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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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魔剣

 ビアンカとアウレーリアの戦いは、完全に周囲を置き去りにしている状況は続いていた。取り囲む魔物達は、挑みかければ一瞬で斬り伏せられる状況に金縛りのままだった。


 そんな状況が暫く続く中、紅の獣王は突然我に返った。それは、穏やかな表情でビアンカとアウレーリアを見詰める十四郎の存在だった。


 目の前で神の様に戦う二人は十四郎の為に戦っているのか?……それとも、奪い合っているのか?……直ぐに察しは付いた……後者だと。ならば、屈辱を晴らすには方法は一つしかない。


 紅の獣王は爪を最大に伸ばすと、十四郎に襲い掛かった。


「十四郎!」


 アルフィンは前足で落ちていた十四郎の刀を蹴り上げた。


「すみません」


 受け取った十四郎に、紅の獣王が襲い掛かる。受け取ったとは言え、鞘に収まったままの剣で何が出来る。しかし、剣の様に鋭利な詰めが十四郎に届く瞬間、爪は弾き飛ばされた。


「何だと!」


 咄嗟に後ろに下がった紅の獣王は、十四郎の構えに目をやった。低い体勢で刀の柄に右手を添え、涼しい眼差しで紅の獣王を見据えていたのだった。


「一瞬で剣を抜いて……収めた、だと?」


_______________________



 目前に戦うビアンカの姿が映った。ルーは、その相手がアウレーリアだと確認すると、猛然と加速した。


「止まりなさいっ!!」


 ライエカの声が激突したルーは、思わず急ブレーキを掛ける。


「何だ?!」


「いい子ね……ルー」


 微笑むライエカに、ルーが怒鳴った。


「ライエカ! ビアンカを止めるんだ! 領域を超えてしまう!」


「ほう、互角に戦っているな」


「ち、父上……止めないと、ビアンカが!」


 そこには白銀に輝くローボの姿があったが、思わずルーは叫んでしまった。


『ローボ殿、ビアンカ殿に何か?』


 間髪入れず、十四郎の声がローボの脳裏に響いた。


『ビアンカは妖精を見た。それは、神の領域に入るかもしれないと言う事だ』


『それは、強くなると言う事ですか?』


 ローボの説明を受けた十四郎には、その意味が分からなかった。


『確かに強くなるな……なんせ神だ……強さも命も……時間さえ、思いのままだ』


『それは……』


『そうだ。同じ時は歩めなくなると言う事だ』


『止める、べきですか?』


『それは、ビアンカ自身で決める事だ……が、お前次第だ』


 ローボの言葉が、十四郎の胸に突き刺さった。


____________________



「アウレーリアの剣が暴れ出したみたいね」


 肩に止まったライエカが呟くと、ローボの脳裏にアウレーリアの姿がフラッシュバックした。


「そう言えば、前の戦いでも途中で捨ててたな」


「そう言う事か……」


 首を傾げるライエカに、ローボは鋭い視線を向けた。


「アウレーリアでも扱えないって事か?」


「あの剣は血に飢えてる……アウレーリアが望まなくても、剣は命を奪う」


 呟いたライエカの目前で、次第にビアンカを圧倒し出したアウレーリアの瞳に炎の様な影が浮き沈みしていた。


『どうなりますか?』


「このままでは二人とも、一線を越えるかも」


 押し殺した十四郎の声がライエカの脳裏に届いた。正直にライエカが答えた瞬間、十四郎は紅の獣王の前から、二人の間に飛び込んだ。アウレーリアの剣を瞬間抜刀で受けると、ビアンカに囁いた。


「ビアンカ殿。あちらの相手を、お願いします」


「……でも」


 真剣な十四郎の横顔に、ビアンカは眉を下げた。だが、振り向いた十四郎の顔は真剣だった。


「お願いします」


「分かった……」


 ビアンカは、その場から素早く紅の獣王の前に向かった。


「お前……」


「今度は私が相手……」


 刀を構えるビアンカの姿が十四郎にダブり、紅の獣王は唇を噛み締めた。


________________



「十四郎の剣で、あの剣に太刀打ち出来るのか?」


「普通は無理なのよね……魔の力が違い過ぎる……でも」


 ローボの問いに、ライエカは少し笑った。


「何だ?」


「何故かしら……期待してしまう」


「そうだな……」


 ライエカの言葉に納得した様に、ローボも口角を上げた。


_______________



「十四郎……」


 アウレーリアの瞳から炎は消えるが、十四郎は強い視線で言った。


「アウレーリア殿、その剣は危険です。直ぐに……」


 だが、言葉の終わらないうちに、十四郎目掛けて剣は振り下ろされた。瞬間! 下側からアウレーリアの剣を斬り上げると、轟音と物凄い火花が飛び散る。しかも、十四郎はその体制の途中で後方に飛び下がっていた。


「……剣が……」


 剣の柄はアウレーリアの手に絡み付いていた。


「大丈夫ですよ」


 穏やかな表情で一旦刀を仕舞うと、十四郎は柄に右手を添え膝を折り低い体勢で構えた。アウレーリアは剣を剥がそうと試みるが、激痛に顔を歪めた。


「……」


 アウレーリアは意識を集中すると、大きく息を吐いた。そして、十四郎に背中を向ける……だが、十四郎はその背中に語り掛けた。


「アウレーリア殿、その剣は危険です」


「どう、するんですか?……」


 アウレーリアは背中で呟いた。


「斬ります」


 十四郎は強く、しっかりとした口調で言った。


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