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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第三章 確立
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パルノーバ攻城戦 4

「聞いていいか?」


「何です?」


 前を行くローボは振り返らずに聞いた。


「確かに悪い”気”でないみたいだ……で、どうするんだ?」


「まあ、出たとこ勝負ですね」


 平然と言う十四郎に、ローボは苦笑いした。多分、十四郎はそう答えるだろうと思っていた事を、そのまま言ったから。


「ふっ、お前らしいな」


「悪くなくても、敵でしょ?」


 シルフィーは唖然と聞くが、十四郎はその首筋を撫ぜた。


「そうですね。でも、敵ですが話が分かる人かもしれませんよ」


「そうなら、いいけど……」


 心配しているシルフィーの気持ちが、十四郎に流れ込む。十四郎はもう一度、シルフィーの首筋を優しく撫ぜた。それだけで、シルフィーの乱れるココロは穏やかに変わる……大きな安心感は、十四郎の手の暖かさと比例していた。


______________________



「マリオ殿、警備隊長が偵察など……」


 砦を出ると、副長のナダルが首を傾げた。


「そうですね……でも、敵の正体を見たいと思いませんか?」


 マリオは先任で年上のナダルに敬意を表していた。ナダルもそんなマリオの態度に好感を持ち、真摯に従っていた。


「確かにそうですが……」


 苦笑いのナダルは、言葉を濁した。


「すみません。我がままを言って」


 マリオは素直に謝り、ナダルはその態度に小さく頷いた。


「隊長がお望みなら、我々は従うのみです」


「ありがとうございます」


 マリオは、まだ見ぬ敵に戦意を燃やす。パルノーバに来てから、落ち込み気味の精神は今最高潮に達しようとしていた。


_____________________



 目前に現れたのは、たった一人だった。足元には銀色の狼、そして乗る馬は一目で分かる名馬……だが、その容姿は明らかに外国人だった。


「ここで待っていて下さい」


「しかし!」


「大丈夫です。様子を見るだけですから」


 マリオはナダルを制し、前に出る。


「ローボ殿……」


 ローボは十四郎の声に従い、その場に止まった。十四郎とマリオはゆっくりと近付き、馬を並べた。


「良い馬ですね」


 マリオは近くで見たシルフィーに目を細めた。


「ありがとうございます。シルフィー殿です。賢くて速くて、とても優しい馬なんです」


 少し照れた様に十四郎は頭を掻き、まるで人の様にシルフィーを紹介した。マリオにはその様子に想像してた”敵”としてのイメージが大きく崩れた。


「神速のシルフィーですか?」


「はい」


 驚くマリオに、十四郎は笑顔で答えた。


「十四郎! 私の名前を言ったら、どこの国か分かっちゃうよ!」


 シルフィーは思わず叫ぶ。話の内容は分からなくても、自分の名前を呼ばれてハッとした。


「あっ……」


「もう、十四郎ったら」


「すみません、つい……」


 赤くなってシルフィーに頭を下げる様子は、マリオにとって衝撃だった。


「まさか……馬の言葉が分かるのですか?」


「あっ、はい」


 普通に返事する十四郎だったが、マリオは十四郎の瞳の色にも気付いた。


「もしや、魔法使い殿ですか?」


「本当は違うんですが、何故かそう呼ばれています」


 十四郎の言葉に嘘は感じられず、マリオは首を捻った。


「あなたが指揮官ですか?」


「指揮官と言う程ではないんですけど……」


 十四郎は照れた様に言うが、マリオは真剣な視線を送る。


「何故、我がパルノーバを取り囲むのです?」


「それが、分け合って落とさなければならなくなりました。無理なお願いだと思いますが、砦を明け渡して頂けませんか?」


 十四郎は真剣に話すが、当然マリオは一笑に伏した。


「これはまた……パルノーバは難攻不落と呼ばれた要塞ですよ。とても、正気だとは思えませんね……それより、魔法使い殿……お手合わせをお願いしたいのですが」


「どうしてもですか?」


「はい。どうしても」


 困惑する十四郎を見据えながら、マリオは馬を降り剣を抜いた。


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