表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第三章 確立
136/347

銀色の魔法使い

 十四郎は負傷者の介護をリズ達に任せると、敵兵に対峙する。すかさずローボが足元にやって来る。


「……だが、驚いたな。迷う事無く、一直線でこの場所だ」


 ローボが驚くのは無理も無かった。十四郎は、まるで道さえ知ってる様にアルフィンを誘導した。一度も迷わず、一度も躊躇する事無く……。


「自分でも不思議ですが、迷いなどありませんでした」


 背中で十四郎は言うが、その声は自信に満ちていた。


「体の痛みはどうなんだ?」


 少し心配顔のローボが十四郎の横顔を見るが、痛みがある様には見えなかった。


「痛みですか……関節の痛みは残ってますが、動けます」


 十四郎はゆっくり刀を抜くと、低く構えて敵兵に歩み寄る。


「本当に行くつもりか? お前は見えないんだぞ」


 ローボは十四郎の背中に問い掛けるが、答えは聞かなくても分かっていた。その証拠に、十四郎は一切の躊躇もなく突き進んでいた。


 直ぐに支援に入る体制を取ったローボは、やや後方から付いて行く。敵兵は十四郎より、その後方のローボに気を取られる。


 牙を剥き唸るローボの威嚇は凄まじく、その眼光は見る者全てを大きな畏怖で支配した。当然向かって行くのは十四郎の方で、一気に数人が襲い掛かる。


 それを見越し、ローボが出ようとした瞬間! ローボの身体が硬直した様な感じに包まれ思わず声を上げた。


「十四郎!」


 夜空にローボの雄叫びが響き渡った。だが、次の瞬間ローボは目を疑った。殆ど動きらしい動きをしてないはずの十四郎の足元には、斬り掛かった全ての敵兵が倒れていた。


「何がどうなった?……」


 目を見開き、呟く事しか出来ないローボを残し、十四郎は次の敵集団に向かう。その歩みは決して早くはないが、敵兵たちは後退る。十四郎の身体からは青白い陽炎の様なモヤが湧き立ち、対峙してはならない神々しさが溢れていた。


________________________



「アインス殿、魔法使いが現れました」


「えっ、見えないはずだよ。どうやってここまで来たの?」


 報告に驚くアインスだったが、ローボの存在を思い出して薄笑みを浮かべた。


「いかが致しますか?」


「そうだね、今はまだ殺さないよ。もっと、苦しめてからじゃないと。まずは、仲間の連中を目の前で……あっ、見えないか」


 思い出した様に笑うアインスは、十四郎の視界を奪った事が嬉しくて堪らなかった。


_________________________



「ローボ殿、皆を頼みます」


「しかし、お前……」


 十四郎は刀を下げたまま背中で言うが、ローボは心配そうな声を上げる。


「私は大丈夫です。確かに見えませんが……分かるんです」


「分かるって、何がだ?」


 思わず身を乗り出すローボは、十四郎に身を寄せる。


「……全てですよ」


 十四郎はローボの背中にそっと手を置く。その背中には暖かい感触が溢れ、ローボは仕方なく下がる。だが、意味が分からないローボは十四郎の背中を目で追った。


 動きは速くはない。十四郎は摺り足で移動するが、無駄な動きはしない。最短距離で敵に向かうと、見えない事を知っている敵は一気に襲い掛かって来る。


 だが見た目は派手な動きはしてないはずなのに、次々に相手が倒れて行く。まるで刀で撫でているだけの様に見えるしなやかな太刀裁きは、見る者に不思議な印象を与えた。


「戦ってるといった感じがしない」


「そうだな、倒れてく奴の顔に”痛み”は見てとれない」


 唖然と呟くリズの言葉に、マルコスも同意する。今までとは全く違う十四郎の戦い方は、その圧倒的強さも然る事ながら、印象は穏やかに見えた。


「まるで魔法ですね……魔法の杖を一振り、相手は眠る様に倒れてゆく……」


 夢見る様にノインツェーンが呟き、リズやゼクスもそうだと納得した。


「あれが本当の十四郎の……魔法……」


 目を見開いたラナも茫然と呟き、ランスローやフォトナーも言葉が出なかった。


「現れただけで……全てが変わった……」


 震えるダニーは十四郎の背中に神秘的な輝きを感じ、鳥肌が立った。


「全く……底の知れない奴だ」


 同じ様に鳥肌を立たせたマルコスも呟くが、誰一人十四郎が視力を失っている事には気付かなかった。


 十四郎は次々に相手を倒して行く……本当に魔法を使ってる様に。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ