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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第三章 確立
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友達

 国境を越えると明らかに人々の風体は変わった。白色人種の多かったイタストロアと比べると、コーカソイド系の人々が多く見受けられた。


 最初の街で一応は公演を行うが、人々の反応は熱狂的だった。イタストロアの様に”女性”が絶対ではなく、全ての演目に拍手喝采が贈られた。


 ビアンカは記憶が無くて踊りには参加していなかったが、身体が覚えているのか曲に合わせて隅の方で踊っていた。


「何をしてる?」


 呆れ顔のラナに聞かれ、ビアンカは赤面した。


「あの、その、身体が勝手に……あなたは、何もしないの?……綺麗だから、踊ればいいのに」


「私は……そんなの出来ない」


 記憶を失ったビアンカにとってラナは皇女ではなく、ただの同年代の女の子だった。


「そうかなぁ、簡単だよ」


「だって……やった事ないから」


「ほら、こうやって」


 ラナの手を取り、笑顔のビアンカが教える。幾ら記憶を失ってるとは言え、全く自分を特別扱いしないビアンカを見ていると、ラナは不思議な気持ちになった。


 十四郎を巡る確執はココロに残るが、新鮮な感覚は不快ではなかった。今まで同年代で対等にして来た”友”などいなかった、望むべきもなかった……同年代以外でも同じ事だったが、やはり同年代と言うのは特別だった。


「ここは人目に付く……裏の方へ行こう」


 思わずラナはビアンカの手を取り、裏手に向かった。


______________________



 人気の無い場所で、生まれて初めてラナは踊った。微かに聞こえて来る音楽に合わせ、ビアンカの手解きを受けながら。


 自然と笑みが漏れた、何も考えず踊りに没頭出来た。そして、何時しかココロから笑う事が出来た……それは、ラナにとって代え替えの無い物になっていた。


「どう、やれば出来るでしょ?」


「そうね、案外簡単だった」


 腰を下ろしてビアンカが微笑み掛けると、ラナも笑顔で答えた。そして何時の間にか、ラナの言葉遣いは”普通”になったいた……とても自然に。


「でも、変な感じ……何も覚えて無いなんて……」


 ふいにビアンカが膝の間に顔を埋めた。


「変なって感じって……どんな?」


 少し興味が湧いたラナが問い掛けた。


「そうね……普通は自分が誰かなんて思って生きてないけど、自分を認識出来てこそ行先や道が分かる……今の私は、次に何をすればいいのか分からない……」


 漠然としか分からないビアンカは、精一杯説明した。


「辛いね……」


 自分だったら、どんなだろうとラナは思った。十四郎に興味を持ち、それが憧れに変わり、今はここまで付いて来た。報われるとは思ってないが、希望も捨ててはいない……出会ってしまって事、全てを捨てた事に後悔なんて無い……だが、そんな胸が破裂しそうな思いが消えて無くなってしまう……それだけは嫌だと思った。


「あなたは、私の事を知ってるの?」


「ええ、あなたは近衛騎士団最強の女騎士……」


「私が?」


 驚いたビアンカの顔が可笑しくてラナは噴き出すが、直ぐに真剣な顔を向けた。


「十四郎の事、覚えてないの?」


「十四郎?……あの人か……そうね、覚えて無い……」


 少しは胸の痛みを感じたが、ビアンカにとって十四郎の存在は曖昧だった。


「あなたは……」


 言おうとしたが、言葉にはならなかった。それは嫉妬なのか、ラナにも分からなかった。


「ねぇ……」


 ビアンカが少し顔を赤らめ、ラナに聞いた。


「何?」


「私はビアンカって言うそうだけど、あなたの名前は?」


「もう、今頃……私はラナ」


 大きな溜息でラナが答えると、ビアンカは俯きながら呟いた。


「ラナ、私達、友達だった?」


「うん、友達だった」


 笑顔で答えたラナを見て、ビアンカは満面の笑顔になった。その後も二人は他愛のない話をして、気付くと夕暮れだった。


「戻ろうか?」


 先に立ち上がってラナが、手を差し伸べる。だが、急にビアンカが周囲を気にした。


「どうしたの?」


「囲まれてる……」


 ビアンカの目が騎士の目になった。


___________________



「待って下さい」


 飛び出そうとするランスローを、バンスが止めた。


「何を言ってるんですか? 姫殿下とビアンカ殿が危ないんですよ」


「見た所、盗賊の類ではなさそうです」


「ですが、あの風体は堅気じゃない、どう見てもゴロツキです!」


 落ち着いた表情のバンスに、ランスローは声を荒げる。確かに、見た目は街の若者達と言った感じだが、真面そうには見えない。


「様子を見ましょう」


「そんな!」


 それでもバンスは落ち着いた表情を崩さない。


「記憶を取り戻すには”きっかけ”が必要なんです」


「しかし、手遅れになったら」


「ランスロー殿、態勢だけは取っていて下さい……ギリギリまで様子を見ます」


「分かりました。飛び出すのは、私の判断で行きます」


 やっと納得したランスローは直ぐに身構え、バンスも態勢を整え様子を窺った。


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