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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第一章 黎明
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武闘大会  槍1

「おじちゃん、どうしてこの国の武闘大会は最高って言われるの?」


 最初の試合は何が何だか分からないうちに、十四郎が勝ったみたいだった。メグは前から疑問に思っていた事を、隣の紳士に聞いた。


「そうだね、普通の大会とは少し違って、得意な武器があっても、コイントス次第で相手の得意とする武器で戦わなければならないんだよ。だから、この大会では強さの他にも、勝つ為には運が必要になるんだ。でも、逆に言えば運が無く相手の得意武器で戦い続け、そして勝つ……それこそが、本当の最強という事だよ」


「そうなんだ」


 分かった様な分からない様な……メグは首を捻るが、ケイトはそっとアミラに言った。


「アミラ、十四郎さんの所へお願い。せめて、傍に居てあげて」


 アミラはピョンとメグの膝から降りると、トコトコと十四郎の元へ向かった。その背中を見送りながら、ケイトは祈る事しか出来なかった。


________________________



「何じゃ、今のは? あっと言う間に大男が倒されたぞ」


 唖然と言うか興奮と言うか、ライアが目を丸くして声を上げる。


「はい、私も何が何だか……」


 汗を拭きながらバンスも呟く。


「面白くなりそうじゃ」


 すっかり上機嫌のライアに、バンスも少し胸を撫で下ろした。近くに座るザインは、遠く国王の傍に居るエオハネスを見詰める。今のところ、何かをしている様子は見受けられない。


「団長、見ましたか今の?」


 目を丸くしたリズが、ザインの顔を見た。


「遥か東方、海を隔てた場所に、あの様な技を使う国があると聞いた事がある」


「十四郎様も、その国の方でしょうか?」


「分からん。こちらから、その国へ行こうとすれば大船団と決死の覚悟が必要だ……たった一人で来れる距離ではない。それより、お前も魔法使い殿を名前で呼ぶのか?」


「はぁ、ビアンカが煩いですし」


 なんだか嬉しそうなリズに、ザインは穏やかな視線を送った。


「そうか」


___________________________



 暫しの休息後、十四郎の出番が来た。今度もコイントスで負けた十四郎は相手の得意とする槍で戦う事になった。


「あの方はファルケン伯爵、この国で一番の槍使いです」


 威厳と風格に満ちた風体、初老とは思えぬ立ち姿。一目で達人であると見極めた十四郎は、少し嬉しそうに心配顔のビアンカに向き直った。


「がんばります」


 言い残して対決に向かう十四郎だったが、槍を構える格好に些か戸惑っている様にも見えた。


 何度も持ち替え、首を捻る様子にビアンカは悪い閃きに包まれ、思った事は直ぐに言葉に出る。


「十四郎! まさか槍は初めですか?!」


「黙ってれば分からないのに……」


 呆れたアミラが冷や汗を流した。十四郎は十四郎で、振り向いてニガ笑いした。


「槍は不得手ですかな?」


「はい、お手柔らかに」


 ファルケンは少し笑うと構えに入る、十四郎もファルケンの構えを真似て構えた。開始の号令は目にも止まらぬ突きとなり、十四郎を襲う。寸前で避けても、引きながら穂先が横に払われる。


 間一髪伏せた十四郎に、今度は真上から打ち降ろされれた。頭上で受けるが、素早く回転した石突が下方から迫る。咄嗟に下がるが、更に返した穂先が胸元に飛び込む。


 飛び込んで来る穂先を前に出ながら寸前でかわすが、一歩下がったファルケンは持ち替えると同時に横に薙ぎ払う。咄嗟に槍を立てて避けるが、当たった瞬間、今度は逆から薙ぎ払われる。


 素早く下がるしか回避は出来ず、その行為は更なる突きを呼んだ。ファルケンが足を使う、更に穂先の勢いが上がった瞬間、十四郎は自らの槍の中心を持ち、ファルケンの怒涛の突きを横向きで避けると一気に間合いを詰めた。


 素早く槍を引き、短く持ち替えたファルケンが至近距離から突く、十四郎は持った槍の下方で右側に受け流すと、その勢いのまま腕を返しファルケンの左首筋を打った。


 直ぐさま下がり体制を立て直すファルケン、十四郎の攻撃が槍の動作でも剣の動作でも無い事に戸惑う。幸い至近距離で、十四郎の態勢も十分では無かった為に、致命傷にはなってない。


 しかし、ファルケンは嬉しくて仕方なかった。こんな相手と初めて戦う事に気持ちは高揚し、自然と笑みが零れる。


 一時のブランクが出来た十四郎は、槍の先三分の一程の場所を左手に持ち腰に添え、右手で軽くその先の部分を握る。その様子は、物凄く長い剣を腰に差している様に見えた。ビアンカには、初めて対戦した時の様子が直ぐに浮かんだ。


 例の抜刀術、しかし槍と剣では間合いが違う、しかもあんな場所を握っては絶対にファルケンの突きが先に届く……如何に穂先にクッションが付いてるとは言え、ファルケンの突きは強烈だ。まともに当たれば、肋骨の二三本は砕けるだろう。


 ビアンカは、お腹の底が冷たくなり、やがて痛みに変わった。

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