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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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マジノ遺跡

 途中、人でも絶対に無理そうな崖をアルフィンは簡単に登り、目の眩む広い谷も普通に飛び越えた。迂回の道は遠いだけだなく、険しさが満載の”酷道”だった。


 バビエカは意地になって必死に付いて行ったが、どんな険しい道でも普通に平気で走るアルフィンに驚きを隠せなかった。


「あれが天馬か……」


 呟くバビエカには悔しさも羨望も無く、ただ唖然とするだけだった。そして、アウレーリアは薄笑みを浮かべ、十四郎の背中ばかり見ていた。


 それは後から来るマルコス達も同じで、普通の馬でアルフィンと同じ道を通るのは不可能であり、その都度遠回りを余儀なくされた。


「アルフィンさえ居れば、どんな道でも大丈夫ですね」


「ええ、道がなくても……」


 呆れるロメオに、マルコスは物凄く大きな溜息で答えた。そして、夜になり野営をする時には、アウレーリアが十四郎の傍で寄り添うように眠り、マルコス達は唖然とした。


 それはまるで”普通の女”であり、戦うアウレーリアの姿と物凄いギャップで、戸惑う思考が全員を支配して寝不足の淵に誘われた。


__________________



 三日後、十四郎達は マジノ遺跡に到着した。


「物凄い所ですね」


 十四郎は、城壁に絡まる太い蔦を見て溜息を付いた。確かに城壁の高さは十分にあるが、城壁全体に絡まる蔦や周囲の大木は、遺跡をを緑の山の様に見せていた。


「城壁自体は頑丈な造りです。蔦を伐採し、周囲の木を伐採すれば城として使えるし、切った木材も城自体の修復に使用できます」


「伐採ですか……確かに一から城を築くよりは、楽そうですけど……」


 平然と言うマルコスの横で、ロメオは苦笑いするしか出来なかった。やがて、分かれていた迂回組も合流したが、ほぼ全員が呆気に取られた。


「十四郎様、マルコスさん! 道具は揃いました」


 調達に出ていたダニーも合流した。ダニーは十数台の荷馬車と、数十人の男達を従えていた。


「ダニー殿、この方達は?」


「近くの村の人です。森に囲まれた村で、木こりが主な仕事の人達です」


 紹介された男達は皆ゴツイ体で、手に手に斧や鋸を持っていた。


「それでは作業は明日からと言う事で、今日は城壁の前で野営する。ダニー、食事の準備を頼む」


「分かりました」


 皆を前にしたマルコスは、ダニーに食事の準備を促した。そして、小声で十四郎に耳打ちした。


「村人にはアウレーリアの事は言うな。知られたら多分、全員が逃げるからな」


「でも、皆見てますよ」


 ポカンと十四郎が言った。


「適当な名前で紹介しろ」


「そんなぁ……」


 面倒そうにマルコスは言い、十四郎は苦笑いした。


「アウレーリア殿、こっちへ……いいですか、アウレーリア殿の事は違う名前で呼びますから」


「……何故?」


 アウレーリアは目を伏せる……その横顔で長い睫毛が揺らめき、マルコスは胸がドキッとした。


「それは、その、皆さんが怖がるので……」


 ストレートに言う十四郎を見てマルコスは呆気に取れれるが、既に煌めく銀髪と逆さ十字の紋章が村人達を金縛りにしていた。見かねたロメオは、皆の前に出た。


「皆も分かってると思うが、彼女はアウレーリア……大陸最強の騎士だ」


「マリオ殿、何を?!」


 声を上げるマルコスに、ロメオは微笑みながら続けた。


「魔法使い殿とアウレーリアが居れば、何も恐れる事はない。神さえ、道を譲るだろう」


 堂々としたロメオの言葉を聞いて、最前列の村人が恐る恐る聞いた。


「……アウレーリアは、味方なのですか?」


「勿論。そうですよね、十四郎殿」


 ロメオは笑顔を十四郎に向けた。


「はい。アウレーリア殿は味方してくれます」


 微笑み返す十四郎の言葉の後、かなりのタイムラグで歓声が起こった。


____________________



 次の日、夜明けから遺跡の修復が始まった。村人達は慣れていたが、明らかに剣闘士などの方が体格は良かった。だが、鍛え抜かれた大男達でも、蔦や大木の伐採は熟練の技には敵わなかった。


 しかし例外も存在し、ラディウスくらいになると斧の一振りで、そこそこの木は切り倒していた。


「凄いですね、ラディウス殿」


「コツが分かれば、簡単です」


 驚く十四郎に、ラディウスは笑顔を向けた。だが、その笑顔は直ぐに掻き消された。


「ならば、私も」


 十四郎は少し腰を落とし、鞘に添えた左手で鯉口を切った。


「如何に十四郎様でも、剣では無理ですよ……」


 ラディウスが苦笑いした瞬間、十四郎は神速で抜刀! 次の瞬間には刀を鞘に納めていた。


「えっ?……」


 唖然とするラディウスの目の前で、一瞬で大木が斬り倒された。しかも切り口は綺麗に平らで、ラディウスは背中に汗が滝の様に流れた。


「驚くのは早い……」


 今度は真っ青なマルコスに促され、アウレーリアの方を見たラディウスは目を見開いた。


「まさか……」


 アウレーリアは普通に大木の前に立つと、ゆっくり剣を抜く。そして、片手で軽く振るだけで大木は中心から真っ二つになった。


「アウレーリア殿、半分に切るのではなく横向きに斬り倒すんですよ」


 笑顔の十四郎の言葉を受け小さく頷いたアウレーリアは、今度は横向きに剣を薙ぎ払う。


「そうです」


 十四郎が微笑むと、真ん中から半分になった大木は紙でも切るように簡単に切れ、轟音と共に倒れた。


「これなら、案外早く終わるかも……」


 呟いたロメオの額にも、大量の冷や汗が流れていた。


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