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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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十四郎

 ビアンカは真桜の動きに、ある共通性を感じていた。それは”動き出し”の場所……足元からさきの場合と切っ先からの動き出しの場合だった。


 足元から動けば上段からの攻撃、切っ先からなら下段、同時に動き出せば中段……だが、分かっていても真桜の攻撃が速過ぎて防戦一方で、受けるだけで精一杯だった。


「まるで、剣を二本もってるみたい……」


 まさに同時の攻撃を受けている感覚は、ある戦いを思い出した。それは、アウレーリアの超高速の攻撃だった。


 左右どころか前後まで、同時と思わせる様な超高速の剣……ビアンカは、大きく深呼吸すると真桜の動きを頭の中に描く。


 そして、自ら攻撃を仕掛けるのではなく、受け流がす事だけに集中する。


「真桜の動きは円舞……多くの型を柔軟に組み合わせ、無限に違う攻撃を仕掛けてくる……」


「それなら、ビアンカが受け流すのにも限界があるな」


 十四郎は何故が微笑みながら呟き、ローボは視線を強くした。


「でも、大丈夫だと思いますよ」


「そうよ、ビアンカなら大丈夫だよ、ねっ、シルフィー!」


「ええ、ビアンカは大丈夫」


 アルフィンは嬉しそうにシルフィーに寄り添い、シルフィーも笑顔で頷いた。


「どうして、そう思うの?」


 確信がある様に十四郎は言うが、今度はライエカが首を傾げた。


「組み合わせは無限ですが、全て違う攻撃の型を繰り出す事は難しいのです……」


「同じ攻撃をすると? でも例え同じ攻撃でもビアンカに出来る? 反撃が」


 腕組みした十四郎にライエカが聞くと、十四郎はライエカに微笑んだ。


「ええ、出来ます。ビアンカ殿なら」


_____________



 ビアンカは真桜の攻撃を受けながら、ハッとした。


「今のは見覚えがある……」


 そして、瞬時に頭の中に繰り返す……上段からの斬り込みを受け流す、その瞬間に真桜は持ち手を変え、中段の横薙ぎ、何時端下がって躱すと、更に中段からの突き……。


「それなら!!」


 ビアンカは真桜の突きと同時に、前に飛ぶ! レイピアで鳴らした三段突きの要領で、真桜に石突の突きを見舞った。


 真桜は薙刀を回転させて避ける! だが、その瞬間! ビアンカは神速で持ち手を変えて横薙ぎ! だが、真桜に当たる寸前でビアンカは薙刀を止める!。


 刹那! 真桜の薙刀がビアンカの脳天で静止した。


「惜しかったですね……相打ちです……でも、ビアンカ殿は峰打ち、真桜は刃打ち……」


 十四郎は瞬間、ビアンカが手首を返していた事を見抜いた。


「お前、今のが見えたのか?」


 呆れた様にバビエカが聞くと、十四郎は頭を掻いた。


「ええ、まあ……」


 真桜は下がって一礼すると、自分の薙刀をビアンカに手渡した。そして、懐から鞘を取り出して、そっと刃に付けた。その純白の鞘には青い”蝶”の紋章があった。


「あれは”聖剣”なのか?」


 キョトンとバビエカが聞くが、十四郎は苦笑いした。


「あれは、我が家に伝わる薙刀、銘を”揚羽”と言いますが、聖剣ではないと思います」


「それは、少し違うわね。確かに十四郎の家のクレイヴに似てるかもしれないけど、あれはこちら側のモノ……ビアンカの望む”聖剣”よ」


 十四郎の肩に乗ったライエカが解説した。


「アウレーリアの剣もか?」


「ええ、既にアウレーリアの紋章があったでしょ……それは、アウレーリアが望んだから」


 振り返ってアウレーリアを見るローボに、ライエカは穏やかに答えた。


「あいつ等の”聖剣”には、どんな力があるんだ?」


 まだ、状況が分からないバビエカにライエカが、嬉しそうに答えた。


「望む、力よ……」


_____________



「真桜さん……」


 薙刀を受け取ったビアンカに真桜は穏やかに微笑んだ……そして、静かに消えていった。ビアンカは暫く俯いていたが、顔を上げると十四郎達の元に戻って来た。


「お前、何故その”ナギナタ”を選んだ?」


 ローボの問いに、ビアンカは少しの間を空け答えた。


「これは、私が見て来た武器の中で、一番……人を”生かせる”武器だったから」


「そうか……」


 ローボは、口もを緩ませた。


「さあ、最後は十四郎よ」


「あっ、はい」


 ライエカに言われ、十四郎は老婆の元に向かった。


「あの、この様な”刀”は無いですよね?」


 十四郎は腰から刀を抜くと、老婆に手渡した。老婆は受け取ると、黙って手を差し出した。


「あっ、折れた部分ですね」


 折れた切っ先を出して手渡す十四郎は、きちんと切っ先を布に包んでいた。老婆は切っ先を取り出すと、折れた部分を合わせた。


 すると、淡い光を放ち折れた部分は元通りになった。


「あっ、私はそれでいいです。ありがとうございました」


 頭を下げながら十四郎が嬉しそうに言うと、老婆は静かに刀を返して言った。


「これは一時的なモノじゃ……汝の力を示せ、さすれば元に戻る」


「はあ……」


 刀を腰に差しながら、十四郎は頭を掻いた。そして、湖を振り返ると数十人の影が蠢いていた。


「見た事も無い甲冑だな?」


「あれは、十四郎の世界の甲冑……また、なの……」


 首を傾げるローボの横で、ビアンカの声が震えた。


「しまった、そう言う事か……」


「何がそう言う事なんだ?」


 一瞬で察したローボに不思議そうにバビエカが聞くが、代わりにビアンカが泣きそうな声で答えた。


「あの中に、レオンやベルッキオ、マカラ兵もいる……あの人達は、今まで十四郎が命を奪った人達……」


「そうだ、紅の獣王の術と同じだ……」


 ローボは声を押し殺す。


「凄い数だ、あの人数を魔法使いで一人で? 百以上いるぞ……」


「数は関係ない……だが……」


 焦るバビエカの横で、ローボが更に声を押し殺した。


「十四郎……」


「きっと、大丈夫……」


 急に震え出すアルフィンに寄り添い、シルフィーが優しく言った。だが、背中を向ける十四郎の表情は見えない、シルフィー嫌な予感に包まれるが、声を上げた。


「ビアンカ! しっかりしなさいっ! 十四郎を信じるのよっ!」


 だが、シルフィーの声はビアンカには届かなかった。


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