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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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聖なる瞳

「淡い群青の輪郭から、幾重にも色を変えたサファイアブルー……この世のどんな宝石さえ霞む神秘の瞳……お前は、その聖なる瞳で何を見るのだ?」


 闇の中で老人はビアンカを見据えた。


「私は……」


 ビアンカは俯き、長い睫毛が神秘の青い瞳を覆い隠す。


「お前にとって、魔法使いとは何なのだ?」


 老人の言葉に、ビアンカの細い肩が揺れた。そして、顔を上げると老人を強く見た。その瞳からは眩いばかりの青い光が煌めいた。


「美しい……」


 老人はその瞳の美しさに言葉を失う……だが、胸の奥底には違う感情も沸いた。


「十四郎をどうするつもりなのですか?」


 ビアンカの青い瞳の中心に、更に濃いブルーの炎が燃え上がった。その炎は眩しくて真っ直ぐには見れない程に美しかった。老人は、自分の胸を押さえながら、声を絞り出した。


「確かめようではないか……本物かどうか……あの、魔法使いを」


______________



 片手で剣を構える黄金のパペット。何処にも力の入っていない、その構えは一見すると隙だらけに見えた。対する十四郎は左足を引き、鯉口を切るとやや低く構えた。


「剣も抜かずに、速さに対応できるのか?」


 老人は怪しく笑ううが、次の瞬間に真顔になった。激しい金属音と飛び散る火花、だが双方とも動いた気配は皆無だった。


「ほう、少しは付いて行けるようじゃな」


 老人は十四郎を見ながら曖昧に微笑むが、その自信は少しも揺らいではいなかった。


「確かに、速くて重いですね……」


 十四郎は痺れが残る腕を摩った。


「……」


 黄金のパペットは、一旦背筋を伸ばすと剣を両手で持った。そして、大きく振りかぶると見えない速さで十四郎に襲い掛かった。何とか受ける十四郎だっが、反撃はおろか受けるだけで精一杯だった。


「遅い……」


 老人は眉を顰めた。


「弱い……弱すぎる……」


 暫くは十四郎と黄金のパペットの戦いを見ていた老人だっが、力無く吐き捨てた。


「お前は十四郎の何処を見てる?」


「あなたは……」


 目を見開く老人の視線の先には、白銀に輝く狼が牙を光らせていた。初めて目にするローボは気高くも神々しく、老人の目前に居た。


「魔法使いを助けに来たのですか?」


 やや震える声で、老人は聞いた。


「助ける? その必要は無い」


 フンとローボは鼻を鳴らした。


「ですが、私の造った騎士に勝てる訳はありません。現に、あの様に受けるのが精一杯で……」


「お前の目は節穴か?」


 怪しく笑うローボだったが、老人には十四郎が押されている様にしか見えなかった。


______________



「強いか?」


 十四郎の脳裏にローボの声が響いた。


「ええ……」


「あの女よりもか?」


「アウレーリア殿と同等……いえ、それ以上かも」


 十四郎の言葉は後ろ向きだが、声には張りがあった。


「全ての力が最高の”人形”だ。全力を出せ」


 ”人形”と言う言葉に語尾を強め、ローボは強い声で言った。


「もう、全力でやってますよ」


 十四郎は黄金のパペットの剛剣を受け、全身を衝撃で包まれながらも苦笑いした。


「ビアンカが拉致された」


 ローボの言葉に、十四郎は急に声を押し殺した。


「無事なのですね?」


「ああ、今の所はな」


「それでは、急ぎ終わらせます」


 十四郎は一旦下がると、刀を仕舞って低い体勢で身構えた。


「また、剣を抜かない構えか……」


 老人は最初の十四郎の構えを思い出した。十四郎は左人差し指で鯉口を切ると、やや刀を傾けた。同時に瞬間抜刀! 神速の鞘引き! 黄金のパペットとの間合いは一瞬で埋まった。


 十四郎の刀筋を黄金のパペットは読んでいて、剣をその軌道の内側に向けるが、その瞬間! 肩付近で激しい金属音と火花が散った。


「斬ったのか……」


 残像が老人の目に、ゆっくりと映った。


「お前の人形、中々丈夫だな。普通の人間なら、今ので絶命していた」


「今までは力を抜いていたと言うのですか?」


 唖然と呟く老人に、ローボはキラリと牙を見せた。


「さあな、底の知れない奴だ。どこまでが本気なのか、誰にも分からない」


「そんな……まさか」


 老人がまた呟く。その瞬間に、十四郎が後方に吹き飛ばされた。黄金のパペットの全身からは、闘気の様な赤い陽炎が出ていた。


「ほう、人形も本気を出すようだな」


「よいのですか? あれが本気を出せば”神さえ”切り裂きます」


 他人事の様にローボが言うが、老人でさえ見た事のない黄金のパペットの”本気”……その結末には造った本人でさえ、全く予想は出来なかった。


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