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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第三章 確立
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銀色の眼

「どうだ? 具合は?」


 気が付くと、暗闇の中でローボの声が聞こえた。体中の関節が痛み、頭が割れる様に痛かった。十四郎はなんとか起き上がると胸の傷を触る、そこには手触りで分かる葉っぱの様な物が付いていた。


「……これは?」


「血止めの葉だ、一応毒消しの効果もあるが……」


 効果が無い事はローボにも分かっていて、心なしか声が沈んだ。


「しかし、変な気分です。確かに眼は開けているのに、何も見えず真っ暗です」


「お前、その眼……」


 十四郎は初めての体験に苦笑いするが、ローボは十四郎の瞳の色に驚いた。その瞳は輝く銀色で、暗闇の中でも異彩を放っていた。


「どうしました?」


「瞳の色が銀色になっている……」


「そんな顔しないで下さい、大丈夫ですから」


 唖然と呟いたローボを労わる様に、十四郎が呟いた。だが、直ぐにローボは違和感に包まれる。


「そんな顔って、見えないんじゃないのか?」


「見えませんが、何故か分かるんです……説明は難しいんですけど」


 そう言って微笑む十四郎は、確かにローボの方を向いていた。声のする方に向いているだけかとも思ったが、ローボはその後更に驚く。よろよろと立ち上がった十四郎は、真っ直ぐドアの方に行き、迷う事無くドアを開けたのだ。


「お前、見えないんじゃないのか?」


「見えませんよ。でも何故か分かるんです」


 振り向いた十四郎は曖昧な笑顔を向けた。そのまま、よろけながらも十四郎は外に出る。アルフィンが飛んで来て、十四郎の異変に気付いた。


「十四郎! どうしたのその眼?!」


「油断しました大丈夫ですよ、見えないだけですから」


「見えないって! ローボ、何とかならないの?! 体もフラフラじゃない!」


 焦るアルフィンは、ローボを縋る様に見た。


「毒でやられた、何とか解毒の方法を探してみるが……」


 ローボは歩きながらも、ずっと毒について考えていた。


「その方法はあるの?!」


 青褪めるアルフィンがローボを真剣に見詰める。


「多分、アルマンニに伝わる毒だろう。アルマンニにも薬草の聖地がある、そこの主に尋ねればなんとかなるかもしれない」


「直ぐに行こう!」


 慌てるアルフィンは、十四郎の背中を押す。少しよろけた十四郎は、心配顔のアルフィンに穏やかに言った。


「そんな顔しないで下さい、大丈夫ですよ。それは、この仕事が終わってからです」


 アルフィンもまた、変に座り心地の悪い違和感に包まれた。


________________________



「ビアンカ様!」


 遅れて来たツヴァイが剣を抜いて、ビアンカの前に出た。


「ほう、威勢がよかったのは、そのお付きがいたからか?」


 確かにツヴァイは強そうに見えたが多勢に無勢、リーダー格の男には余裕があった。薄笑みを浮かべると、ビアンカを物欲しそうな目で見た。


「ツヴァイさん、この人達を頼みます」


 ビアンカはツヴァイにそう言うと、盗賊達の方にゆっくりと向かう。


「私達より、あの方を!」


 父親は焦った様子でツヴァイの背中に言った。


「大丈夫……あの方もまた、魔法使いだ」


「魔法使い……」


 呟く父親は改めてビアンカの容姿を見る。その美しさは気高いだけでなく、確かに神々しい雰囲気をまとっていた。母親の方も、見惚れる様にビアンカの姿を目で追った。


「いいか、身体や顔に傷は付けるな。お前達は、あの連れをやれ」


 リーダー格の男は二人の残し、残りはツヴァイの方に向かわせた。


「いいのか? たったこれだけで」


 刀に手を掛けたビアンカは表情を変えずに言う、前にも聞いたセリフだと胸の中で嫌悪感が沸き上がった。リーダー格の男は胸の高鳴りが収まらなかった……こんな場所で見た事も無い最高の女を手に入れられるのだから。


「何だこいつ?!」


「どうした?」


 リーダー格の男が大声に振り返った時には、ツヴァイに向かった男達は残り一人になっていた。全員は地面に倒れ、その顔は激しく殴られた様に腫れ上がっていた。


「何があった?!」


「こいつ、只者じゃあませんぜ! あっと言う間に殴り倒された!」


 凄い形相で睨み付けるリーダー格の男に、手下の男は悲鳴に近い声で答えた。


「どこを見てる?」


 あっと言う間に傍に来たツヴァイが、手下の男に詰め寄る。男は咄嗟に剣を振るが、ツヴァイは最小限の動きで躱すと、顔面に強烈なパンチを食らわした。数メートルも吹っ飛ぶと、男は完全に気絶した。


「お前こそ、何処を見てる?」


 ビアンカの声に我に返ったリーダー格の男は、二人の手下に叫んだ。


「左右から押さえろ!」


 直ぐに飛び掛かる二人に、ビアンカは寸前まで刀を抜かずに呟く。


「素手で来るのか?」


 だが、手下の手がビアンカに触れる直前、超速抜刀したビアンカが体を回転させながら、二人を横薙ぎで一閃! かなりの距離を吹っ飛んだ男達は呆気なく気絶した。


「何だその剣? 何者だお前は?」


 見た事も無い剣、見た事も無い動き……リーダー格の男は目を見開いた。


「お前などに、名乗る名など無い」


 睨み返したビアンカは、そのままリーダー格の男に一直線に向かう。慌てて剣を抜くが、ビアンカが通り過ぎた時には、男は肋骨と鎖骨を砕かれ悶絶した。


「あなた方はいったい?」


「ありがとうございます」


 その圧倒的強さは見ていた父親を圧倒し、母親はビアンカに跪いて礼の言葉を述べた。


「私達も、旅の者です……あの、よかったら少し抱かせて下さい」


 ビアンカは頬を染め、母親の腕に抱かれる赤ん坊を愛おしそうに見た。


「はい。どうぞ、抱いてやって下さい」


 母親から赤ん坊を受け取ると、ビアンカは大事そうに抱く。赤ん坊の持つ柔らかさと温かさがビアンカを包み込み、自分でも気付かないうちに最高の笑顔をしていた。その光景は正に聖母であり、ツヴァイを始め父親や母親も、うっとり見とれてしまった。


「十四郎様との御子も、早く見たいですね」


 暫くの後、我に返ったツヴァイは思わず呟くと、ビアンカは耳まで真っ赤になり、完全に硬直しながら、思い切り言葉を咬む。


「な、な、何を、を言うんですか?」


 さっきまでの神々しさは消え失せ普通の女の子に戻ったビアンカを見ると、母親は今までの恐怖が消え失せ、とても穏やかな気持ちに包まれた。


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