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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第四章 発展
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一触即発

「七子様、予想外の魔法使いの動きです……」


 ドライの報告を受けた七子だったが、別に驚く事もなく大きな椅子に深く座ったままだった。


「予想外とは?」


「黄金騎士二名を倒すと、そのまま反転。向かって来る軍勢の中央を突破、味方の方に向かっています」


「どこが予想外なのだ?」


 顔を強張らせるドライに向い、薄笑みの七子が聞き返した。


「目的は我が軍を倒す事、ならば指揮官を狙うのが奇襲の定石。ですが、有利に運んでいた矢先の反転は、どうも合点がいきません」


「ふふふ……」


 真剣な顔のドライを見た七子は、口元を緩めた。


「七子様はお分かりですか?」


「……魔法使いは何の為に大軍に向かう? 鉄の女とか言う輩に援軍を引き受けさせる試練、否、試験みたいなものだろ?」


「ええ、まあ」


「ならば、結果が全てだ……途中の行動など、全て伏線と思え」


「はっ」


 頷いたドライは、大きく頭を下げた。


「他に変わった事は?」


「アインスがグラーフを倒し、戦場にアウレーリアが現れました」


 七子はその報告に全く興味を示さず、眉間に皺を寄せた。


「あの女は?」


「あの女と申しますと?」


「女騎士だ」


 明らかに不機嫌そうに、七子は吐き捨てた。


「はあ、驚いた事にエリーゼを倒し、魔法使いの元に向かったと」


「ほう、黄金騎士をか?」


「はい、内通者も驚いていました……まるで、魔法使いの様だと」


「……」


 ドライは七子が唇を噛むのを見逃さなかった。だが、敢えて表情には出さず、話を続けた。


「後は、如何致しますか?」


「監視を続けろ」


 目線を合わせず、七子は呟いた。


________________________



「あれが、黄金騎士NO,1アウレーリアか……」


 唖然と呟くアランは目前の光景が信じられなかった。まるで、蟻でも蹴散らす様にアウレーリアは数えきれない兵士達を蹂躙していた。


「直ぐに前衛を下がらせて下さい! アウレーリアが追ってこない距離まで!」


 マルコスの叫びにアランも叫び返す。


「その後はどうするんです?!」


「十四郎、いえ、魔法使いが向かってます」


 見た訳ではないが、マルコスは確信していた。


_________________________



 森に配置したロメオ達は必死で防戦していた。フォトナーの部下や、アリアンナの部下達は善戦はしていたが、如何せん兵力には差が有り、老兵ばかりのパルノーバの兵達は足手まといにしかなっていなかっいた。


「私達が前に出る!」


「まだ、その時期ではありません」


 焦るアリアンナを冷静な態度のロメオが止めた。


「しかし! 早く動かないと囲まれる! 逃げるのも……」


 一瞬叫んだアリアンナは、横目で見たパルノーバの老兵達の未来が見えて言葉が掠れた。


「大丈夫ですよ、このまま支えます」


 微笑みを浮かべるロメオだったが、追い詰められている現実は既に把握していた。そして、その瞬間も、頭の中では打開策を探し求めていた。


「ロメオ様! 前方に狼達が!」


 ナダルが転がる様にやって来て、絶叫に近い声で報告した。


「何っ!」


 身を乗り出したロメオの視界の中心に、銀色の狼が飛び込む。そして、その周囲には数多くの狼が取り巻いていた。狼達は敵兵の腕を集中的に狙っていた……武器=手という公式がロメオの中で完結する。


「怪我をした腕では武器は扱えない……か」


「ローボは計算して戦ってるのですね」


 呟くロメオの横で、アリアンナも茫然と呟く。


「そうですよ。ローボは十四郎様の事が大好きですから」


 微笑みながらリズもローボを見た。


「態勢を立て直せ! 今度は前に出るぞ!」


 ロメオの号令は、全ての味方に切れかけた集中力を取り戻させた。


_________________________



「気が付いたか?」


 目覚めたアインスは、隣に座るゼクスの声が何故か懐かしく聞こえた。


「これ……」


 切り落とされた腕には止血と手当てがしてあった。


「……何故だ? 何故味方した?」


 上半身を起こしたアインスに向い、ゼクスは低い声で聞いた。


「さあ、何でかな……」


 無くした腕を摩りながらアインスは小さく答えるが、ゼクスは鋭い視線で睨む。


「お前は十四郎様を狙っていたのではないか?」


「そうだったね……」


 言われて初めて気付いた様に、アインスは少し笑った。


__________________________



 逃げ惑う兵達の隙間から、白い馬に乗ったビアンカが現れた。


「……あの人……」


 呟いたアウレーリアだったが、何故が剣を持つ手に力が入った。ビアンカはアウレーリアの前まで来ると、ゆっくりとシルフィーを降りた。


「行かせない……」


 そのまま表情が分かる距離まで近づくと、ビアンカは強い視線を向けた。


「えっ?」


 首を傾げるアウレーリアだったが、お腹の底の辺りが熱くなっていた。


「あなたを十四郎の元には行かせない」


 ビアンカがそう言った瞬間! アウレーリアの剣がビアンカの胸に真っ直ぐ向かう! だが、重い手応えで剣は寸前で受けられた。


「……受け止めた……」


 初めて経験する感情がアウレーリアの中で弾ける。体中の血が沸騰する感覚、その血が全て頭の上の方に集まる感覚。そして、お腹の中がさっきより熱くなった。


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