」


「そう言う事か」


 老人が叫び、ローボがニヤリと笑った。十四郎は右手の刀で剣を受けると同時に黄金のパペットの脚に鞘を挟ませ、次の動きに入ろうとした瞬間に、鞘をこじって黄金のパペットを転倒させたのだった。


 十四郎が後ろに飛び退いた瞬間! 大音響と共に祭壇は崩れ落ちて黄金のパペットは生き埋めになった。


 だが、当然の如く黄金のパペットは瓦礫の山を押し退け這い出す……が、瓦礫から腕と頭を出した瞬間! 十四郎は横薙ぎで腕と頭を切り裂いた。


 地面には、黄金のパペットの頭部と剣を握った腕が転がる。


「念を入れて」


 十四郎はそう言うと、もう片方の腕も斬り落とした。


「お前……」


「腕が無ければ、瓦礫からは出られません。それで、ビアンカ殿の居場所は?」


 苦笑いのローボに、十四郎は言葉尻に力を込めた。


「ああ、もう少し下層だ……」


 十四郎はローボの言葉が終わらないうちに、駆け出した。そして、背中で叫んだ。


「ローボ殿、鞘を拾っておいて下さいね!」


「……全く……」


 ローボは膨大な瓦礫の山に溜息を付き、老人は石像の様に固まっていた。

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