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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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擦れ違い

「お前は何をしていた!!」


 物凄い勢いでマルコスが部屋に飛び込んで来て、十四郎の胸倉を掴んだ。激しく揺り動かされる十四郎は、苦笑いで言う。


「それが、その、色々ありまして……」


「何が色々だっ! だいたい助けを求めてながら、何で肝心のお前が居なくなるんだっ!! ローベルタ様に、何と失礼なっ! 謝れっ! 謝るんだっ!!」


 マルコスは十四郎の頭を押さえつけ、無理やりローベルタ婦人に頭を下げさせた。


「もう、そのくらいで……」


「しかし、この無礼者は……」


 穏やかに笑うローベルタ婦人の前で、マルコスは俯いた。


「お仲間の家族を助け、私どもに迫る危機を魔法使い殿は防いできれたのですよ」


「と、申されましても……何っ!? 何でコイツが此処に居る?!」


 顔を上げたマルコスの視界に突然アウレーリアの姿が映り、また十四郎の胸倉を掴んで思い切り揺さぶった。アリアンナは、やっとアウレーリアの呪縛から解放され十四郎とマルコスの遣り取りを見る事が出来ていた。


「それが、その……成り行きで……」


「成り行きだと?! 何を考えてる!!」


「もう、そのくらいでマルコス殿……アウレーリアが、睨んでますよ」


 ローベルタ婦人はニコやかに言うが、視線を向けたアウレーリアは剣に手を掛け氷の様な瞳でマルコスを睨んでいた。


「マルコス殿。十四郎様が制さなければ、真っ二つになってましたよ」


 苦笑いのツヴァイの言葉で、マルコスは我に返った。グラグラ揺すられながらも、十四郎は手でアウレーリアを制していた。


「とにかく、何か急ぎの知らせがあったのでしょう?」


「あっ、はい。取り乱して申し訳ありませんでした」


 十四郎から手を放し、マルコスはローベルタ婦人に深々と頭を下げた。


「ロメオ殿が遺跡に向かってますが、イタストロア正規軍が後を追って進軍を始めました」


「まさか! 補足されたのですか!?」


 顔色を変えたツヴァイが立ち上がるが、マルコスは真剣な目を向けた。


「大丈夫だ。先にミランダ砦を抜けられる……だが、砦に籠って戦えば城を築く時間が無い」


「それならば、直ぐに出発を!」


 ツヴァイは十四郎を見た。十四郎は笑顔で頷くが、ローベルタ婦人も穏やかに笑った。


「本当に忙しい方達ですね。もう少し、ゆっくりしてお行きなさい」


「あの、遺跡って何ですか?」


 十四郎は苦笑いで頭を掻いた。


______________________



 十四郎達に説明してない事を思い出し、マルコスは一から説明した。真剣に聞く十四郎の横顔は、アリアンナの胸を内側から優しく包み込む。


「十四郎、疲れてはないのか?」


「少し疲れてますが、大丈夫ですよ。それより、やはり行かないといけませんね」


 心配するアリアンナに、十四郎は笑顔を見せた。


「そうだ。しかし、この場所の守りが手薄になる。そこで、ロメオ殿の策はこうだ。行くのは剣闘士とミランダ砦の者、パルノーバの者にイタストロア殿部隊。ラナ殿と配下の騎士団を中心に残りはこの場所の防御に専念する」


 穏やかに十四郎は微笑むが、マルコスは真剣に言った。


「約、三分の二が行くのですか……」


「そう言う事だ。ただし、あくまで城を築く人手としてだ。兵士としてでは、ない」


 頷くツヴァイに、マルコスは補足した。


「確かに、人選は作業員向きですね……で、どうします?」


 ツヴァイは目でマルコスに合図し、マルコスも視野の隅でアウレーリアを見た。そして、急に思い出した。


「ビアンカ様はっ!?」


「そうだ! ビアンカはっ!?」


 同じようにアリアンナも、急に思い出した。


「それが、気分が悪いと後から来ますよ」


 十四郎は平然と言うが、アリアンナは何故か胸の中がモヤモヤした。


「これだからな……で、護衛は?」


「ローボ殿がついてますよ」


 溜息交じりのマルコスに十四郎は、また平然と言った。


「ビアンカ様は、こちらに残られた方が良いかと」


「そうだな、その方がいい」


 ツヴァイの言葉に、マルコスは直ぐに同意した。


「何故です?」


「どうせ、アイツはお前に付いて来るんだろ?」


「あ、はあ、多分」


 嫌味の様にマルコスは言うが、十四郎は苦笑いで頭を掻いた。


「ツヴァイ、ビアンカ様を頼む。ココには敵の動向を探らせる、リルとノィンツェーンはビアンカ様の傍に」


「承知した……」


 直った真剣なマルコスに、ツヴァイも真剣に頷いた。だが、横目で見たアリアンナの顔は、

寂しそうに窓の外を見ていた。


__________________



 ビアンカがローベルタ婦人の元に帰って来た時には、既に十四郎とマルコスは出発した後だった。ツヴァイは説明するのに神経を擦り減らせるが、ビアンカは意外にも簡単に受け止めた。


「ビアンカ様、いいの? 行かなくて……」


「私は……十四郎の役には……立てないから」


 ノィンツェーンの済まなそうな言葉に、ビアンカは俯いた。


「ビアンカ! 行くぞ!」


 そんなビアンカの手を取り、リルが叫ぶ。


「ツヴァイから聞いたろ! お前は口出しするな!」


「何だと? お前にビアンカの気持ちが分るのか?」


 額を押し付けてノィンツェーンが真っ赤になるが、リルも無表情で言い返す。


「止めろ! ビアンカは本当にいいのか?」


「……」


 二人を分けたアリアンナが、ビアンカを強く見た。だが、瞳を逸らしたビアンカは何も言わなかった。


「最善策だ。あの女を押さえられるのは、十四郎だけだからな」


 やって来たローボが、ビアンカに寄り添って座った。


「でも、ローボ……」


 ノィンツェーンは、ビアンカの俯く姿に胸が張り裂けそうだった。


「いいか、あの女と関わるな……あれは、全てを滅ぼす」


 ローボの低い声に、皆言葉を失った。暫く沈黙が続くが、ノィンツェーンはビアンカの肩を優しく抱いて呟いた。


「もう直ぐ、リズ様も来ますから……」


「……」


 ビアンカは無言のまま、小さく頷いた。


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