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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第一章 黎明
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武闘大会  弓3

 並び立つ柱、それは人が三人程じゃないと抱えられない太さがあり、高さは人の背丈の三倍はありそうだった。揺らしてみても全然揺れず、素材は石に見えたが木の様だった。


十四郎はその立ち並ぶ間隔を頭に叩き込む。人がやっと通れる幅から、かなり広い幅まであり、その配置には規則性は感じられない。


 中心付近には、やや広い空間はあるが、弓同士では向かい合っているのと同じだった。一般席からは見えにくいが、貴賓席など高い位置からは二人の行動は見渡せた。


 ビアンカは急いで貴賓席に戻る。押される様な圧迫感と、迫り来る不安感は胸騒ぎを増大させ、全身の血液を逆流させた。アミラはその後をトコトコと追った。顔には出さないアミラでさえ、背中に冷たいモノを感じながら。


「狩りの始まりだ」


 呟いたマルコスは身を屈め、柱の中に入る。目は視野の最大限に凝らし、耳は微かな音も逃さないと集中する。しかし、開始の合図から暫く経つのに十四郎の気配も位置も確認出来ない。


 広いとは言え、森に比べたら家の庭位のものだ。今まで感じた事のない感覚に、マルコスはニヤリと笑うが、人相手には初めての感覚、マルコスは相手が人では無い様な感じに包まれていた。


そして、音を出さず柱を登ると天辺に上がった。身を低くして見渡すが、姿も気配も感じられなかった。

 

「何故だ?」


 思わず声に出た瞬間、殺気が襲う。咄嗟に飛び降りるが、その頭上を矢が通過するのが目に入った。しかし着地の瞬間も続け様の殺気が襲う、素早く身を捻ると地面に矢が当たるが刺さりはしない。


「何処だ!」


 また声に出た、地面を転がりながら周囲を見渡すが矢が放たれた方行を特定出来ない。素早く地面に落ちた矢に視線を向けると、マルコスはニヤリとする。


 十四郎は真ん中からやや外側、柱の密集している付近で背中を柱に付け足で踏ん張りながらかなり上の方にいた。息を殺し、音だけに集中する。暫くして微かな音がした方行に見定めず弓だけ柱の上に出して射る。


 次は地面方行を狙い、着地音だけを待つ。身体を左側に捻り、音の方行に放つ。数多い柱は目標を覆い隠すが、たて続けの連射で一本がマルコスに真っ直ぐ向かった。


 刺されば、角度や方行は特定出来る。刺さらなくても、方向だけは分かる。狩人には方行が分かれば十分だった。


 位置は特定出来た。マルコスは音を立てず外側から周り込む。人工的なこの空間で、一瞬森の臭いを感じる。気配が読める、風の流れさえ感じられる。弓を構え、急襲に対応しながら五感を研ぎ澄ます……獣のそれと同じ様に。


_________________________



 十四郎も場所を変える為に、移動を開始する。柱に身を隠しながら中心方行へ真っ直ぐ進んだ。背中にはおぞましい殺気、十四郎は背中を凍らせながら進む。やがて広い場所に出ると、ゆっくりと振り返った。


 その場所には十四郎はいなかった。柱の上の方に残る後を見付けると、本本能が導く中心へと向かう。前方の視界を柱が遮るが、その向こうまで見る様に神経を集中して。


やがて、柱の陰に十四郎の身体の一部が視界に飛び込む。マルコスは瞬時に連射の矢を放った。


 柱の陰から数本の矢が迫るが、予想はしていたので簡単に避ける。しかし、距離があるにも関わらず、放たれた矢は柱に突き刺さる。十四郎は刺さった矢を握り、その刺さり具合を確認すると、素早く柱の陰に身を隠した。


 柱を盾に、マルコスは距離を詰める。見付ければこちらのモノ、弓を構えたマルコスは柱の陰に潜む十四郎を確かに把握していた。


 広い場所に達するとマルコスは回り込みながら、矢を放つ。それは十四郎を柱の陰から追い出す為で、高速の連射は反撃を抑える意味もあった。


 身を隠そうにも死角から襲って来る矢。その威力は凄まじく、当たれば身体を射抜くのは簡単だろう。十四郎は次々に柱の陰を移動するしかない、周囲は刺さった矢で柱が枯れた木の様になった。


 反撃は許さない、あり得ない速度で連射するマルコスはジリジリと距離を詰める。狭まる距離は回避可能な距離を削る。


十四郎は端に追い込まれ、マルコスが反対側に回った瞬間、上に飛んだ。空中は足場の無い方向転換が出来ない空間、絶対絶命の瞬間はビアンカの胸に氷の矢を突き刺した。



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