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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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手立て

「ビアンカ様! ビアンカ様っ!」


「……えっ?」


 ツヴァイの声でビアンカが我に返る。頭の中には十四郎の青いマントがフラッシュバックするだけで、周囲の状況からは完全に隔絶されていた。


「どうしたのです? 顔色が真っ青ですが……」


「いえ、その……あの、マント……」


 ツヴァイが心配顔で尋ねると、ビアンカの頬は紅潮した。


「ビアンカ様……まさか、記憶が……」


「今は、いいです」


 目を見開くツヴァイに向かい、落ち着きを取り戻したビアンカが十四郎の方を見た。だが、ツヴァイは更に驚く光景を目の当たりにした。


「ビアンカ様……あれを……」


 ツヴァイに促され振り返ったビアンカが見たのは、辺り一面に倒れる十字騎士だった。


「たった、一人で……」


 そこには少し首を傾げて立つ、アウレーリアの姿があった。


「まるで相手が、アウレーリアの槍に打って下さいとばかりに……十四郎様の戦いかとは明らかに違う……」


 流れる汗を拭いもせず、ココは呆然と呟いた。


「確かに違うな……あれの戦いには無い……」


 鋭い視線のローボが呟くが、ココには想像がつかなかった。


「何が無いのです?」


「必ず勝つと言う気持ちや、絶対負けないと言う意思だ……」


「それって……」


 ノィンツェーンは、アウレーリアが何なのか更に分からなくなった。


「……私にも見当さえつかない」


 ローボでさえ、アウレーリアが何のか分からなかった。だが、ビアンカにとって今はアウレーリアの事も、自分の記憶の事も関係なかった。


「十四郎は、あの剣に勝てますか?」


「それは……」


「勝ちます」


 心配顔のビアンカはローボに問い掛けるが、ローボが答える前にアウレーリアが背中で言った。その声には自信と確信が満ちており、ビアンカの揺らぐココロを逆撫でにした。


_________________



 ズィーベンの剣は次第に速さと威力を増した。そして反比例する様に、ズィーベンの肉体は蝕まれて行った。


「見ろ、ズィーベンの腕……」


「腕だけでではない、背中から腰、脚までもズタズタだ……」


 唖然と呟くアハトだったが、ナインは悲痛な表情で言った。既に十字騎士は全滅、配下の騎士もアウレーリアによって駆逐され残りは二人だけになっていたが、ズィーベンの異常な消耗が断末魔の事態さえ忘れさせていた。


「どうするんだ?」


「助けに入れば確実にやられる……あの剣に……」


 焦るアハトだったが、ナインは唇を噛んで声を押し殺した。


「このまま、ズィーベンを見殺しにするのかっ!?」


 思わずアハトが叫んだ。だが、ナインは消えそうな声で言った。


「考えてみれば、我ら三人が揃ってこそ黄金騎士に匹敵する強さを発揮出来る」


「だから、それがどうした?!」


 アハトにはナインの言葉の意味が分からなかった。


「行くしかない! 続けアハト!」


 剣を抜いたナインが飛び出し、瞬時に察したアハトが続いた。だが、二人は十四郎の背中で止められた。


「そこをどけ魔法使い!」


「行かせろっ!」


 同時に叫ぶ二人に、十四郎はゆっくりと振り向いた。


「ズィーベン殿は、必ず助けます」


「助けるだと? 我らは敵なんだぞ!」


 十四郎の言葉に、アハトが叫んだ。


「受けるだけで精一杯のお前に、何が出来る?」


 十四郎の戦いを見ていたナインには、到底無理に思えた。


「大丈夫です」


 短く答えた十四郎の顔には、ナインやアハトが初めて経験する安らぎの様なモノが溢れていた。


「無理に決まってる!」


「待て、アハト……見てみようじゃないか」


 荒ぶるアハトを、ナインは片腕で制した。


「見るだと?! ズィーベンには時間が無いんだぞっ!」


「我らが行けば、一瞬で終わりだ……そして、ズィーベンも程なく終わる……それで、いいのか?」


 それでもアハトは叫ぶが、ナインは穏やかに言った。


「だが……」


「見せてもらおう。魔法とやらを……」


 悔しいが今のアハトに成す術はなく、ナインの言葉に黙って頷いた。


_________________



『このままでは、奴の肉体も精神も滅ぶ』


「分かってます」


 脳裏に届くローボの声に、十四郎は短く答えた。


『手立てはあるのか?』


「あると言えば……」


 こんな状態でも、十四郎は頭を掻いた。


『全く……なら、見せて見ろ』


 溜息交じりのローボが言うと、十四郎はビアンカに叫んだ。


「ビアンカ殿! 刀を貸して下さい!」


 ビアンカの全身に稲妻が走った。考える前にビアンカは刀を投げ、十四郎は素早く受け取ると腰に差した。


 そして、右手で自分の刀を抜くと左手でビアンカの刀を抜いた。


『両手剣か……勝算はあるのか?』


「それは、やってみないと」


 期待を膨らませたローボに、十四郎は平然と言った。


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