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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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入口

「この辺りだな」


 マアヤの示した場所は正門からかなりオフセットされた場所で、城壁にかなり近かった。


「正面を避けているのか……だが、軍勢を一度に出すとなれば……」


「どうなされました?」


 腕組みのロメオに、十四郎が聞いた。


「地下への入口ですが、同時に軍勢の出口です。かなり、広い階段になっているかと思います」


「分かりました。それではウィード殿、広めの階段があると思いますので」


 ロメオの意見を聞いた十四郎は、ウィードに指示を出した。ウィードは猛然と地面を掘り出すと、直ぐに階段らしき物が出て来た。


「端を探せ! 壁を壊すな!」


 マルコスは待機している者達に指示を出す。直ぐに階段の横幅が分かった……それは、人が横一列になると二十人程の長さだった。


「思った程広くありませんね」


「敵襲の事態に即応するなら、最初から出ていて地上で待機していれば問題ないですからね」


「確かに」


 十四郎は首を傾げるが、ロメオの適切な回答に笑顔になった。そして、ウィードは階段を掘り進めて地下への扉を探した。だが、ウィードの背丈程掘ってもまだ階段は地下へと続いていた。


「かなり深いですね」


「だけど物凄いな……」


 十四郎はあまり驚いていないが、マルコスはウィードの掘るスピードに苦笑いした。人力で掘れば、どの位の時間が掛かるか想像も出来ない……だが、ウィードは物凄い土煙を上げながら、あっと言う間に掘り進んでいた。


 やがてウィードの背丈の三倍程掘った所に、重厚な石の扉が姿を現した。その扉に掘られた彫刻に、ビアンカが首を傾げた。


「この紋章、モネコストロ王章に似てるけど……」


「これは、古代モネコストロの紋章……フランクルに統合される、ずっと昔の……」


 ガリレウスは、紋章を愛おしそうに撫ぜながら呟いた。ロメオはその様子を見ながら、十四郎に言った。


「十四郎殿、この扉は人力では無理そうですね」


「あっ、はい。ウィード殿、お願いします」


「ワカッタ」


 ウィードは両腕に力を込める。腕の筋肉は倍以上に隆起すると、毛は逆立ち爪が扉に食い込んだ。


「まさか、開くのか?……」


 マルコスは冷や汗を流した。今掘り出されたばかりの扉は、まるで石の壁であり到底開きそうにはなかったから。


 だが、物凄い石の擦れる音と共に扉は開いた。直ぐに冷たい湿った空気が、十四郎達の傍を通り抜けた。


 扉の向こうには無数の柱があり、天井を支えていた。だが、外の光は奥までは届かずに、その先を闇に包んでいた。


「想像した以上です。この広さは地上の城内部分と同等だと思われます」


「そうですね、高さも凄い。人の背丈の数倍はある……しかし……」


 見渡したロメオは目を見開くが、マルコスは疑問に包まれた。確かに広いが、数万が暮らせる広さではないと感じた。


「おそらく、この場所は第一層ですね」


「まだ下があると?」


 平然と言うガリレウスに、マルコスが視線を移した。


「当たり前だ。ここは入口に過ぎない」


 それまで黙っていたローボが、キラリと牙を見せた。


「下に降りる階段があるぞ!」


 光の届かない置くの方から、マアヤの叫びが聞こえた。


「マアヤ殿! 一人で行かないで下さいね!」


「分かった!」


 十四郎が叫ぶと、何だか嬉しそうなマアヤの返事があった。


______________



 一度地上に戻ると、全員が集まった。


 下に続く階段も数か所見付かったが、地上に続く階段も数か所見付かった。ガリレウスとロメオは、地上から掘り進める準備を始めた。


「ガリレウス殿、この紐で分かるのですか?」


「はい。最初の階段を起点として紐で長さを測り、正確な図面を作ります」


 用意された長い紐を見てロメオは首を捻るが、ガリレウスは笑顔で言った。


「なる程、紐を真っ直ぐ伸ばせば、長さも角度も分かりますね」


「はい」


 直ぐに理解したロメオにガリレウスは、また笑顔を向けた。


「それではリル殿、ノィンツェーン殿、リズ殿、それにゼクス殿、ガリレウス殿のお手伝いと護衛をお願いします。後は、私と一緒に地下を探索します。ウィード殿はガリレウス殿の指示した場所を掘って下さい」


「ワカッタ、ホル」


 ウィードは大きく頷くとガリレウスを見る。ガリレウスは笑顔で会釈するが、ウィードは少し十四郎に似てると思った。


 そして、先程到着したゼクスは直立不動で頭を下げるが、ノィンツェーンは妙に嬉しそうに言った。


「よっ、喜んで!」


「お前、下に行くのが怖いんだろ?」


 直ぐにリルが意地悪そうに言った。


「そ、そんな事……」


 だがノィンツェーンは、何時もみたいに反撃してこなかった。肩透かしを食らったリルは、小さく溜息をついた。


「私は、お爺様の傍にいます……」


「ビアンカ……」


 リズは、そっとビアンカの手を握ると、ビアンカは強く握り返した。十四郎は隣りに寄り添うアウレーリアの事に気付かず、ビアンカを少し驚いた様な表情で見詰めた。


「十四郎殿、ビアンカは私の護衛に残して下さい」


「はい、それはいいですけど」


 十四郎はガリレウスの言葉に、もう一度ビアンカを見るが、ビアンカはそっと視線を逸らした。


「十四郎、気を抜くな」


「はい」


 ローボの強い言葉に、十四郎も強く頷いた。


______________



 第二層は、大一層と同じ様な光景だった。天井の高さも同じくらいで、十四郎は錯覚に陥りそうだった。


「柱の位置が微妙に違う。上とは明らかに違うぞ」


 ローボは十四郎の事を察したかの様に呟く。


「そうですか? 同じ様に見えますが」


「そうだな、言われれば違う様にも見える。ラディウス、松明を頼む」


「分かった」


 十四郎は首を捻るが、マルコスは直ぐにラディウスに指示を出した。大量の松明を背負ったラディウスが近くの柱数か所に松明の炎を灯すと、確かに違いが分かった。


 柱の間隔は上よりは狭く、数も多かった。


「塔と同じだ、下の方が重さが掛かるからな……」


「この場所も待機する所なんですか?」


 ツヴァイは上下合わせれば、かなりの兵を待機させられると感じた。


「多分、そうだが……それでも数万は無理だ」


「フン、言ったはずだ。入口に過ぎないと」


 ローボは鼻を鳴らすと、十四郎を見た。


「そのようですね……」


 十四郎は闇に包まれる奥の方に視線を向ける。


「急げよ! また階段だぞ!」


 先に行ってたマアヤが叫ぶ。十四郎は溜息をつくと後を追おうとするが、袖を引っ張られた。


「アウレーリア殿、どうしました?」


「十四郎……あの人に、ついて行くんですか?」


 俯いたアウレーリアは、消えそうな声で言った。


「この様な場所は、マアヤ殿が慣れているみたいですから」


「……」


 苦笑いの十四郎は頭を掻きながら言った。だが、アウレーリアは俯いたまま十四郎の袖を強く握った。


「この先、何が待っているか分からない。お前が十四郎を守れ」


「はい」


 ローボの強い言葉に、アウレーリアは袖から手を離すと小さく強く言った。


「ローボ殿、凄いですね。アウレーリア殿、急に元気になりました」


「……ボンクラ」


 嬉しそうな十四郎を見ながら、ローボは大きな溜息をついた。


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