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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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最強の創造

 ビアンカは必死に説明した。自分達の目的、そして何故この場所が必要なのかを……。


「この城は、我が国を脅かす全てから守る為のモノじゃ」


「ですから、私達は……」


 ビアンカは老人の言葉に言い返そうとするが、老人は直ぐに遮った。


「異国の者ばかりでか?……特に黒髪の男……あれは、この大陸の者ですらない」


「あの人は……魔法使いです……この世界を変える為に……やって来ました」


 ビアンカの言葉は途切れた。十四郎が違う世界から来た事を改めて考えると、何故か胸が締め付けられた。


「魔法使いじゃと?」


 老人の表情が変わった。


「そうです……十四郎は魔法使いです」


「あの、狼は?」


 小さな声でビアンカが答えると、老人は視線を強めて言った。


「あれは、ローボです」


「神獣だと……もう一つ、あの魔物は何じゃ?」


 また小さな声で答えるビアンカを見詰め、老人は語尾を強めた。


「彼女は紅の獣王……そして、ライエカも……」


「ライエカ……それは神ではないか?……魔物や獣神、神までも味方だと言うのか?」


「はい」


 ビアンカは真っ直ぐに老人を見た。


「確かめる必要があるようじゃな……」


 老人は低い声でそう言うと、霧の様なモノに包まれた。その薄青の霧はビアンカの周囲に壁の様なモノを作ると、ビアンカの意識は穏やかに遠のいて行った。


_____________



 十四郎は瞬時に別の場所に居た。数体のパペットを切り裂き、次の集団に向かおうとした瞬間だった。ゆっくりと刀を収めると、その場所が石造りの広い部屋だと分かった。


 数か所の蝋燭は黄色い光で部屋の中を照らし、殺風景な部屋の奥には祭壇の様なモノが鎮座していた。そして、目を凝らすと長い白髪の老人が居た。


 その表情は曖昧で、怒っている様にも見えた。十四郎は頭を下げると、床に正座して刀を腰から抜くと右側に置いた。


「何故剣を右側に置く?」


「これは礼儀です。相手に対して敵対心は無いとの意思表示です」


 低い声で視線を強めた老人に対し、十四郎は穏やかに言った。


「右に置けば、瞬時の攻撃には対応出来ないのか?」


「それは……」


 老人が語尾を強めるが、十四郎は頭を掻いて笑った。だが、その瞬間! 槍の様なモノが十四郎を目掛けて飛んで来た。


 だが十四郎は座ったまま、物凄い金属音と共に槍を弾き返した。それは瞬きも出来ない一瞬だった。


 その瞬間! 十四郎は右手で鞘を押さえると、左手で柄頭を握って抜刀! 槍を弾き返したのだった。そして、ゆっくりとまた、刀を仕舞った。


「すみません、つい反射的に……」


 苦笑いの十四郎だったが、老人の視線は更に鋭くなった。


「お前の強さを見たい」


「そんな、大したものではありませんよ」


 老人の突き刺さる様な視線を受けても、十四郎は苦笑いしながら言った。その態度は決して相手を下に見るモノではなかったが、老人には違って感じられた。そして、老人の腹の底にはドス黒い怒りを沸騰させた。


 老人は微かに震えながら十四郎を見据えた。


「全てを兼ね備えた最強の騎士……だが、その騎士をある一点で上回る者が居たとする。例えば速さ、あるいは力、または持久力……更に技、最後に精神力。だが、当然ながら一点で上回っても最強の騎士には勝てない……」


「はあ、確かにそうですね」


 老人の言葉を受け、十四郎は困惑した。老人の言ってる事は当たり前の事だが、その目の奥に異様な何かが見え隠れしていたからだった。


「その上回る一点を集めた騎士なら、最強の騎士を容易く凌駕出来ると言うものじゃ……紹介しよう。我が創造した最強の集合体じゃ」


 そこには黄金の鎧を纏った騎士が居た。異様な気配を感じたが、一見すると鎧や剣などは豪華だが、他のパペットと然程変わらない容姿だった。


 黄金のパペットは片手の剣を十四郎に向けた。十四郎はゆっくり立ち上がると、刀を左腰に差した。


______________



「十四郎様が居ない!」


「今まで居たぞ!」


 ツヴァイとラディウスが同時に叫んだ。


「落ち着け! まだ大勢いるぞ!」


 マルコスは減らないパペットを見ながら叫んだ。


「お前はここに居るんだ。他の者を守れ」


 瞬時に気付いたアウレーリアに、足元に来たローボが言った。


「……でも」


「十四郎の望みだ」


 泣きそうな顔のアウレーリアだったが、ローボの言葉に小さく頷いた。そして、マアヤは十四郎を追って街角の闇に入ろうとしていが、その前にローボが立ち塞がった。


「何処に行く気だ?」


「アタシに指図する気か?」


 不機嫌そうな目でローボを見たマアヤは、声を押し殺した。


「だとしたら?」


 牙を剥いたローボも、低く構え肩を怒らせた。マアヤも爪を出して構えるが、フッと息を吐くと背中を向けた。


「やめた」


 そして、またパペットに向かって行った……当然、前にも増して激しくブチ壊していたが。


「さて……」


 ローボはマアヤが行こうとしていた闇を見据えて、大きく息を吐き出した。

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