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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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救出

 十四郎は自分の刀を片手で正眼に構え、ビアンカの刀は少し下げた状態で軽く構えていた。


「受けるのと攻撃を同時にするのでしょうか?」


「剣一本でも十四郎なら出来る……あの二本の剣は、その先を行く為だ」


 泣きそうなビアンカの問いに、ローボは強い視線で答えた。


「その先……」


 呟いたビアンカが視線をずらすと、アウレーリアが十四郎を見詰めていた。その美しい横顔は十四郎を心配している感じではなくて、見とれている様に見えた。


「……どうして?……」


 思わず、声に出る。


「……多分、アウレーリアには十四郎様が危ないなどと言う思いは微塵もないと思います。あるのは、戦う十四郎様を見ていたいと言う……気持ちだけ……」


「ノィンツェーン! 黙ってろ!」


 済まなそうに呟くノィンツェーンをツヴァイが大声で制すが、その言葉はビアンカの胸に突き刺さった。


「だって……」


 ツヴァイに言われ、ノィンツェーンは俯いた。自分の言葉が、ビアンカを傷付けた事はビアンカの表情を見れば直ぐに分かった。


「お前達、何をしている?」


 呆れた様にローボは呟いた。


「前にも言ったでしょ! 大切な事なの!」


「落ち着け……」


 声を上げるノィンツェーンの腕を、困った顔のツヴァイが強く引いた。


「十四郎は今、戦ってる……あの剣は手強い。黙って見守る事は出来ないのか?」


 鋭い視線のローボにノィンツェーンは言い返そうとしたが、ビアンカが先に口を開いた。


「ごめんなさい、ローボ……見守ります……」


 その言葉に、ノィンツェーンもツヴァイも次の言葉を飲み込んだ。


「全く……」


 また呆れた様に呟いたローボだったが、その視線は強いままだった。


___________________



「受けるだけか?」


 繰り出す剣を加速させながら、ズィーベンは血走った目で言葉を絞り出した。十四郎は上下左右から向かって来る剣を、左右の剣で受け流す。


 受けるので強い一杯で、とても反撃など出来そうにない様に見えるが、ローボは十四郎の表情を見逃さなかった。


「あのボンクラ……」


「十四郎……楽しそう」


 横でアウレーリアの横顔が微笑んでいる様に見えたローボは、思わず聞いた。


「そう見えるのか?」


「はい……」


 アウレーリアは即答した。


「強い相手と戦う事を、十四郎は厭わない……否、望んでいるのかもな……」


「そうなんですか?」


 アウレーリアの意外な返答にローボは首を傾げた。


「お前は違うのか?」


「はい」


 平然とアウレーリアは答えた。


「なら、どうなのだ?」


「分かりません」


 また、アウレーリアは即答した。だが、その怪しい微笑みはローボでさえ、背筋に冷たいモノが走った。


__________________



「魔法使いの奴、受けるだけでどうするつもりなんだ?」


 進展しない戦いを見ながら、アハトは唇を噛んだ。


「多分、狙ってる……」


「何をだ?!」


 言葉を絞り出すナインに向かい、アハトが叫んだ。


「ズィーベンの腕から、剣を奪う機会をだ……」


 ナインは口ではそう言ったが、ズィーベンの手のひら自体が剣と融合している状態だった。


「もう、剣と手が一体化してるじゃないか……」


 震えながら、アハトは呟いた。既に剣の浸食は、ズィーベンの手を完全に飲み込んでいた。


「切り落とすしかない……」


「そんな……」


 唖然と呟くアハトだった。騎士にとって、剣を握れないのは”死”と同義だったから。


 交差させた刀でズィーベンの剣を受けた十四郎は、そのまま両方の刀を絞ると鍔迫り合いの様な形に持ち込んでズィーベンの動きを止めた。そして、間近に剣と手の融合しているところを見た。


『どうだ? 切るしかないだろう』


「切りますよ……ただし、腕ではありません……難しそうですけど」


 脳裏に聞こえるローボの声に、十四郎は平然と答えた。


『その割には、嬉しそうに見えるが?』


「嬉しくはないのですが……以前の命を奪う戦いに比べれば……」


 十四郎の脳裏に、この世界に来てから相手の命を奪った戦いがフラッシュバックして、声を沈ませた。


『まあ、いい……だが、時間が無いぞ。奴はもう直ぐ、剣の力によって自壊する』


「はい」


 それは十四郎にも分かっていた。ズィーベンの腕は既に血の気を失い、肩から胸にかけても血管が異常に浮き出していた。


 十四郎は交差させた刀の力を急に抜く。その反動で、ズィーベンの剣は一瞬前のめりになった。その剣を右手の刀で上から渾身の力で叩く、火花が飛び散りズィーベンの剣は地面に突き刺さった。


 だが、次の瞬間には猛烈な砂塵を巻き上げ下から十四郎目掛け襲い掛かり、十四郎は左手の刀で受け流す。同時に弧を描き、ズィーベンの剣が十四郎の頭上に振り下ろされた。


 十四郎はそこで、思いがけない行動に出る。自ら頭上の剣に向かって、体を差し出したのだ。


「何を?!」


「いやゃ!!」


 ローボが叫び、ビアンカが悲鳴を上げるがアウレーリアは口元を綻ばせた。


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